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07.進軍

 屋敷に連れ帰られたレイはそれからずっと明け方まで体力馬鹿に寝室に拘束され続けた。

 昨日と同じような朝日が目に染みるのを実感しながら昨日と同じような食事をとってしていると王宮から昨日と同じように使者がやって来た。


「アラン様。」

 食事を終えたアランに執事長が何やら耳打ちすると書類を手渡していた。

 アランはそれを一読すると鬼の形相でその書類を破り捨てた。

「あのバカ王が偉そうに!」

「アラン様。落ちつかれてください。そちらには何と書かれていたのですか?」

「ああ。また神殿から新しい剣を届けさせるから魔剣を作れだと。」

「それはまた無理難題を。」


 魔剣を作るってまさか。

 レイは二人の話に顔を蒼褪めさせた。

 腕輪に構っている暇はない斬られる前に逃げなきゃ。

 レイの思考をよんだようでアランは膝上に座らされている彼女の腹に回されていた腕をさっきより強く拘束して来た。


「おい、落ち着け。俺はお前を斬る気はない。」

 レイが信じられるかという顔で彼女を拘束しているアランを見れば彼はそのまま腹に回した腕を弛めるとレイのお腹をサワサワと触り出した。

「ふにゃあ!?」

「これで意味はわかるだろ?」

「はぁあ?」

 こいつは何を言おうといているんだ?


「だからこれだって。」

 また腹を撫でまわされた。

「アラン様、いくら何でもそれでは分かりませんよ。」

「そうか?」

「レイ様。アラン様はあなたに自分のお子が出来たかも知れないのにそんなことをするわけがないとおっしゃっているんですよ。」

 腹を触っているのを見て、それを察しろと!

 わかるかそんなこと。

 思わずアランを睨めば笑顔を返された。

 ダメだこいつ。

「さて、それじゃあそろそろ出陣するか。」

「出陣?」

「ああ、どうやら元魔国の残党が蜂起したらしいからな。後は頼むぞ。」

 執事長はアランの言葉に深々とお辞儀をすると彼は満足そうに頷いてからレイを抱き上げ、そのまま王宮に向かうため立ち上がった。

 アランは屋敷の玄関前に待機させていた馬にレイを抱えたまま乗るとそのまま走り出した。

 はぁ~、普通は女は屋敷に置いていくもんじゃないの?

 思わずそう思って自分を抱きかかえている馬鹿を見れば本人からはとびきりの笑顔ととんでもない言葉を返された。

「逃げようとしてもそうはいかんぞ。」

 どうやって逃げるんだ?


 レイが疑問符を浮かべているとちょっと間抜け面のアランが見られた。

「知らないのか?」

 何をだ?

「そうか知らないのか。」

 アランは何がおかしいのか王宮に向かう間中、大笑いしていた。

 王宮の門を下馬せずに通り過ぎ近衛騎士たちがいる広場に馬を乗りつけると昨日アランを捕獲した副隊長が広場で訓練していた部下を他のものに任すとアランの傍にやって来た。

「アラン様。行かれるのですか?」

「ああ、選抜は済んでいるか?」

「はい、一応。命令書はこちらにあります。」

「色々手間をかけたな。」

「いえ、それほどでも・・・。ですがよろしいのですか?」

 副隊長は未だにレイの腰を抱きながら話すアランにチラッと目線を向けてから溜息を吐いている。

「お前ならどうする?」

「私なら面倒なのでそのままここに居座りますが。」

「お前ならそうするが俺はどうもここが好きじゃないんだ。他のことは任す。」

「あまり任されたくありませんが貸しにしておきますので。」

「ああ、貸されてやる。出発は一時間後だ。」

 意味不明の二人の会話が終わるとアランはレイの腰を抱いたまま昨日いた部屋に向かった。

 部屋に入るとそこには鎧が人揃え置かれていた。

「手伝ってくれ。」

 アランの頼みにレイはアランの鎧の留め具を留めた。

 よくこんなの着てられるな。思わず感心すればいきなり背後からアランに服を引き剥がされそうになった。

 ビクッとして振り向けばそこには小さい子供用の鎧を持ったアランがいた。

「これをつけろ。手伝ってやる。」

「ふ・・・ふくの上からでもつけられる!」

 慌てて言えば気づかれたかと呟かれた。


 普通気づくわ!

 アランはあっさりと服から手を離すと仕方なく服の上からレイに鎧を付けた。

 逆に服を着ずに鎧だけつけるとかないだろう。

「アラン様。」

 レイが文句を言うとしていると扉が叩かれ昨日レイにものすごーく不味いお茶を入れた兵士が扉を開けて現れた。

「準備が整いました。」

「ああ、今行く。」

 アランは着替え終わったレイを連れ、先程の広場に向かった。

 そこには先程はいなかった兵士たちが鎧を着込んで整列していた。

 最前列には二頭の駿馬が鞍をつけられ、そこに佇んでいた。

「乗馬は出来るか?」

「これを用意しておいて今それを聞く?」

「ああ、出来れば一人で乗ってほしいからな。」


 レイはアランの傍を離れると馬に翻訳魔法をかけて耳元で囁いた。

<わたしを乗せてくれる?>

<喜んで。>

 彼女は快諾してくれた。


 たぶんまあ大丈夫だろう。

 一応逃げる時のことを考えて農耕馬で何度か乗馬は試したのだ。

 軍馬は初めてだけど。

 これも逃げるための訓練よ。

 レイは魔法を使って馬の上に飛び上がるとそのまま馬に跨った。

 レイの乗馬の様子に安心したアランも隣にいた黒い軍馬に跨った。


「では出発。」

 アランの声に部隊は元魔国向かった。

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