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食エッセイ  作者: 支援BIS
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若狭のフグ(1)

 2019年12月14日(土)、私は年一度の仲間内の一泊旅行に出かけた。

 大阪市内を午後ゆっくりの時刻に出発する。それまでの数日間の頑張りと、当日朝の頑張りで、急ぐ用事は済ませてあるので、ゆっくりした気持ちで旅行に行ける。皆もこの二日間の時間を確保するために、それぞれ奮闘があったことだろう。

 レンタカーはトヨタのノア、7人乗り。一行は六人なので、ちょうどよい。

 行きも帰りも運転のうまい人がドライバーをやってくれるので、こちらはただ乗っていればいい。

 こんな楽なことはない。

 宿も、幹事役の友人が予約してくれていて、こちらはほんとにただ荷物を持って集合するだけである。

 今回は、若狭にフグを食べに行く。

 若狭でフグというと、やや奇異に思えるが、近年、若狭フグのブランドは人気上昇中であるらしい。

 〈はまと〉という名の民宿を予約してあるという。幹事役の友人によれば、漁師であるご亭主がやっている民宿とのことで、料理の鮮度には期待してくれとのこと。

 レンタカーに登載のカーナビは、なぜか遠回りで料金の高いコースを指示するので、スマートフォンのナビゲーションに従って移動した。

 目的の宿は、福井県三方上中郡若狭町遊子という場所にある。遊子は、ゆうし、と読む。若狭湾に突き出す常神半島つねがみはんとうに位置する。つまり三方五湖のさらに北側だ。ところがスマートフォンのナビゲーションでは、大阪市内から二時間二十分で着くという。距離は百四十キロほど。実際には休憩を挟んだりしたから、もう少し時間がかかったが、実際の走行時間は、ほぼそれに近かったと思う。大阪と若狭は存外近い。

 考えてみれば、かつて鯖街道を運ばれた鯖は一日で京都に着いたのだから、若狭が京都大阪からそれほど離れているわけはなかった。

 交通費も安かった。大阪市内から高速に乗り、豊中まで690円。そこから京都東まで1,680円。そのあと湖西道路を通り、大津を抜けて福井県に向かう。ガソリン代とレンタカー代を除けば、片道2,370円であり、六人で割れば395円である。

 あまり信号がない道だった。交通量も少ない。つまり、快適なドライブだった。

 大阪を出たとき、空には晴れ間もみえた。この二日間は日本列島が高気圧に覆われているので、天気が大崩れすることはないはずだった。

 しかし福井県に入るなり、雲が空を覆い、雨粒が落ちてきて、ついには本格的な雨天となった。視界の悪いなかをくねくねと曲折する山道を走るのだが、わがドライバー殿は常にチャレンジ精神を失わず、素晴らしいドライビングテクニックをみせつけてくれた。最近の車は、センターラインからはみ出すと警告音を発し、急ハンドルを切ると女性の声でそのことを指摘してくれるのだと知った。

 五時前の時間だというのに、通り過ぎる集落は寝静まっているようにみえた。もちろん、家のなかではそれぞれ団欒を楽しんでいるのだろうが、道を通るぶんには町が眠っているようにみえる。つまり街灯もなく、出歩く人もいない。車のヘッドライトに照らし出される田舎風景を目にしながら、何か異界に踏み込んでいくような錯覚を覚えた。

 夕方の五時半ごろ宿に着いた。

 民宿だというが、立派な旅館だ。

 われわれは、まず温泉に入って汗を落とすことにし、夕食は六時半からとなった。


(2019年12月15日執筆)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 湾に向かうのに山道で悪天候というミステリーな導入
[一言] こういう旅行は羨ましいですね。 私の場合、ふぐといえば下関か、淡路が真っ先に浮かびます。 知り合いが淡路に食べに行ったと言う話を聞いて調べた事がありますが、道の駅うずしおのレストランとかなか…
[一言] 羨ましい限りです。 河豚というと関門海峡や大阪を連想するのですが、若狭湾でも堪能できるのですね。 ひとつ勉強になりました。
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