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奇妙な留置人  作者: 伊藤むねお
8/21

泊り客(留置人)

「財布を拾って届けようとしたというのは本当だったのだね」

 畑中が聞いた。

「拾った場所、時間、現場までの道順、色々ひっかけもやってみましたがボロがでません。このルートです」

 兵藤は立ち上がって白板の前にいった。そこにはすでに現場付近の大きな白地図が貼ってあり、区分けやポイントを示す様々なマークが入っていた。

「立花が、自称立花が財布を拾ったというのはこのスーパーの駐車場の横のここで、時刻は3時45分ころです。開いて見たら自動車免許証があって、住所を見たら近くだったの自分で届けてやろうと思ったというのです。免許証の写真見てその気になったのじゃないか、といったら笑ってました」

「おまえが笑われたんだよ」

 斎木がいった。

「やはり土地勘があるってことかな」

「まあね、といってました。どうしてかは言いませんが」

「昔、なにかの配達をやっていたとか」

「たとえば、そうでしょうね」

「財布に彼の指紋は」

「ありました。外にも内にも」

「調査官。あの男、オナカマということはないでしょうね。俺たちの」

 斎木が小声でいった。

「ん?・・・秘密捜査官ということか」

「ええ。一般人にしてはちょっと」

「それはないだろう。だってな」

 兵藤が斎木にいった。

「電話も使いたければ使っていいよっていってあるんだ。それに害者の身辺にそんな・・・ああ、ないこともないか。口座に残っていた大金か」

 斎木がそういうと、畠中がそれを制して言った。

「大金は多分昔、代議士のダンナが死んだときに息子からもらったんだろう。たしか週刊誌にそんなことが出てたよ。斎木。オナカマであっても俺たちは知らんふりでいい。それ、もういうなよ」

「わかりました」

 斎木は首をすくめた。

「で、逃げた男の足取りは」

「まだ掴めてません。しかし彼氏の記憶がすごく良くて人相はこのとおり、体型や服装もばっちりです。県内各署や近隣の県警本部、警視庁には既にウォンテッドを流しました」

「目撃者はその自称立花だけか」

「いえ。畑から県道、ここですが、ここに上がったところで子ども連れの主婦二組も確認してます。こっちの方に走って逃げたということで、今うちの連中がその一帯で足取りを追ってます」

「自称立花が共犯者ということはないか」

「共犯だったら、逃亡者が2階から飛び降りまでしないでしょう」

「どうして飛び下りたのかな。あの男、強そうにはみえないが。いくら下が畑だってへたすると骨折ものだぞ」

「飛び下りていいことがひとつあります。畑の中を走りますとスーパーの駐車場がずっと近いんです。逃亡した男はあそこに車を置いてたのじゃないでしょうか」

「早くカードを使わねばと時間を急いだか・・・狂言のセンは?」

「いやあ。包丁には一度拭った跡があってその上に彼氏の指紋ですからね。共犯というのはちょっと無理でしょう」

「そうか。ま、彼氏がからんでいるとは今は俺も思ってないがね。どうしてる」

「やつですか? まだ、あそこの応接室に置いてます。さっきカツ丼を出したら凄い勢いで食いましたよ。でもどうしたらいいものでしょうかね。氏名住所不明者を放すわけにはいかんでしょう。重要な証人でもありますし」

「ここのオリに泊まってもらったら」

「え? 留置ということですか」

「泊まり客としてだ。ま本人さえ了解してくれればいいのじゃないか。一筆もらって。カツ丼にがっつくのじゃウエルカムだろう」

「まあ。ルームは空いてはいますけど」

「それ、俺からいうよ。斎木も一緒に来てくれ」



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