参
私は、あの日を境に願掛けとして髪を伸ばしはじめて…今では、肩を少し超していた髪が腰あたりまで伸びていた。
「……今日の空も青いな」
次の日も私は夏樹の見舞いに行った。
窓から見える景色を見ながら、私はあの日を思い出していた。
「んっ……」
「──っえ?」
今、私の後ろから声が聞こえてきた気がした。
そんなはずないと思ってた。
だけど、私が一番望んでたことだから…。
だからつい、無意識に後ろを振り返った。
「…夏樹?」
だけど夏樹は眠っていた。
あぁ、私の勘違いか……そう思っていたら。
「……んっ、カズハ?」
気のせいじゃなかった。
今、目の前には夏樹がいて私の名前を呼んだ。
嘘じゃない、夏樹が目を覚ましたんだ!
私は、夏樹のことを強く抱きしめた。
涙を流して、何度も何度も謝った。
だけど夏樹は「何で謝んの」と笑って私の頭を撫でてくれた。
「カズハは、何も謝ることないんだ」
「だって、だって夏樹がこうなったのは…っ!」
「違うだろ、俺がお前を助けたかったんだ」
夏樹が真剣な顔でそう言って私を見る。
だけど私は、夏樹に後ろめたさがあって…真っ直ぐに見つめ返すことが出来なかった。
「……おばさん、呼んでくるね」
私はそう言って病室を出ようとした。
「カズハ、髪伸びたな」
「…うん、伸ばしてたからね」
私はそう言うと、病室を出て行った。
「…──おばさん?あのね──」
私はおばさんに電話で教えた。
おばさんはあっという間に来て、夏樹の病室に駆け込んだ。
おばさんは涙を流しながらも、満面な笑顔で夏樹を抱きしめてた。
私は、この時にあることを決めた……もう夏樹とはいられない。
傷つけてはいけない。
悲しませたらいけない。
迷惑をかけたらいけない。
だから、私は夏樹から離れないといけない。
「……バイバイ、夏樹」
私は夏樹の病室の前で小さく言うと病院を出ていった。