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あの後、僕が頷くとスーツの男は迎え入れる準備をすると言い、ポロシャツの男に後は頼むと何処かに行った。スーツの男の名は神宮陽向というらしかった。
「いいか?能力は神ってのが与えた恩恵だ。つまりお前みたいな能力者は得体のしれん神ってやつのお気に入り。俺達は常に神の存在を感じてるわけだが、実際神がどんなもんなのかは誰も知らない。ここまでわかるな?」
「…………」
「……わかってねぇな。ったく、なんで俺がこんなガキのお守りなんてしなきゃならねぇんだっつの」
「…………」
「その神ってのも気味悪ぃモンだしなぁ?常にこっちを監視してんだぜ?変態としか思え--」
「常に此方を見守ってくださっている、だ!お前の意見を何もわからない子供に刷り込むな!」
ポロシャツの男、もとい源壮が喋っているのを無言で見ていると、さっきまで壮の後ろで黙っていた男が突然壮を殴った。男は不思議な機械を片目につけていた。
「……ゴホンッ。瀬良生だったか。能力についてはどこまで知っている?」
機械の男が此方に問いかける。
神、監視、能力。よくわからない。能力は、母さんが嫌いと言っていた。
「嫌い、だって」
「はぁ?なんだそりゃ」
「…母さんが」
僕がそういうと壮は顔を歪めた。不思議な機械の男は再度咳払いをし、「やはり僕が説明しよう」と此方に向き直った。
「僕は鎌瀬鋭斗だ。鋭斗と呼んでくれ」
厳しそうな顔で此方を見る男……鋭斗に、壮が薄ら笑いを浮かべ男の肩を掴む。
「カマセくんは苗字を呼ばれんのが嫌いなんだってさ」
壮の手が瞬間振り払われる。男は血が上っているのか真っ赤な顔で壮を睨んでいた。
「わかってるならカマセと呼ぶなこの愚男が!」
「気にしすぎなんだよ。ナイーブなお年頃か?」
「お前ぇえッ!」
鋭斗が笑っている壮の胸ぐらを掴む。
一触即発、というものだろうか。
ぼうっとそれを見つめていると、「ああ!駄目ですよーっ!」と誰かが走ってきた。
「もうっ、なんで喧嘩してるんですかぁ!リーダーさんに怒られちゃいますよ!そしたら來縷々さんに何されるか……!」
駆け寄ってきたのは白い頭巾を被った変わった服装の女だった。女は來縷々という名前を出したと思うと顔を青ざめさせうずくまって震え出す。
「俺らは仲良くしてるだけだぜ?鈴ちゃんも混ざる?」
「お、ま、え、はッ!!」
「やめてくださいーーっ!……わ、わかりました。この子は私が引き受けますので!お二人は好きにしててください!」
と女が僕の肩を掴んで何処かに連れてこうとする。
「ありゃ」
「そうしてくれ!僕はこいつを説教しなきゃならん!」
「俺より十も年下の癖して説教?バカいってんなよーカマセよぉ」
「じゃ、行きますので!」
そのまま引っ張る女を見ると、此方に気づき笑いかけてきた。
「お腹すいてるよね?食堂で話そっか」
僕は頷いて女に着いていった。