表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女王の龍は暁光に舞う  作者: 瀬尾ゆすら
終章 時間の分かれ道
PR
38/38

最終話 女王の龍は暁光に舞う

 この王国はずっと、長い夜の中にあった。

 それは悪魔によってもたらされた、果てしなく暗く、長い夜だった。

 

 ――だが、今。

 長い、長い――永遠にも思われた夜が、明けようとしている。


 龍を従え悪魔を討った聖なる勇者リサ・ディールが、ついに今日、女王に即位するのだ。


 リサ王女は魔神王にかけられた呪いを跳ね除けて、光を見つけ出し、その光を自らの手で掴み取った。杖を携え悪魔に立ち向かう王女の姿に、民が心を奪われるのは必然のことであっただろう。


 何より、彼女が黄金の龍の背に跨っていた光景は、民の心を掴んで離さなかった。あの龍の鱗はまさに、暁光――夜明けの色をしていた。


 民は期待している。

 悪魔の消え去ったこの世界の、新しい時代の幕開けを。


◇ ◇ ◇

 

 リサ・ディール新女王が王城のテラスに現れ、城下に集っていた民たちは割れんばかりの歓声を上げた。


「本日は朝早くにお集まりいただき、誠にありがとうございます」


 青いドレスを身に纏ったリサ女王の姿に、その場にいる誰もが魅了される。

 父親譲りの銀髪に、緑柱石のような美しい瞳。戴冠式を終えたばかりの頭には、王の証であるティアラがちょこんと乗っている。彼女の背後では、側近である軍人サウードがうやうやしく跪いて控えていた。


 先日、18歳の誕生日を迎えたリサ。彼女の両耳には月長石のピアスが揺れている。


 城下に集った民たちと目を合わせ、女王はゆるやかに手を振った。

 ほぼ真下の位置には、魔法科学研究所の面々が勢揃いしている。ミラ、ロバン、ファロン博士――みんな笑顔でリサに手を振り、ミラに至っては号泣していた。彼らの隣には、呪いが解け元に戻ったノノを抱く、エネルモアの男の子の姿もある。


「皆様ご存じの通り、2年前の春、私は復活した悪魔を討ちました」


 胸を張り凛とした佇まいのリサ女王。その姿は、かつて城の人々から「女王になれるわけがない」と蔑まれていた面影など、どこにも感じさせなかった。


「もちろん、私一人で成し遂げたのではありません」


 リサはそう言って、ちょうど真下に集う大好きな仲間たちに微笑みかける。相変わらずミラは顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくっていて、リサは思わず苦笑してしまった。


「旅の途中、悪魔族に蹂躙された罪の無い動物、そして民を目にしました」


 そう話す女王の脳裏に浮かぶのは、夢魔によって命を奪われたエネルモア市民「レオンさん」のことだ。


 大雨の中、彼の葬儀に参列したことも。そこで目の当たりにした遺族の涙も。リサは一生、忘れることはないだろう。

 

「彼らが『永劫の輪廻』に乗って、再びこの国にやって来るまで。そして、その先の未来まで。我が王国の安寧と幸福を守り続けることを、ここに誓います」


 リサ女王の宣言に、民たちは拳を突き上げ、新たな時代の幕開けを祝福した。


「女王陛下、万歳!」


 歓声が木霊するなか、リサは微笑みながら、東の空に浮かぶ星を見上げる。


 ――もう、隣に彼はいない。


 それでも。

 こうして、いつでも思い浮かべることができる。


 ――あの暁の空を舞う、黄金の龍の輝きを。


 夜明けの光を受けて、女王の耳元で揺れる月長石のピアスが、きらりと輝いた。



女王の龍は暁光に舞う 完


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ