オリエンテーション①
今日はオリエンテーションなので、学部別に大きな部屋で話を聞くことになっている。俺たちは3人とも同じ学部なので、向かう部屋は同じである。
大学は非常に広く、建物もたくさんある。なので何番教室などと言われても、新入生である俺たちにはいまいちピンとこない。これから通ううちに覚えていけるのか、少し不安になる。
校舎までくると、玄関にある張り紙を発見した。
「オリエンテーション会場はこちら ←」
新入生のために道順を示してくれているらしい。よかった。
「とりあえず、張り紙通りに進んだら問題なさそうだな。」
「そうだね。」
指示通りに通路を歩いて行くと、特に迷うことなく目的地に着くことが出来た。
「どうやら着いたようだな。」
松比良が口を開いた。
「本当だ。オリエンテーション会場って書いてある。」
鈴原さんがドア前に貼ってある紙を読み上げる。
すでにたくさんの人がいるのだろう。中からはざわざわといろんな声がする。
みんな「ざわざわ」とは言っていないはずなのに、人が集まるとほんとにざわざわって聞こえるんだよな。不思議だ。こういうときになると、カ〇ジの世界はやはり正しかったのだといつも思う。
少しだけ部屋の中を覗いてみることにした。
覗いてみると、階段状に長机と椅子がおおよそ25段並んでいる、いかにも大学の部屋っぽい内装が見えた。後ろの席はすべて埋まっており、中盤から前の方しか開いていない。しかし、満席になっていないところを見ると、まだ来ていない人もそれなりにいるのだろう。
「どこに座る?」
松比良が俺に尋ねる。
「真ん中くらいでいいんじゃね。後ろは埋まってるし、かといってこの状態で前に座るのはなんだか恥ずかしいし。」
「私もそれがいいと思う。映画館も前や後ろより真ん中が一番見やすいっていうから。」
映画館?と一瞬思ってしまった。そして数秒後、これがボケであることを理解する。
おっと、これは鈴原さんのボケか。ボケ方までかわいいな。
さあ、どう突っ込むのが正解なのだろうか。ここは映画館じゃねーぞ、とかか。それだと普通すぎるか。ん~。考えろ。考えるのだ、松比良。
「確かにそうか。変に前に行って目立ちたくもないしな。」
え!? スルーなの、松比良。スルーしちゃうの!?
もしかしてボケじゃなかったのか。うーむ。わからん。
俺が今わかるのは鈴原さんがかわいいという事実のみである。
「じゃあ真ん中に座ろっか。」
「「了解。」」
松比良を先頭に俺たちは真ん中あたりの席を確保する。
その後も、どんどん人は増え、残りの席もすべて埋まってしまった。
すると、ドアの中からスーツを来た人が現れ、そのまま教卓に向かった。
堂々と背筋をはったまま、教卓の前に立つ。
いままでの騒がしかった空気が一変し、教室は静まりかえった。
どうやら、オリエンテーションが始まるようだ。