さっぱ(2013年4月7日)
昔、セシルスコット・フォレスターのホーンブロワーシリーズの何巻かを読んでいて、「さっぱ」という魚が出てきた。ホーンブロワーが、情報を得るため地元の漁師から魚を買う、といったシチュエーションだったと思う。
いったい何の魚だろうかと思ったが、調べもせず、なぜかそのまま疑問は頭の隅に残って、ときどき思い出していた。
今日知ったのだが、さっぱとは、ままかりのことだったのだ。
さっぱり知らなかった。
瀬戸内海、というより岡山県あたりではよく好まれる小魚で、酢漬けにしたものは土産品としてよく売られている。お土産物の「祭り寿司」になくてはならない具材でもある。
ニシン目ニシン科ニシン亜科に分類されるらしい。
私は最初に食べたままかりが酢がきつすぎ、以来苦手だったが、そのうちおいしいと思うようになった。
多少甘みのある酢漬けがよい。
生臭さが嫌いな人なら、軽く炙ってから酢漬けにしたものが食べやすいだろう。
どうしてこんな話を書いているかというと、今日、炙りままかりの押し寿司、なるものを頂戴したのだ。
岡山の朝日米を使っているというのだが、しっとりして水気たっぷりの米が、ちょいとおしゃまなままかりとよくマッチしていた。
そのパッケージによると、笹の葉に似ているからさっぱと呼ばれるようになったのだという。
へー、である。
Wikipediaを引いてみたところ、「さっぱ」という名は淡泊でさっぱりとした味に由来すると書いてあった。
へえ? である。
ままかりという名の由来は岡山県では有名で、誰に訊いても教えてくれる。
この魚をおかずにご飯を食べると、ご飯が足りなくなり、隣の家に借りに行くことになるというのだ。
まんまを借りるから、ままかりである。
だが私はこの魚をおかずにご飯を食べたいとは思わない。
これは酒のつまみにすべきものである。
ところでくだんの小説は、うろおぼえだがフランスに出掛けたときのシーンではなかったかと思う。
フランスにもままかりがいるのだろうか。
あるいはさっぱという言葉にもう少し広い意味があるのかもしれないが。
(2013年4月7日執筆)




