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05.不運

「うーん。」

 レイは体中のだるさに目を覚ました。

 昨晩なんだか物凄い悪夢を見た。

 今もお腹の上に何かが乗っていて重い。レイは動こうとして腹の上にあるものを退かそうして逆に気がついたら、退かそうとしていたその腕に抑えつけられていた。

「どこに行くきだ?」

「どこ?」

 声を掛けられまじかに前世でも真っ青な筋骨隆々の美男子を見て固まった。

 なんで昨日の美男子がここにいる?

「なんだ、もう一戦か。よし。」

 美男子はそういうとレイに圧し掛かって来た。

 彫の深い美顔がだんだんと近づいてくる。

 ちょっと待て。

 一戦てなんだ一戦って。

 焦るあまり頭が上手く働かない。

 アランは硬直しているレイを無視して彼女にディープキスをすると分厚い右手をレイの小さな胸にのせ呟く。

「まだ小さいなぁ。まあ安心しろ、何度も揉んで俺が大きくしてやる。」

 アランの言葉にカッとなって目が覚めたレイが伸し掛かっている男を壁に弾け飛ばした。

 アランは綺麗にくるっと回って途中で受け身をとると扉前に着地した。


 そこに扉を開けてこの屋敷の執事が現れた。

 真っ裸でたっている男に動じることなく着替え用の洋服を渡すと食事の準備が出来ていますと声をかけ部屋を出て行った。

「そう言えば腹が減ったな。食べるかレイ。それとももう一戦ベッドで・・・。」

 ニヤニヤしながら見てくるアランに気がついて慌てて全裸を傍に置いてあった布団で隠すと服をくれるように要求した。

 アランは先程執事が置いて行った服の束を示す。

 そこに行くにはこのベッドを出るしかない。

 レイが真っ赤になって魔法を使うか逡巡しているうちにアランは自分の服を抱えて浴室に消えた。

 レイは慌てて布団から出ると服をとろうとして固まった。

 身体中がギシギシしていた。

 特にあらぬところが。

 自分に洗浄魔法をかけてから治癒魔法を掛けようとして唖然とした。

 これ以上魔法を使うとこの場で気絶しそうだということに。

 つまりなんでかあれだけあった魔力がそこを突きかけているっていうことのようだ。

 なんでそんなことになる?

 理由もわからないながらもフラフラしながら服を掴むと何とかそれに手を通した。

 やっと着替えた終えた所にさっぱりした顔のアランが浴室から現れた。

「もう着替えたのか。」

 なんだかすごく残念そうな顔で見られた。

 なんか分からないが危なかった。

 

 男はいまだにフラフラしているレイを抱き上げると寝室を出て食堂に向かってくれた。

「おはようございます、アラン様。」

「ああ。そうだ。これから毎朝レイとはここで食事を摂る。」

「畏まりました。それと王宮より使者が来ておりますが?」

「仕方ない。朝食が終わったら行くと伝えてくれ。」

 執事は頭を下げると傍にいた使用人にそれを伝えてくるようにいうと食事が始まった。

 結局、レイはアランの膝の上に座らされたままそこで食事をした。

 何度か降ろしてほしいと訴えると口元にスプーンを突き付けられ無理やりアーンさせられた。

 あまりの羞恥にその後は黙って食事をした。

 食事を終えるとまたお姫様抱っこで寝室に連れ込まれ、恐れおののくものの今度は寝室で待っていた侍女たちにドレスを着付けられた。

 目を白黒させるうちにまたアランに抱えられ王宮からの迎えの馬車に乗せられた。

「アラン様。王が怒っていらっしゃいましたよ。」

「なんでだ。」

「分かっていらっしゃいますでしょ。魔剣を壊したからですよ。」

「それは濡れ衣だ。俺は言われた通り魔剣で切りつけたが魔剣が勝手に壊れたんだ。違うか?」

「私には何とも。取り敢えずそれを直接王に言って下さい。」

「それと・・・。」

「なんだ?」

「いえ、なんでもありません。」

 王宮からの使者はアラン王子の膝の上に座っている人物を見て諦めたように視線をそらした。

 一方、アランの膝に座っているレイは真っ赤な顔で俯いたままだった。

 誰でもいいからこいつを止めてくれ。


 馬車はレイの願い虚しくそのまま昨日彼女がいた王宮に入ると王宮前の通路に横づけされた。

 使者が先に降り、その後にレイを抱えたアランが降りた。

 周囲にいた侍女や侍従、護衛騎士の視線が二人に突き刺さる。

 いやだぁー。

 自分で歩きたい。

 レイはダメもとでもう一度アランに降ろしてくれるように言うと今度は素直に降ろしくれた。


 ただしレイの腰には彼女を拘束するように密着したアランの腕がくっついていた。

「行くぞ。」

 アランはそういうと大股で歩き出した。

 レイは引きずられるまま一際立派な扉がついた部屋の前まで引きずられた。


 扉の前では両側を守っている騎士がアランを見て頭を下げた。

「開けろ!」

 アランの声に扉が開けられる。

 部屋の中には数日前謁見室で拝謁した王が優雅にお茶を飲んでいた。

「遅いぞ、アラン。なぜ昨日すぐに来なかった?」

「そりゃしょうがない。新婚だ。」

 王のこめかみがピキリと音を立てた。


「いま・・・お前は今、なんて言ったんだ?」

「ああ?もう耳も遠くなったのか?結婚したんだ。」

「はぁあ・・・結婚だと!」

「当初からその予定だろ。」

 王の顔は般若のようだ。

「そ・・・そんな話を誰がした。」

 アランはビシッと指を王に向けた。


「あまり怒ると体に悪いぞ。用件はそれだけか?じゃ俺、帰るわ。」

 アランは唖然として隣で固まっているレイを抱き上げると真っ赤な顔をして怒っている王を置いて部屋を出た。


「じゃ、家に帰ろう。」

 アランは通路の途中で降ろしてほしいという彼女の要望を聞いて、通路にレイを降ろすと先程歩いて来た廊下をスタスタと戻り始めた。

「えっ・・・ちょ・・・本当にいいの?」

「問題な・・・。」


「アランさまぁー。」

 そこへ隊服を着込んだ壮年の男が王宮の廊下を駆けて来るのが見えた。


 チッ。

 隣のアランから舌打ちが聞こえた。

 レイの腰をガッシリと抱えながら素早く違う方向に歩くが通路の途中で壮年の隊服を着込んだ男に捕まった。

「どちらに行こうとしてるんですか、アラン様。」

「ああ?どちらって家。」

 ガシッ。

 壮年の男は筋骨たくましい腕をアランの首に回すと体格のいいアランを引きずって歩き出した。

「おい、どこに連れて行こうとしている?」

「もちろん隊長の執務室ですよ。溜まった書類を片付けてから帰って下さい。」

「はあぁー。ありえん。俺はこれから新婚・・・。」

「片付けてからにして下さい。俺にサインを偽装させる気ですか?」

「かまわ・・・。」


 そこに今度はもっと若い騎士たちが駆けつけた。

「いたぁー。隊長。こっちです。」

 アランとレイは隊員に囲まれてそのままアランの執務室に連れ込まれた。

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