豆腐のお中元(2012年7月19日)
今日の昼、宅急便が着いた。
クール宅急便だ。
お中元と書いてある。
品目はと見れば、「豆腐」とある。
豆腐?
私は豆腐が好きだ。
全国のいろんな場所で豆腐を食べた。
現在の住まいの近くには昔ながらの手作り豆腐屋さんがある。
そこがかなりおいしいので、ふだん、そこ以外の豆腐を食べない。
なにしろ、豆腐というのは、近場でうまい所を探して食べる以外ないものなのだ。
豆腐をお中元にするという、その発想がよく分からなかったが、まあ、頂き物に文句を言ってはいけない。
というわけで、今夜のわが家の夕食は、豆腐とぶりの照り焼きだった。
中には三種類の豆腐がそれぞれ数個ずつ入っていた。
おぼろ豆腐。
ゆば豆腐。
山芋豆腐。
まず、おぼろ豆腐を開けた。
容器は、何といえばいいか、まあ、分かりやすくいえばコンビニで買うなめらかプリンのギガサイズだ。
密封された封を開け、レンゲでたっぷりすくいとって皿に乗せた。
何の調味料も掛けず、まずはそのまま一かけを箸ですくって口にはこんだ。
う・ま・い!
舌触りはなめらかで繊細。
それこそ某コンビニのなめらかプリンに勝るとも劣らない。
だが、つるつるななめらかさとは違う。
よく味わうと、大豆がほぐれたその繊維質がはっきり感じられるような、ざらつきのある、味わいたっぷりのなめらかさなのだ。
ああ、それに!
豆腐マニアのかたには解説する必要もないが、おぼろ豆腐といいくみ出し豆腐といい、豆腐本来のジューシーでたっぷりとしたオリジンの状態は、残念ながら食べにくい。
水気が多すぎて、うまみは感じても舌触りや歯ごたえに不満が残ったり、かといって和紙などで濾しすぎると今度はうまみが逃げたりすることがある。
和紙に残ったしみを見ながら、このしみこそが私の食べたかったものだったのではと考えた諸兄は少なくないはずだ。
このパック詰めのおぼろ豆腐は、うまみはたっぷり残しながら、形が崩れない。
信じられるだろうか、形の崩れないおぼろ豆腐など。
だが、この味は、確かにおぼろ豆腐だ。
甘い。
とても、甘い。
醤油や薬味をかけずに、このままずっと食べていたくなる甘さだ。
舌のいろいろな部分で味わった結果、舌の右横やや下側で感じる味が一番気に入った。
ううっ。
はしできちんと切れて、持てて、自由に食べられるおぼろ豆腐なのだ。
添付のだしもよかった。
醤油というにはソフトすぎる味で、豆腐とこのタレだけでじゅうぶんだとも思った。
その後、いろいろな薬味の取り合わせを試してみた。
幸いわが家には減塩だし醤油という必殺の調味料がある。
庭からネギとしそをちぎってきて、ほどよく刻んだ。
新生姜をおろしたものと、桃屋の瓶詰めのおろし生姜も用意した。
結論として、どの組み合わせでも合うが、薬味の味が強いほど豆腐本来の独特なうまみが消えてしまうことが分かった。
最適なブレンドは一応発見したのだが、わが家の固有事情だから公表は控える。
要するに、豆腐のうまみを殺さない程度に薬味を抑え、だし醤油の味に頼らず、少しずつ足しながら食べるのがよい、という結論に達した。
ゆば豆腐と山芋豆腐にもそれぞれのおいしさがあったのだが、すでに修飾句を並べすぎたから、これ以上、味を言葉で表現することは控えよう。
豆腐を存分に食べるのがこんなにぜいたくなことだとは知らなかった。
明日は電話で、送り主に大いにお礼を申し上げるつもりだ。
(2012年7月19日執筆)




