オリエンテーション②
キーーーーン。
甲高い音が静まり返った教室に一気に鳴り響く。
マイクのスイッチが入ったようだ。
「あー。あー。
はじめまして。私はこの学部の学部長の中島です。
おそらく、パンフレットで顔を見たことがある人もいるのではないでしょうか。知らない人は今日覚えていってください。といっても、みなさんと直接関わることは少ししかないかもしれませんが。
まあそういうことなので、今日は伝えたいことだけ伝えようと思います。
まずは、入学おめでとうございます。ここに入るために、みなさんは少なからず勉強というものをしたのだと私は思います。
突然ですが、この機会に一つだけあなたたちに質問したいと思います。あなたのゴールは大学入学ですか?それともその先ですか?
大学入学だという人もいるでしょう。いやいや、大学は将来の夢の通過点に過ぎないという人もいるのではないでしょうか。
世の中には高校を卒業何となく大学に通う、という人も大勢います。
私が何を言いたいかというと、一人一人目的は違えど学びを止めてはならないということです。社会に出たら、学歴はあなたたちの価値を示す指標の一つに過ぎません。確かに学歴は大事です。なぜならあなたたちが必死に努力して大学に入学した証拠、つまりはそれだけ頑張る力があるという証拠になるからです。しかし、それだけでは足りません。大学に入ったら終わり、ではなく、常に何かを学ばなければなりません。そうしないと社会に出てから困るのはあなたたちです。学び方は問いません。一人でもいいですし、何人かで一緒にでもいいです。どのように学ぶにしろ、あなたしか得られないものがあるでしょう。そうして、自分という存在を作り上げてほしいと思います。
最後になりますが、もう一度だけ。入学おめでとう。そして、ようこそ、〇〇大学へ。」
数秒経った後、パチパチパチと拍手が起こる。
俺もつられるように拍手をする。
拍手が鳴り止むと、学部長が親指と人差し指を使ってちょっとだけ、とでもいうように合図を司会の人に送る。
司会の人が頷くと、再度学部長は姿勢を正し、こう言った。
「先ほど最後にと言いましたが、あと一つだけ。大学生活はあっという間です。全力で楽しむことを忘れないでください。」
以上です、というと学部長は学生の方に一礼し、そのまま教壇を後にする。
今の言葉が一体この場にいる何人に響いたのかなんて俺には到底わからない。けれども、そこにはなんだか頑張ろうという気持ちになっている俺がいた。