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10.呪いの腕輪の外し方!

 アレンはついて行きたいと喚くレーナを砦に置いて、逆にめんどくさそうなのでついて行きたくないと心から思っているレイと砦の兵士数十人と共に魔国の首都に向かった。

 距離的には砦から馬で半日くらいだろうか。

 それほど離れているっていう程でもないのにアレンはここまで来るときにレイが見せた乗り方でおもいっきり馬を飛ばすと魔国の砦に向かった。

 なーんにもない荒野を砂埃を蹴立てて進むとその先に先程レイたちが出てきた砦より低い山があり元魔国の砦はそこに建っていた。

 今では砦の門は開け放たれ所々城壁は黒焦げになった後が点々と残っていて生々しい戦いの後がうかがえた。

 アレンたちが馬で駆けていくと砦から馬に乗った華奢な男が出てきた。

「アレン様。どうかされましたか?」

「そっちは変わりないか?」

「アレン様が言われました通り捕虜全員に魔力制限機能付き腕輪をつけ広間に閉じ込めておりますので、これといって問題は起きておりません。」

「そうか。それと連絡があった俺に会いたいと喚いていた魔国の元王族はどうした?」

「ああ、それならあまりにも喚き散らすので王族専用の部屋に防音用魔道具と一緒に部屋に鍵を掛けて閉じ込めてあります。」

「なるほどなら今からそいつに会おう。」

「えっ、会われるのですか?」

「ああ、そうだ。」

 アレンはニヤリと笑うとレイが乗っている馬の傍に自分の馬を寄せると彼女を抱き上げて自分に引き寄せるとそのまま馬を降りる。

「ちょっ・・・アレン。いくらなんでもこの体勢は・・・。」

 レイは肩に担ぎ上げられ、いくら何でも酷いと文句を告げた。

「気にするな。おい、部屋まで案内しろ。」

「は・・・はい。」

 華奢な男は乗って来た馬を降りると慌ててアレンの前に回ると彼を王族を閉じ込めている部屋まで案内する為に傍にいた兵士に何ごとか告げると歩き出した。

「アレン様、本当に会われるのですか?」

 なんでそんなに何度もこの兵士はアレンに確認するのだろうか?

 レイが疑問に思っているうちに砦の中を彼らはどんどん中央に向かって進んでいった。進むにつれ内装が武国の砦とは違い結構華美な装飾があちらこちらに見受けらるようになった。もっとも所々にその華美なものとは一線を画した防御用魔方陣の絵柄が所々に刻まれてはいた。

 その何ともいえない珍妙な重なり具合にレイはアレンに俵担ぎされながらもおもわず目を凝らしてそれらに魅入っていた。

 砦の中を先導していた兵士は建物の中央に着くとそこから真っ直ぐ上に伸びる階段を登り始めた。そこは砦の中央に立っていた主塔のようでその頂上にある一部屋にアレンたちは案内された。

「こちらです。」

 案内をしてきた兵士に扉前にいた兵士が幾重にもなった鍵束をガシャガシャと鳴らしながら鍵を開けて行った。これでもかという鍵束を開けると重い扉を兵士が押し開けた。


 ギギギギギギィ~。


 なんとも言えない音を響かせながら扉が開いた。

 部屋の内装は登って来た通路とは打って変わってものすごーく華美なものだった。

 どこの王宮かと思われるくらいの内装の中央に白いレースで彩られた豪華なベッドが置かれていた。

 そこにはフカフカの布団が敷かれその上に金色に彩られた長い髪をした美女がベッドに横になっていた。

 彼女は扉が開いた音に顔をこちらに向けた。

 アレンの顔を見た美女が妖艶に微笑んだ。

 その表情は獲物を狙う猛獣のようだ。

 思わずレイとアレンの隣にいた兵士が身震いしながらごくりと喉を鳴らした。

「お前か俺に会いたいと願い出たものは?」

 アレンは硬直しているレイをそこに降ろすとベッドにいる美女の前に立ち塞がった。

 美女はアレンに気がつくと豊満な胸を持ち上げる様に腕組みをすると何かを喚き始めた。

 しかし防音魔法が展開されているため何をいっているのかまったくわからなかった。

 ひとしきり喚き散らした後アランの隣にいた兵士がアランの命令で防音魔法を解除した。

「あら、やっと防音魔法を解いてくれてありがとう。私王族のカタリーナ・ドナ・ラーナですわ。アラン様。」

「それでお前が私に会いたい理由とは?」

「あら、簡単ですわ。私とあなた様が結婚すれば漏れなくこの元魔国の暴動を治めることが出来ますわ。」

「ほう、暴動を治められる?」

「あら、お疑いですの?あなた様が今後この地方を治めることになることは聞き及んでおりますわ。」

「誰から聞いたのか非常に興味があるがまあそれより何を根拠に彼らがお前に従うと考えているんだ?」

「もちろん魔力ですわ。この国一番の魔力の持ち主は私カタリーナ・ドナ・ラーナですから。」

 アランは彼女の意見を聞いてなるほどと一言呟くとそのままベッドから見える窓辺に行くと腰高にあるその窓辺に凭れかかりながら窓外に視線を投げると顎に手を置いた。

「武力には武力。魔力には魔力か。よし!」

 アランはニヤリと笑うと振り向いてカタリーナに笑みを浮かべて提案した。

「いいだろう。見事これから俺が開く武闘会でお前が魔力を持ってそれを統べられたならその提案に乗ろう。」

 隣で聞いていた兵士が目を剥いた。

「ア・・・アランさま。」

 嬉しそうに微笑むカタリーナに背を向けるとアランは主塔にある寝室を出た。

 レイも慌てて彼の後を追った。

 こーんな訳のわからない部屋に置いてきぼりをくらったらかなわない。

 三人が部屋を出ると扉の傍に控えていた兵士が先程の鍵を取り出してまた鍵を掛け始めた。

 ご苦労なことだ。

「アラン様。先程の言葉は冗談ですよね。」

 兵士が恐る恐る彼の背中に声を掛けた。

 アランはスタスタと階段を降りながら後ろを振り向かずに競技場の用意をしておけというとそのままその建物の外に向かった。

「アラン様。冗談も大概にして下さい。」

 やっと建物の外でアランは止まると反対だと喚く兵士を振り返ってさらに事細かく指示を出した。

「俺は本気だ。確かここには王族が権威を誇示するための闘技場がなかったか?」

「ありましたけど・・・ですが魔力を持ったものと誰が戦うんですか?」

「あー参加者か。もちろんこれから応募する。そこは心配ない。一部はすでに決まっているが出来レースとは思ってほしくないからな。あの主塔の元王族はちょうどいい。」

 なんでかアランはレイを見ながらそう宣った。

「ちょ・・・ちょっと何を考えて・・・。」

 レイがイヤーな予感にくるっと回れ右して逃げ出そうとすると肩をガシッと掴まれた。


 そして耳元で腕輪を触りながら囁かれた。

「これを外してやろうか?」

 レイは回れ右しようとしたのをピタッと止めるとアランの方に振り返った。

「外し方?」

「ああ、そうだ。外し方だ。」

 レイの喉がゴクリと鳴った。

 本当に外し方を知っているのだろうか?

「この後俺についてくれば、俺が本当に知っているかどうか見せてやろう。」

 アランはそう呟いた後もう一度先程の兵士に武闘会会場の準備を指示すると出てきた建物にまた入った。

 レイも半信半疑のまま彼の後について行った。

 アランはさっき通った時レイが入ろうとしていた図書館に入ると一番奥の棚まで歩いて行った。

 そこで棚の一番上に置いてあった本を手に取るとレイにそれを渡してくれた。

「読んでみろ。」

 レイは翻訳魔法をかけるとその本に書かれている文字を追った。

「呪いの解き方。」

 そこには種々雑多な呪いの種類とそれの解き方が書かれていた。

 だがものが呪いだけにほとんどが対象者が死ぬことが条件づけされていた。

 つまり何か。

 私が死ねばいいとか言いたいのかこいつは!

 思わずアランを睨めば何が可笑しいのか呪いの解き方がわかったかと聞いて来た。

「つまり私が死ねばいいと!」

「お前・・・ハハハハハ。ほんと馬鹿なんだなぁ。」

「じゃどうするというの?」

「呪いは何のために掛ける?」

「そりゃ相手を呪うため?」

「まあ普通の呪いならそうだ。だがお前の腕輪は同じ呪いでもアントワープ国の王位継承権を示す腕輪だ。違うか?」

 確かにこの腕輪は王位継承を示すものなので素直に頷いた。

「なら簡単だ。王位継承から外れれば腕輪は外れる。」

 確かにそうだがどうやったら死なずに王位継承から外れられるの?

「その外れ方を今回の武闘会でお前が優勝したなら教えよう。尚且つ外すことにも協力してやる。どうするレイ。」

 彼は外し方だけでなく外すことにも協力する。本当に?

 ウソを吐いているかもしれない。

 いやアランがウソを吐いて何の得がある?

 ウソを吐いて彼に得はないイヤなさそう?

 ウーン情報が少なすぎてどちらとも判断ができない。

 なら一旦ここはこの話に乗る方が自分にとって有利か?

「いいわ。その話通り優勝したなら必ず外し方を説明しなさいよ。絶対うそは許さないわ。もし今の話そのものが虚言ならその時はあなたの命で償ってもらう。」

「ああ、それで構わない。だが話せる条件は優勝だ。」

「それは大丈夫、問題ないわ。」

 アランはニヤリと笑うといきなり彼の本名を名乗り契約成立だと右手を差し出した。

 レイは驚きながらも素直に自分の今の名を名乗り、アランに手を差し出した。

 お互い本名で名乗って契約を交わしたことで彼はレイに本当のことを話すしかない。

 よし、これでこの腕輪を外せる。

 レイは訝し気になりながらも予期せぬ光明に胸を躍らせた。

 ここにレイとアランの副産物付きの契約が成立した。

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