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この憂鬱は俺のもの⑤

それから3日間、3人、いや1人と2人で登下校をした。買い物の時なんかもついてきてもらった。しかし、残念なことに今のところ特に進展はない。誰か怪しい人影を見たというわけでもない。今のところ何の危害も与えられていないところだけは幸いといったところだろう。つまり現状維持ということである。

そして、俺たちは作戦会議と言う名目で喫茶店に来ていた。

小さめの音で歌詞のない音楽が流れるなか、俺たちはコーヒーを飲んでいる。


「何にもわかんねぇな。」


「うん。結構くまなく見ているつもりなんだけどね。」


「ふむ。どうしような。何か次の手を考えるべきか。」


「うん。それがいいよ。なにかある?」


その場に、少しの沈黙が流れる。

ずずず・・・、と3人が同じタイミングで飲み物を飲む。


「はぁ。なかなか難しいもんだな。」


「移動を全部タクシーにするってのはどうだ?」


「どこにそんな金があるんだよ。」


苦笑いをしながら俺はツッコミを入れる。


「冗談だ。」


松比良の気持ちもわかる。特にいい作戦が思いつかないんだろう。

あっ、と鈴原さんはつぶやいたかと思うと、


「はい!いい作戦を思いついた。」


元気よく手を挙げた。


「鈴原くん。どうぞ。」


何かいい案が思いついたのだろう。発言を促した。


「私が伊知地君の後ろ、松比良君が前を歩くんんだよ。前と後ろで挟んで歩けば、なにか新しいことがわかるかもしれないよ。」


そういった瞬間、松比良と鈴原さんが座っている席の少し後ろの方でガタッと椅子が揺れる音がした。そのすぐ後に何か金属のものを落としたような音が鳴り響く。割と静かな喫茶店のため、それらの音は俺たちの耳にも届いた。

松比良と鈴原さんもその音に気づき、振り返る。そこには長い茶色の髪の女性が床に落ちたフォークを拾おうとしている姿が見えた。


「大丈夫そうだね。」


そういうと2人は振り返るのをやめる。


「なるほどなー。前と後ろで挟むのか。」


「やってみる価値はあるかもだな。もしかしたら俺たちの尾行に気づいて、そのさらに後ろからストーカーをしているという可能性もあるかもだしな。」


「了解。頼みます。」


「よーし。サンドイッチ作戦、開始!」


それは今の作戦のことだろうか。しかもまだ始まってないし。

そこで、松比良が何かに気づいた。


「あ、でも前と後ろは変わってくれないか。おれが後ろ、鈴原さんは前を頼む。」


「別に私は大丈夫だけど、何かあるの?」


「鈴原さんが後ろだと、何かあったときに俺たちが気づかないかもしれないだろ。前なら、なにかあったとき伊知地が気づいてくれるからな。」


なるほどな。さすが松比良。やはり気が回る。


「やだ。そんな気遣いができるなんて松比良くんかっこいい。」


鈴原さんがわざとらしくそんなことを言う。


「かっこよすぎてほれちゃうわぁ。」


おれも体をくねくねしながらそれに続く。どうせ冷たくあしらわれるのだろう、と思っていたら、松比良はからだをくねらせながら、猫なで声で言った。


「あ~り~が~と~。」


「のるんかいっ!」


「あははっ。」


鈴原さんの笑顔の後ろで、さっきの茶髪のひとが飲み物を吹き出しそうになっているのが見えた。


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