はじめに
「食エッセイ」は、「辺境の老騎士」を執筆するにあたり、その参考とするために書きつづったメモのようなもので、活動報告で時々に公開した。
ものを食べた感動を表現する練習をしようと思ったのであり、また書きつづった内容がネタ帳にもなるだろうと考えたのである。
やがて老騎士が書籍化されることになったのだが、なんと一話に一つ食事ネタを入れるということになった。となると手持ちのネタだけでは不足するので、どうしても取材をする必要がある。
私は喜び勇んで新しい店や食品を開拓した。「食エッセイ」は、その取材記録ともなった。
老騎士の執筆が終わると、当然のことながら「食エッセイ」の執筆は止まった。
止まったのだけれど、時々、「あ、これは食エッセイ向きの話になるな」と思えるような体験をすることがあり、ぽつぽつと書き足した。
先日、ある店で昼食を取り、「そうだ。このラーメンのことを食エッセイに書こう」と思った。
しかし、すでに書いたような気もする。
そこで過去の「食エッセイ」を調べたのだが、多数の活動報告に埋もれた「食エッセイ」を見つけること自体、多少手間がかかったし、特定の対象について書いたか書いていないかを確認するのは、なかなか大変だった。
今となってみれば、「食エッセイ」全体を一目で見渡せるようにしておきたい。
というわけで、このたび「食エッセイ」を作品として掲載することにした。
今までのエッセイを取りまとめるのがおもな目的なので、今後の更新頻度は非常に低いと思われる。
基本的に活動報告に発表したときのままだが、内容によっては若干の修正を加えた。
自分の心覚えのためだけというなら、活動報告に記述する必要はない。自分のパソコンに蓄積すればよいだけのことだ。また、作品として発表する必要もない。けれど実際に活動報告での「食エッセイ」にふれてくださったかたはよくご存じの通り、公開すればコメントを頂けることがある。そのコメントが楽しい。勉強にもなる。うれしい思いにならせてもらえたり、胸が温かくなったり、勇気を頂けることもある。
もしもこれから公開するエッセイに興味を感じてくださったなら、活動報告のほうでそのコメントを見ていただくのも一興かもしれない。
「小説家になろう」の感想欄の仕様が変わり、感想を特定の話に紐付けることができるようになったことも、今回、このエッセイを作品として投稿することにした理由の一つだ。
ある作曲家が、「観客席のざわめきが、この作品の中身だ」と言ったそうだが、そのエッセイもまた、コメントや感想を含めて味わっていただけたらと思う。