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「私は御薗鈴。機関では主に諜報活動をしてるんだ。生くん……こんなに小さくて機関入りなんて大変だろうけど、よろしくね」
そういった女、鈴の手がスプーンに伸び、黄色い物体を掬って口に運んでいく。僕も同じように目の前の黄色い物体を口へ運んでみる。……うまい。
「ここのオムライス、おいしいでしょ」
「オムライス……」
これはオムライス、というらしい。
黄色い物体を見つめながら頷くと、鈴はにこにことこちらを観察していた。
「ここでは私が一番年下だったから、後輩が出来て嬉しいなぁ……なんでも聞いてね」
「……機関、なに?」
「あっ、そっか。機関について話してなかった」
鈴は思い至ったように手を叩き、それからテーブルに指を置く。トン、トンと二回テーブルをつつくと、テーブルに画面が現れた。
「これはさっきの鋭斗さんが開発したテーブルなの。鋭斗さんは他にも色々と開発してるんだけど……と、それは後にするね。このテーブルはこうやって機関の人間が指で触ると指紋認証で画面が作動するんだ」
説明を聞き画面をみる。
『能力者による正義機関について』
題名に続く文字の羅列。首を捻ると、鈴は指をテーブルで滑らせた。
『機関』『集団』『能力犯罪者』『一般人』
四つの文字がスライドされた画面に表示される。
「この四つの関係から説明するね。基本的に機関にとって『集団』と『能力犯罪者』の二つは敵対、粛清の対象。つまり倒すぞーってこと」
指がなぞったところに矢印が表示される。機関から他の二つに向かって敵対、と文字が書かれた矢印。
「そして『一般人』は私たち機関の守る対象。能力犯罪者や集団の一般人への攻撃を機関が阻止する」
能力犯罪者と集団から一般人へ攻撃と書かれた矢印が伸び、それに機関から大きく"阻止!"と書かれた矢印がぶつかる。
「大体のところはそんな感じ。要するに機関は集団や能力犯罪者から一般人を守るところなんだ」
「--ま、実際はそんなことどうでもよくて、ただ集団を潰せればいいんだよ、政府は。能力犯罪者なんて少数のちっせぇ異常者や、なんの益にもならん一般人なんて気にしちゃいねぇ」
背中から聞き覚えのある声がする。振り向くと、片方の頬を腫らした壮が立っていた。
「壮さん!」
「カマセくんがどうしても気が晴れないみたいだったから、一発殴られてきた」
にやりと壮は笑う。痛そうなのに楽しいのだろうか。
「もう!気を付けてください。……というか!そういうことを言うのは教育に悪いです!」
「へーへー」
壮が近くに腰掛ける。鈴はため息を吐いてこれ以上何か言うのを諦めたようだった。
「……えっと、大体はそんなとこ。詳しいことはまた明日ね。今日は遅いし……。まだ生くんの部屋の用意が出来てないらしいから、私の部屋で休もう」
にっこりと笑う鈴に、オムライスを食べながら頷いた。