法善寺横町「醍醐」(2012年4月4日)
法善寺横町に「醍醐」という店がある。
もつ鍋の店である。
かなり安くて、とびきりうまい店だ。
ここのもつ鍋は、あっさりしているのに味わいが深く、大変おいしいが、今回紹介するのはもつ煮込みだ。
もつ鍋が煮えるまでのあいだ、生ビールを飲みながら、ちびちびと、もつ煮込みを口に運ぶ時間は、至福といってよい。
はじめてこのもつ煮込み見たときは、びっくりした。
すまし汁だったのだ。
(一時期、このもつ煮込みが味噌味になっていたが、今ではすましに復帰している)
もつ煮込み、というものは、味噌仕立てにするものだと思い込んでいた。
ところが、醍醐のもつ煮込みは、汁が澄み切っている。
醤油ベースの薄味だしで、もつを煮込んであるのだ。
しかも、実にしっかりと煮込んである。
それなのに、濁っていない。
まじめで丁寧な仕事、というものを、そこに見ることができる。
その小さな小さな小鉢の中には、いろんな部位の内臓の切れ端が入っている。
内臓というものは、一つ一つが、色も形も歯ごたえも違う。
かみしめて出てくる肉汁の味が違う。
のどの奥に感じるうまみが、鼻から抜けていく風味が違う。
その違う味を、一つ一つ楽しむことができるのだ。
こどもの握りこぶしほどの、その小鉢には、味のシンフォニーが詰まっている。
(2012年4月4日執筆)