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食エッセイ  作者: 支援BIS
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味噌カツとビール

 二月十四日(土)と十五日(日)に、年に一度の仲間内の一泊旅行で蒲郡温泉に行った。

 高島屋の地下で、少しだけ豪華な弁当を買い、近鉄難波駅の東改札口でメンバー集合。ビールを買って、近鉄特急「ひのとり」に乗り込む。

 一行四人は席を向かい合わせにして、ビールと弁当を味わいながら、話に花を咲かせた。席はゆったりしていて、座り心地は極上で、いやが上にも旅への期待が高まる。

 名古屋駅からJRに乗り換え、『風は山河より』に描かれた戦場はどの辺かな、などと思いを巡らせるうちに蒲郡駅に到着。送迎車で一キロ少し離れたホテルに向かう。

 ホテル竹島は、三河湾に面してそそり立つ、全室オーシャンビューのホテル。ロビーも、廊下も、部屋も、極めてゆったりした造りになっており、七機ものエレベータを持つ。

 私たちの部屋は六階で、眼下に三河湾を一望する景観が素晴らしい。

 夕食前の散歩にと竹島に向かう。

 藤原俊成の像と碑の前を通り過ぎ、竹島に向かう橋へと歩を進める。広くて立派な橋だ。左上空にはトンビが群れ飛び、右前方にはカモメたちが大空にたゆたい、橋の近くの海面には、名も知らない黒い小さな鳥たちがぷかぷか波に揺られている。

 四百メートルほどの橋を渡り切ると、竹島に着く。花崗岩の島で、ここらでは珍しい植物の宝庫だという。周囲約六百八十メートル。島の全域は八百富神社の境内地だ。百段の石段を登り、五か所の神社に参拝して、島の反対側に降り、島際の遊歩道を時計回りに歩く。緩やかな潮風と、打ち寄せる波の音が心地よい。清々しい空気を胸いっぱいに吸い込む心地よさを満喫した。

 ホテルに帰り、海と竹島を見下ろす大浴場で汗を流し、夕食会場に向かう。

 刺身盛り合わせや、金目鯛の煮付け、三河牛の焙烙焼きなどのご馳走で酒を酌み交わした。

 この夜は早く寝たので、翌朝は早く目覚めた。何度か寝直したあと、窓際の椅子に座って、夜が明けていく海の眺望の変化を、見るともなくぼうっと見て過ごした。

 再び温泉に漬かって、ビュッフェの朝食。自分の卓で焼いた鮭が、とてもおいしい。

 送迎車で蒲郡駅に送ってもらい、熱田神宮に向かう。

 言うまでもなく、熱田神宮の創建は、草薙剣(くさなぎのつるぎ)の奉斎に由来する。信長が奉納した土塀などもある。一時間少々かけて境内を巡拝し、JRで名古屋駅に移動。

 駅ビルにある「NAGOYA BEER STATION 浩養園」という、ちょっとおしゃれな店で、鉄板味噌カツとサッポロ生ビールを注文。まず届いたビールで喉をうるおした。「旅先で飲むビールというのは、なんでこんなにうまいんでしょうねえ」と隣席の義兄がつぶやく。まったく同感だ。

 料理が来たので、ビールをお代わりした。

 鉄板味噌カツというのは、鉄板の上に溶き卵と細切りキャベツが敷いてあり、その上にトンカツが乗っていて、八丁味噌のソースが掛けてある料理だ。ソースの量は多くないので、揚げたてのトンカツの旨みをしっかりと味わうことができる。そして量は少なくとも八丁味噌をベースにしたソースの存在感は鮮烈で、名古屋に来たんだなあという感慨もある。旅の締めくくりにふさわしい食事だった。

 「ひのとり」の出発まで一時間ほどあり、自由行動となった。

 私は、書店で『陰陽師 烏天狗ノ巻』『文豪たちが書いた酒の名作短編集』『AERA』を買い、近鉄の乗り場の位置を確認してから、乗り場の一つ上の階のカフェに入った。旅先で友人たちと過ごす時間も楽しいが、一人コーヒーをすすりながら小説を読む時間も至福である。

 出発の時間が来た。再び仲間と合流。「ひのとり」の座席を四人向かい合わせにして、軽いつまみでハイボールを飲む。話が尽きることはなかった。

 天気もよく、暖かな二日間だった。

 旅の思い出は、長く私たちの心を慰めてくれるだろう。


(2026年2月16日執筆)

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― 新着の感想 ―
お酒がおいしいって未だに分からないです。 コーヒーは何度か飲むうちに美味しいって感じるようになったんですけど。ただ、店と家で淹れたコーヒーの違いが分からないんですけど。
楽しそうで何よりです。
ああ…知らない土地なのに情景が浮かぶかのよう。 しかし味覚の再現は難しい、旅先のビール以外は。 行ってみたいリスト入りです。
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