この憂鬱は俺のもの②
「俺、最近ストーカーされてる気がするんだ。」
そうだんしちゃいました。てへっ。
「何を言っているんだ?」
松比良から予想通りの返答が返ってくる。
想定済みだ。自意識過剰とも捉えられず、本当に困っている感を出す答え方を俺は用意している。
「それが・・・。本当なんだよ。」
松比良の足下を見ながら、喉から声を絞り出すように答える。
これが正解だ。言葉ではない。言い方。本当につらそうな声を出すことがポイントである。
なんてったって、本当につらいのだから。演技でも何でも無い。それをただ相手にも見えるように表現する。
「ここ一週間以上、俺は誰かにつきまとわれているんだ。」
「つきまとわれている気がする、ではなく?」
「ああ。何回も振り返ったり、帰る道を変えたりもしてみたんだが、なんとなく視線を感じ続けるんだ。どうすればいいと思う?」
「うーむ。そうだな。ドローンでお前を監視してみるってのはどうだ?」
「なるほど。ドローンならいろんな角度から見れるからな。で、ドローンは誰が用意するんだ?」
「それは伊知地、お前だろう。」
「だよな。まかせろ!って、俺には今そんな余裕ねーよ。」
「うーむ。じゃあ、後ろ歩きで家まで帰るってのはどうだ。」
「それはも・・・」
「って、それは無理か。周りから見ても変態にしか見えないし。」
「そ、そうだよな。他の案にしよう。」
あっぶね。もうやったなんていえねー。
「おれが少し離れて、お前の後ろを歩くってのはどうだ?」
「いいのか?相談しといてなんだが、マジで危ないやつかもしれないぞ。」
「ま、まあなんとかなるだろ。危なくなったらお前をおいてでも速攻で逃げてみせるさ。」
「置いていくなよ・・・。
じゃあ今日の帰りからお願いしてもいいか?」
「ああ、かまわない。」
「あ、鈴原さんには気づかれないようにな。巻き込まれると危ないかもだし。」
「わかっている。」
「私がなんだって~。」
「「のわっ」」
「何よ。私だけのけ者にして。何の話してたの?」
俺は松比良に瞬きを何度もして合図を送る。
松比良は俺に向かって1つウインクをした後、
「何でもないよ。昨日のゲームの話をしていただけさ。」
と答えた。とっさにしては言い答えではないかと思う。
「そうなの。また私にも教えてね。」
「も、もちろん。」
どうやら鈴原さんには聞こえていなかったようだ。セーフ。




