「けとばし屋チャンピオン」(2012年11月8日)
昨日、ちょっぴり疲れる会議のあと、友人二人と食事に行った。
「けとばし屋チャンピオン」という馬肉専門店である。
福島店に電話したら満席とのことで、できたばかりの天満店に行った。
まず、馬刺しの盛り合わせを注文した。
五種類だったか六種類だったかの部位が出た。
中でも印象的だったのは、タテガミだ。
名の通り、たてがみの下の肉なのだが、真っ白な脂身なのだ。
これを腿の部分の赤肉と一緒に食べる。
上品で、しかもこくがある。
脂質はさらりと溶けて尾を引かない。
次に、生レバーを注文した。
非常に新鮮である。
牛のレバーに似た風味もあるが、生臭さはないといってよい。
レバー臭さのないレバーなのである。
しかも、何という歯ごたえ。
レバーなのに、こりこりとした歯ごたえがあって、これがまたおつなのだ。
次に焼き物を注文した。
ハラミとかロースは牛などと名が共通するが、クラシタなどと聞くと、さすが馬ならではだと感じる。
カイガラ、チョウチン、フタエゴに至っては、名前だけではどこの部位か分からない。
焼く前に店員さんが焼き方を説明してくれる。
牛のようにしっかり焼いてよい種類の肉と、ごくあっさり焼いて食べるべき種類の肉があるのだという。
あっさり焼きの見本を一つ焼いてくれた。
なるほど、こんな感じか。
といっても、トングを握っているのは私ではない。
食エッセイ「黄金のトングを持つ男」で紹介した彼である。
馬肉の焼き方は非常にこまやかな神経を使うようで、さしもの彼もいつもの三割増しの真剣さで焼き加減を見定めていた。
たれはポン酢に近い。
この繊細な肉質に、強いたれは合わないだろうと納得した。
少し物足りないときは、たれにつけたあと、軽く塩とごまをまぶして食べた。
しみだしてくるようなあまみが、舌の横の部分をじんわり刺激する。
馬肉は、牛肉に比べてカロリーも脂質も非常に低く、ヘルシーだという。
この道の泰斗であられる関西焼き肉.COMのいかりん氏は、「けとばし屋チャンピオン」の感想の中で、牛肉ほど部位ごとに個性が感じられなかった、と評しておられる。
なるほど確かにそうなのだが、その微妙な違いをじっくり味わうのもまた楽しい。
牛の場合は、向こうから味を強く主張してくる。
こちらは黙ってそれを味わえばよい。
馬の場合は、味を押し付けてこない。
そこでこちらから、肉片を舌のいろいろな部分で味わってみることになる。
ここだ、というポイントにヒットすると、その部位の味わいがふわりと広がる。
部位によって、舌のどの部分で味わうかを探りながら、ちびりちびり焼酎をなめる。
こんな味の探検に出掛けてみるのも、たまにはよい。
(2012年11月8日執筆)




