足跡
重りは自慢すべきものではない。だがそれ以上に、恥ずべきものではない。
太陽が燦々と照る砂漠の上を、今私達は歩いている。
そして、歩いている人の中には大きな重りの繋がれた足枷がついている人と、ついていない人がいる。
大抵の人々は足枷のついていない人が砂の上に残した、綺麗な足跡を誉め称える。
一方、足枷のついている人は、まず歩くのが遅いし、その上重りを引きずった跡が足跡を潰してしまっているから、見向きもされない。
けれど、突風が吹いたとき、どうなるか。
重りを持たぬ人は皆吹き飛ばされる。
それはもう、あっけなく。
綺麗だった足跡は風が巻き上げた砂に埋もれ 跡形も残りやしない。
このとき、初めて重りを持つ人が重りを持たぬ人の前に立つのだ。
前に進むのを散々邪魔してきた重りにしがみつくことで、難を逃れた人達は、またゆっくりと砂漠の上を歩き始める。
風の一つや二つで消えることのない、潰れた足跡を残しながら。
歩くのを止めてしまったら、潰れた足跡でさえ徐々に消えてゆく。