クリスマスのピザ
昨日、つまりクリスマスイブの夕刻のことである。
仕事が一段落したので二階に上がると、妻がダイニングのテーブルに写真付きメニューを何枚も広げて、スマートフォンを操作している。
ちらと見ると、ピザーラのメニューだった。
私は昨年のことを思い出した。
昨年のクリスマスイブだったかクリスマスだったかの夕刻、妻に頼まれ、私はピザを注文しようとした。
ところがピザ屋は、どこも三時間待ちだった。
ウーバーイーツで調べると、ピザ屋はおろか、ピザを扱っていそうなイタリア料理店も、軒並み受付できない状態になっていた。
クリスマスの夕食にピザを食べたいなら、昼のうちに注文しておかねばならないと、私は思い知ったのである。
そんな経験を思い出し、私は、妻の健闘を心で祈って一階に下りた。
しばらくして、また二階に上がった。
「注文はできたんか」
「八時頃来るって」
ということは、注文していた時間からいえば、二時間待ちということだ。
今年は去年ほど混み合っていなかったようだ。
八時五分に内玄関のブザーが鳴った。
ドアを開けると、サンタクロースの扮装をした男性が入って来た。
そこに置いてください、と言うと、サンタクロースは大きなカバンから紙箱を取り出して並べた。
(あれ?)
(小さい箱ばかりだな)
(一人ずつ別々になったメニューなのかな?)
料金を支払い、サンタクロースにねぎらいの言葉をかけ、配達された品物を抱えて二階に上がって、ダイニングのテーブルに並べ、ビールを冷蔵庫から出した。
妻が箱を並べて、開けた。
そのとき私は知った。
今日の夕食は、ピザではなくフライドチキンだったということを。
それはそれでおいしかったが、体はすっかりピザを待ち受ける状態になっていたので、心の底に割り切れないものが残ったのは、誰にも言わない秘密である。
来年のクリスマスイブには、昼のうちに妻に言わなければならない。
「夕食にピザを食べるんなら、注文するんは今のうちやで」
(2022年12月25日執筆)




