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12.武闘会

 三日後。

 砦の横にある大きな広場で武闘会が開かれた。

 出場者は主塔が立っている広間にいた数十名と主塔に監禁されていた金髪巨乳の王族。

 それとアランたちが最初にいた砦から代表という名目でリーナ、そしてレイだ。

 試合形式は倒した人間の数が多ければ多いほど良いという単純な総当たり戦だ。

 試合の最初の対戦相手はくじ引。

 前日に引いたくじがこれから発表される。

 後は単純に当たっていない者同士で試合が行われ多く勝てばそのものが優勝者だ。

 これなら当たっていない人間がいないので誰が強いかがはっきりわかる。


「ではこれから最初の対戦相手を発表します。」

 ここまで準備を担当していた兵士が対戦カードを読み上げた。

「初戦、レイvs元魔国の東軍軍隊長。第二回戦、元魔国の王族カタリーナ・ドナラーナvs元魔国の西軍軍隊長。第三回戦、元魔国の南軍軍隊長vs元魔国の宰相、第四回戦、元魔国の北軍軍副隊長vs武国代表レーナ・・・。ではこれから第一回戦を始めます。両者前へ。」


 レイは魔法書を抱え前に出た。

 一方の元魔国の軍隊長は片刃の魔法剣を右手に持ってレイに対峙した。

 二人が中央の輪に入った瞬間に彼らの周囲に張り巡らされていた魔法障壁が起動し始め周囲を覆う。それと同時に試合が始まった。

 先に元魔国の東軍軍隊長が剣に雷の魔術を纏わせてレイに斬りかかった。

 レイは雨魔法と雷の魔法を書いた魔術式を魔法書から切り離して発動し、さらに土魔法の魔術式を書いた紙を魔法書から切り離して発動すると自分に向かって飛んできた相手の雷の魔法を防いだ。


 ドガーン!


 レイが相手の魔法を遮断しているうちに雷の魔法に水魔法を放ったレイの魔法が対戦相手の東軍軍隊長を襲い彼を感電させた。東軍軍隊長は白眼をむいて地面に倒れ伏した。

 同時に三つの魔法を発動したレイが眼前に展開していた土魔法を解除した時にはその試合は呆気なくレイの勝利で終わっていた。


 シーンと静まり返る観客たち。


 最初にこの試合の対戦カードを説明した兵士が魔法障壁が解除されたので再び現れるとレイの勝利を告げ、第二回目の試合の開始を宣言した。


 レイは運ばれていく元魔国の東軍軍隊長を横目に見ながら試合会場から観客席に戻った。

 観客席にはニヤつきながらレイを見ているアランの姿があった。

「よう、第一戦の勝利おめでとう。」

「まあ、アラン様の妻なのですから当たり前ですわね。」

 見るとアランの隣には第四回戦を戦う予定のレーナが彼に寄りかかるように席に座っていた。

 なんでこの女がここにいるのだろうか。

 レイは認めたくない感情に襲われて何とも言えない顔でアランを見てから”どうも”と一言だけ告げるとレーナとは反対側にある観客席に腰かけた。

 アランをちょうど挟んで両脇にレーナとレイが座った。


 その間にも第二回戦が始まっていた。

 対戦カードは件の元王族カタリーナ・ドナ・ラーナと元魔国の西軍軍隊長だ。

 二人とも同じような魔法なので魔法の撃ち合いになっていた。

 最初は遠隔魔法の雷を打ち合いそれを両者とも土魔法で防御。次は水魔法を撃ち合いそれを土魔法で防御、そんなやり取りが何度も繰り返され、最後は魔力量が多かった元王族カタリーナ・ドナ・ラーナが勝者になった。

「やりましたわ。」

 カタリーナは当たり前だという顔で観客に手を振って勝利をアピールした。

 見学に来ていた元魔国の観客たちが総立ちで拍手していた。


 先程と同じように対戦カードを説明した兵士が魔法障壁が解除されたので再び現れるとカタリーナの勝利を告げ、第三回目の試合の開始を宣言した。


 第三回戦は元魔国の南軍軍隊長と元魔国の宰相さまとの対戦だ。ここから見ていても魔法の杖といい白くて長い口髭といい某魔法学校の校長先生のような容姿だ。思わずレイは手をギュと握り込んでいた。前世で見た映画を見ている気分だ。試合は最初互いに間合いを取り合うように小出しでの魔法戦だった。そのうち元魔国の宰相さまの顔付が変わり物凄い威力の魔法を使って最後は呆気なく試合が終わった。


「さすが宰相ドワーフだな。」

「ドワーフですか?とても小さくは見えませんが?」

 隣に座っていたアランから呟かれた言葉に思わず反応してしまった。

 アランの方が目を剥いていた。

「お前、ドワーフを知っているのか?」

「えっと確か精霊の血筋を持っていて鍛冶仕事とかが得意で背丈があまり高くなかったと思ったんですが・・・。」

 レイはしどろもどろになりながら前世の知識を引っ張り出して話した。

 アランが目を丸くしてレイを見ている。

 彼の隣にいたレーナは次の試合出場の為いつの間にかいなくなっていた。

「どこでそれを知ったんだ。」

 なんだが怖い顔だが言っちゃいけなかったのだろうか?

 思わず固まっているとアランがふっと肩の力を抜くと説明してくれた。

「ドワーフは確かに背が低いし鍛冶仕事には秀でている。だが元魔国ではあまり魔力が高くなかったので疎んじられていたんだ。」

 なるほど確かに母の母国は魔力重視なのだからさもありなんか。

「それじゃもしかして武国と魔国が戦争したのもそこなんでしょうかね。」

 今度はアランが固まった。

 あれ、なんで固まるの?

 固まっていたアランから殺気が漂って来た。

「なんでそう思う。」

「えっ、そりゃもしかしてその武具とか作ったのはそのドワーフなんじゃないかと思えば彼らがなんらかの形で武国に逃げてきちゃったとか武国では敵に責められない様にそんな武器とかを作ってたんじゃないかと思っ・・・。」


 隣から今度は何とも言えない冷気が漂って来た。

「レイ。今は武闘会の最中だ。もうしゃべるな!」

 レイはその冷気に何も言えずただ素直に頷いた。

 やば!

 なんかわかんないけどこれはヤバイ。


「レーナ様、そこです。」

 ワーワーワー

 

 気がつくといつの間にか第四回戦が始まっていて全員がその試合に魅入っていた。

 かなり白熱していたようで誰も今の二人の話には関心を払っていなかったようだ。


 アランはレイを抱き寄せると耳元で今の話を他の人間の前では絶対するなと誓わされた。

 いや、今のアランの反応を見て誓わなくっても言いません。

 私は自殺志願者ではないので、ウン。


 試合はその後一人三試合以上してその日は終了した。

 レイは本日当たった相手に全勝した。なので残りの対戦者はレーナ・宰相ドワーフ・カタリーナの三人だけとなった。


「さすが俺の妻だな。褒美をやろう。」

 アランはそういうとレイを担いで寝室に向かった。


 えっ、褒美?

 いや、寝室ってなんで?


「ナニする気ですか?」

「当然ナニだ!」

 レイはベッドに投げ出された。

 明日試合なんですけど・・・。

 よく眠れるようにって試合前に魔力使い果たしますって・・・。

 ひょえー。

 なんか気に障ることしましたかぁーワタシ?


 ちょっ、明日試合ですから素直に寝たいです。


 涙!

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