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朝のお仕事

 

 神谷大地17歳、A型。

 身長173cmの痩せ型の体系をしており、一人息子として神谷家で育った。


 そして隣に住む幼馴染の青井心、B型。

 身長162cmのやや痩せ型で、同じく一人娘として青井家で彼女も育った。


 家が隣で年も一つ違い、そうなれば自然と両家の仲は深まり、幼い頃から心とは親しくしていた。

 幼稚園も小学校も中学も同じで、一度高校進学の際に一人暮らしに憧れていた時期があり、遠くの学校に行きたいと両親に頼み込んだことがあった。


 その時、心が号泣して凄まじかったこと……

 普段から、どこか抜けていて誰かの世話を受けて過ごしてきた心にとって、同じ学校に進学してこないことが余程不安だったのか、最終的には彼女の願いをかなえる形で、同じ地元の高校に進学した。



 それからは、一つ年上の先輩を後輩がお世話をする、これが男女逆転していたらラノベみたいで理想的だ、なんて何度も考えたことか。


 同じ制服に身を包み、登下校を共にする。

 休日は、互いの家を行き来して、連休では家族を含めた両校にも行く。


 ……なにこれ、最高の青春展開ではないか。

 だが、実際は違う。


 朝、起きてこない心を起こし遅刻しないように登校させ、下校時はフラフラと変な所へ行かないように家まで送り届ける。

 何度か、一人で大丈夫だろうと適当に友達と遊んで帰っていたら、彼女の母親から電話があり、娘が帰ってこないと電話があったことがある。


 心は河川敷で、子供たちと魚釣りをしていたのだが、それでもフラフラと警戒心もなく年頃の女の子がうろつくのは心配になるものだ。


 そして、休日は食事を作ってあげて、買い物の荷物持ちをして、旅行も親たちの束の間の休息だから、彼女の世話を俺がしていた。


 ……完全に、親ですね。

 もしかしたら、俺は親の才能があるのかもしれないと最近思いつつある。


 

 週明けの月曜。

 今日も、俺は母さんが作った朝ご飯を食べ終えると、身支度を整えて家を出る。

 そのまま、隣の家の玄関を開けると、階段を上って心の部屋に向かう。


 コンコン、数回ノックをしてから返事がないのを確認して扉を開くと、掛け布団がベッドから落ちて腹が出ている状態ですやすやと眠る先輩の姿がそこにはあった。


「……」


「んふ……ふふふ」


 鼻先を指で軽くこすりながら、寝息を立てる心に溜息が零れた。

 枕元に置かれたスマホは、アラームを切ってある状態で置かれており、このままでは遅刻ルートまっしぐら。


 致し方ないと、指先に力を込めて彼女の額にデコピンを一発お見舞いした。


「いだっ!」


 バチンと快音が響き、心は飛び起きるとゆっくり瞬きをして部屋を見回す。

 外から明るい光が零れていることを見て、朝が訪れたことを理解したのだろう、渋い顔をして再び布団へと潜り込む。


「おいおい、二度寝してたら遅刻するぞ」


「布団は友達、あいらぶゆー」


 枕を抱きしめて、起きようとしない彼女を放っておいて先に荷物の用意を進める。

 普段、学校用で使っているリュックに制服、その他机の上に散乱していた学校の課題などをファイルにしまい込んで登校の準備を進める。


 一言、彼女のご両親に朝の挨拶をしてから、再び二階へと戻るともう一度だけ、彼女の額にデコピンをお見舞いした。


「だいちゃん……明日からは愛を轟いて起こしてほしい」


「一人で起きれるようになったら考えておいてやる」


 無駄口叩く心の手を取り、ベッドから引きずり出すと彼女に制服を手渡して部屋の外へ出る。


 着替えが終わるまで、暫しの時間をスマホのニュースを見て過ごすと制服を身に纏った心が姿を見せる。


「おまたせー」


「寝ぐせが凄いぞ……洗面所で直してこい」


「はーい」


 指先で、彼女の寝ぐせが跳ねている場所をピンピン弾くと一階に二人で降りる。

 栗色の髪は元から癖毛なので、寝ぐせを整えなくてはジャングル状態だ。


 目鼻立ちとスタイルはとても良いので、髪形さえ整えれば男子人気間違いなしなのだが……

 学校の男子生徒は、大半が彼女の性格をお察ししているので、色恋沙汰には遠いらしい。


 本当の意味で、登校準備が整った心と青井家を出て、同じ学び舎に向けて歩みを進める。

 途中、クラスメイトに出会うがニヤニヤと含みのある笑みを浮かべられただけで、特に会話をすることなく学校へ到着した。


 正門前で学年の違う心とは別れることになる。

 彼女は三年の棟へ、俺は二年の棟へ。


 それぞれ、学年の棟にある下駄箱に入るとようやく俺の朝の任務が完了したのだ。





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