写真撮影
「ねえねえ。最後に3人で写真を撮ろうよ。」
鈴原さんが大学の門の前でそういい出した。
「それいいな。」
「うん。」
松比良と同時に、俺も賛成の声を上げる。
「この中で一番画質いい携帯もってるのは、伊知地か?確か、こないだ携帯変えてたよな。」
「まあな。入学祝いに新しいのを買ったんだよ。」
「じゃあそれが一番画質良さそうだな。伊知地、頼んだ。」
「了解。じゃあ撮るぞ。」
俺は腕をめいいっぱい伸ばし、画面に3人全員と大学の門が少し映るまで携帯の画面を見続ける。
「はい、チーズ。」
カシャ。カシャカシャカシャカシャカシャカシャ。長押ししてしまったため、連写機能が作動してしまったようだ。
「めっちゃ撮れたな。」
「たくさん撮れたね。」
これもまあいい思い出になるだろう。いい写真は何枚あっても無駄にはならない。
「後で送ってくれよ。あ、2枚くらいでいいぞ。」
松比良は口角を少し上げて笑っている。
「わかってるよ。」
口角が上がるといい感じの笑顔ができて良い印象を与えるって読んだ本に書いてあったが、あれは嘘だったようだ。現に、馬鹿にされてるとしか思えない。イメージダウンしちゃうよ?俺の中の松比良ポイント少し下がっちゃうよ?いいの?いいの?
なんだか悔しいから、後でお前の鼻の穴をアップした画像を送ってやろうか、などとささやかな仕返しを考える。
そんな思考回路は彼女の声を聞いた途端、一瞬でどこかに消え去っていった。
「私もほしいな。」
おや、天使の声が聞こえる。幻聴かな。
「伊知地くん、私もさっきの写真ほしい。」
天使が俺を呼んでいる。お望みとあらば100枚でも200枚でも送らせていただきますよ。
「そんなにもらうと困っちゃうな。」
それを聞いた瞬間、我に返った。どうやら思考が口に出ていたようだ。
「あ、でも私の連絡先しらないか。」
思考がダダ漏れだった事から来る恥ずかしさで身がもだえていた俺を気にすることなく、鈴原さんは慣れた手つきで手に持っていたスマートフォンを操作する。
ああ、あのスマホは幸せ者だな。
「これ私の連絡先。交換しようよ。」
こうして俺は、大学初日に美少女の連絡先を手に入れるのであった。