スッポンの内臓(2014年4月5日)
昨年の12月のことである。
ある会議の打ち上げでスッポン料理を食べに行った。
スッポン。
関西では昔から「まる」ともいう。
スッポン鍋なら「まる鍋」と呼ぶわけである。
丸っこいシルエットだからかと思っていたが、中国で「円菜」あるいは「団魚」と呼ぶのに由来するという説もあるようだ。
最初に赤ワインで割った生き血を飲む。
次に黒盆に載った内臓が供された。
新鮮な内臓は、実に美しい。
メスだったとみえて、卵があった。
これは数があるので全員にあたる。
黄色くてつやつやして宝石のようだ。
こりっとしてぷにっとしてぷるぷるである。
そのほか、肝臓、心臓、腎臓などを分け合いつつ食べる。
「胆嚢、食べはりまっか?」
と、仲居さん。
なんで食べるかどうかを訊くのだろうと思ったが、あとで調べたところでは、スッポンの胆嚢は「苦玉」とも呼ばれ、「食用にはしない」ともされているらしい。
みんな遠慮したので、私が食べることになった。
「絶対につぶしたらあきまへんで。丸ごとつるっと飲み込んでや」
つるっと飲み込んで冷酒で流し込んだ。
喉を通りすぎる感触がつるっとして、それはそれで面白い。
ところで、このスッポンの胆嚢。
食すれば胆嚢の働きがよくなるという。
牛の内臓を食べるときなどでも、人間の体の悪い所があるとき、同じ部位を食べれば調子よくなる、などとはよく聞く話である。
スッポンの胆嚢は特に効果が高い、と信じられているようだ。
「どうや。支援BIS君。胆嚢の調子はようなったか」
「さあ。どうでしょう。よくなったような気もします。でも、何年か前に胆石で苦しんで、胆嚢は摘出したので、効果はないんじゃないでしょうか」
「あかんがな。誰やこいつに食べさせたんは」
(2014年4月5日執筆)




