14.祝勝パーティーと腕輪の外し方
レイは盛大な拍手の中観客席から降りて来たアランにいきなり肩の上に担ぎ上げられた。
「ちょっ・・・急に何するの?」
「よくやった。」
アランはそういうとボロボロで歩くのもやっとのレイをそのまま会場から連れ出してくれた。
助かった。
あれ以上会場にいたらたぶん倒れてた。
カタリーナは二人が会場を出る前に駆けつけた救護班に担架で運ばれて行った。
どうもかなりの重傷のようだ。
駆けつけた救護班の面々が蒼褪めていた。
「アラン様。」
どこにいたのか会場から出た所で武国からアランについて来たサンが駆け寄って来た。
「観客が興奮しているうちにレイを俺の側近にすると周知しろ。後は戦勝パーティーの準備だ。」
「はい、後はお任せ下さい。」
二人はそれだけ話すとアランはレイをつれ寝室に向かった。
昨日と同じようにベッドに放り投げられた。
そしてアランがレイに覆い被さって来た。
お・・・重い。
「ちょっ・・・ナニする気?」
「当然ご褒美にナニしてやる。」
「ちょちょっ・・・それはご褒美じゃない!」
「遠慮するな。」
今魔力使い果たして死にそうなのに何考えてるんだぁー。
レイは抵抗虚しくそのままアランに貪られる途中で気を失った。
トントントントントン
トントントントントン
トントントントントン
うーん、何の音?
キツツキ?
トントントントントン
トントントントントン
トントントントントン
ウーン。
煩い。
「レイ様。レイ様。れいさまぁーあー。」
地面が揺れる地震の夢で目が覚めた。
ガバリと起き上がるとそこには冥土ならぬメイドさんがドレスらしきものを持ってベッド脇に控えていた。
えっ、何ごと?
疑問符を連発しているうちに傍にある浴室に数人掛かりで放り込まれた。
ザッバーン。
ごしごしごし。
泡泡泡。
ゴシゴシゴシ。
泡泡泡。
あっという間にいろいろな大人な何かで汚れていた体が洗われ、真新しいドレスを着付けられた。
すぐに鏡らしきものの前に座らされて顔一枚分の化粧を施された。
お面のような化粧のお蔭で別人のような人物が魔法のようにそこに現れた。
自分で自分の顔を見て、これ誰と思わず突っ込みそうになった。
鏡を凝視していると扉が開いて煌びやかな衣装を着たアランが現れた。
いつもの三割増しの輝きに思わず顔をそむけたくなる。
うっ貧しいじゃなかった眩しい。
目が目が・・・。
「何を遊んでいるんだ?会場に行くぞ。」
アランはレイの腰をグイッと掴むとそのまま速足で会場に向かった。
ちょ・・・ちょっと待ってぇー。
足・・・足がヒールのせいで早く歩けません。
いやダメだ。
ここでそんなことを言えば俵担ぎに変更される。
ま・・・魔法だぁー。
魔法・・・えっと何を使えばいいの?
グイッ。
結局忍耐力の切れたアランに俵担ぎされました。
くそっ。
なんでこんなことに。
しばらく歩くと戦勝パーティー会場に着いた。
一応扉前でアランの横に降ろして貰えた。
ありがたやありがたや。
アランの隣に降ろされた瞬間に扉前にいた兵隊が扉を開いた。
開かれた扉の先には色とりどりの衣装を身にまとった人々がいた。
『誰、この人たち?』
『彼等は元魔国の貴族たちだ。今回の反乱は主に元魔国の軍部が中心に起こしたんだ。軍部は自分たちの力を誇示したい連中だが彼らは伝統を誇示したい連中だ。』
『伝統?』
『そうだ。魔国の伝統は?』
『魔力重視!』
なるほどそれで昨日の試合で圧倒的強さで勝った私がここで必要になるってか。
『その前に腕輪を外すという情報を頂戴!』
『誰が武闘会場での試合だけといった。この場での情報戦に勝利してからだ。』
『ちょ・・・何いってんの。武闘会には優勝したんだから情報が先よ。』
レイが抗議しているうちに彼らは会場に入っていて周囲を元魔国の貴族たちに囲まれた。
これ以上二人でナイショ話は出来ない。
くぅー卑怯者。
これが終わったら絶対教えて貰うからね。
レイはアランを睨み付けるとすぐ目の前に現れた元魔国の貴族に微笑みかけた。
ふくよかなご婦人がレイを見て彼女の母親の名前を挙げた。
「ごめんなさいね。なんだがあなたと正反対なのだけど昔私と同い年の王女様がいらっしゃって、その方ったら王族のくせにまるっきり魔力ゼロで恥ずかしいったらなかったのよ。」
(#^ω^)ピキピキ
ピキッ
『おい、今は怒るなよ。気をしっかり持て。』
『大丈夫よ。真実なんだから別に腹は立ててないわ。』
レイはなんとか今の話をスルーすると隣のアランからその夫人と隣の夫にこれから魔力の強いレイを側近に向かえこの魔国を統治する旨を挨拶に来た一人一人に告げていった。
魔力重視の政策に彼らは会場でレイの魔力を目の当たりにした後なので揃って彼女に恭順した。
ほぼ9割の人間に挨拶を終えた所で今日の対戦相手である宰相ドワーフが彼らの前に現れた。
「今日はありがとうございました。レイ様。」
「ダンブルじゃなかった宰相ドワーフ。こちらこそ色々な魔法を見れてとても勉強になったわ。ありがとう。」
「そう言って貰えますと私もうれしいです。ところで気を悪くしないで頂きたいのですがあちこちであなた様が元魔国の王女であったナナ様の遺児だと囁かれているのですが本当でしょうか?」
本当だけどここはしらばっくれたほうがいいの?
それとも素直に認めるべき?
物語のセオリーなら認める方がいいわよね。
レイはセオリー通りに素直に認めた。
すると今まで丁寧に接していたはずの宰相ドワーフから冷気が漂って来た。
「そうですか。あなた様はあ・の・ナナ様の血を受け継ぐ方ですか。」
なんでか憎々し気な目で睨まれた。
あれ、ここは素直に認めると王道で大変お世話にとかなるものよね。
アーン、なんで物語のセオリーと違うの!
宰相ドワーフは刺し殺しそうな顔でレイを睨む付けながらとんでもない言葉を吐き出した。
「アラン様。最初に頂きました提案はまだ有効でしょうか?」
アランは急に振られた話を訝しく思いながら素直に有効だと返した。
「では今回の武闘会で二位になりました私は側近ナンバー2としてこれから執務でガンバらせてもらいます。それではレイ様これからは私もお見知りおきを。そうそうあなた様の御母上であるナナ様には昔、ドワーフのくせに魔力が高いと散々お褒めに預かりました。その時のことを踏まえて今後もよろしくお願いします。」
宰相ドワーフは優雅にお辞儀をするとその場から去って行った。
ちょ・・・っとお母様。
何しちゃってくれちゃってますの。
えーん、これからあんなのと仕事とかいやだぁー。
早く腕輪を外す方法を教えて貰って逃げ出さなくっちゃ。
そうよ。
逃げちゃえばあのドワーフ宰相と会うこともないわ。
よし、この戦勝パーティーが終わったら聞いてやる。
レイは意気込んでアランに言われるままパーティ会場で頑張ると夜分遅くやっと寝室に戻って来た。
早速アランを引き寄せて腕輪の外し方を教える様に迫った。
「おいおい。まだ外し方が分からないのか?」
「だから聞いてるでしょ。」
アランは大きな溜息を吐くと行動で教えてやるとレイに覆い被さった。
「な・・・なんでここにナニが出てくるの?」
アランは馬鹿な子を見る目でレイを見た。
「わかった実地でじっくり教えてやる。」
アランはそう宣うとレイに襲いかかった。
えっ・・・えっとなんでこうなるの?
レイは裸にされながらも腕輪の外し方を知ろうしたが結局翌朝までそれを考える時間をとれなかった。