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明治終わり、将軍死ス

2ヶ月ぶりの更新です。遅くなってすいませんでした!

1912年7月30日


0時43分


明治天皇、崩御。




「そうですか……陛下がお隠れになりましたか……」


父上に話があると呼ばれて行ってみれば陛下が崩御したと聞かされた。


「……これもお前の言う通りになったな……」


明治が終わったか……激動の明治が終わり、大正が始まるのか……


「……義仁よ……本当にいいのか?」

「何がです?」

「学習院を辞めて幼年学校に行くことだ」


今年の10月からオレは東京にある陸軍幼年学校に入学する。その話はこの前もしたはずだ。何を今さら……


「13歳から入学できるはずですが?」

「殿下はどうする?」

「私以外にも迪宮殿下にはご友人がおられます。それに……私にはやらねばならぬことがあるのです。」


その言葉を聞いた威仁は苦い顔になった。


「確かにお前の言うことも、お前がやらねばならないことも分かっている……しかしお前はまだ子供だ。それにまだ時間がある。もう少しぐらい殿下のお側に居てもいいのではないか?」


まだ時間がある……か……確かに父上から見れば時間があるだがオレから見れば短い……


「父上、私はまだ13歳の子供です。しかし私から見たらたった二十九年しか無いんです!二十九年ですよ!二十九年で何ができるんですか!?海軍だけでも船を造り、その船を操る兵を作り、それら指揮する士官を作る。それだけでも何年も掛かるんですよ!?陸軍だって同じだ!帝国には一人でも多くの兵と士官が必要なんです!今から準備をしないと間に合わないんです!」


一気に話してしまった。しかし時間がない……一刻も早く軍人にとなり軍を改革しなければ……




9月10日


学習院の授業が終わり帰ろうと校舎から出たところに迪宮殿下が何かの本を両手で挟んで走ってきた。


「どうしたのですか?迪宮殿下?」

「卯宮、見て院長閣下からこれを頂いたのだ」

「これは……」


その本の名は『中朝事実』。オレは読んだことは無いが名前だけは知っている……


「迪宮殿下、院長閣下のご様子はどうでしたか?」

「それが……どこかに行ってしまうような感じがしたのだ」


やはり……!


「では私も院長閣下に挨拶してまいります。迪宮殿下、お気をつけてお帰りください」

「うん……院長閣下によろしく伝えてくれ」

「分かりました」



院長室


院長室に居るかはわからないが思いつく場所がここぐらいしかない。


コンコンッ


「どうぞ」

「失礼します」


ドアを開け中に入り一礼した。


「どうしたのですか?卯宮殿下?」

「少しお話がしたくて参りました。”乃木”院長閣下」


今、オレの前に居るのは日露戦争において難攻不落と言われた旅順要塞を陥落させ英雄となった大日本帝国陸軍大将、乃木希典その人がいる。

そしてオレの記憶が正しければ三日後に殉死する……!


「お話ですか……?」

「閣下、単刀直入に申し上げます。あなたは自ら腹を切るおつもりですか?」


義仁がそういうと乃木は少し驚いた表情になったがすぐに真顔に戻った。そしてゆっくりとした口調でこう答えた。


「なぜそう思われるのですか?」

「……ではなぜこの時期にで迪宮殿下に『中朝事実』をお渡しになるんですか?もうすぐ大喪の礼ですよ?明治天皇に仕え絶対的な忠誠を誓っている忠臣たるあなたなら後を追って腹を切ってもおかしくないと思ったからです。それに……」

「それに……?」

「あなたの目が何かを覚悟された目だからです」

「ふむ……」


義仁の答えに対し乃木は右手であご髭を撫で始め暫く黙っていた。


「卯宮殿下は楠木正成を知っていますかな?」

「……えっ?」


オレは突然の質問に答えることができなった。しかし乃木院長閣下は話を続けていった。


「私は楠木正成に憧れていましてなぁ……いつか彼のようになりたい、そう願っておりました。尽忠報国、それが私の全てです」

「…………」

「私はもう年です……ですから大帝陛下への最後のご奉仕をして己の人生に幕を下ろしたいのです。お分かりいただけるか?」

「……迪宮殿下はどうなるのです!?殿下はあなたのことを大変慕っております!あなたが居なくなれば必ず悲しみます!それでいいんですか!?」


なんでそんな顔でそんなことが言えるんだ!?なんで笑顔なんだ!?


「殿下、そんな悲しそうな顔をしないでください。人は生きている限り死ぬのです。遅かれ早かれ死ぬのです。ただそれだけのこと……殿下にもいずれ分かる時が来るでしょう」

「しかし……!」

「大帝陛下や満洲で散った部下たちが待っていますから、早く会いに行きたいのです。行って部下たちに日本が勝ったと伝えたいのです……それに息子にも会いたいので……」


その言葉を聞いてオレは何も言えなくなった。覚悟を決めた者はいかなる言葉も通じないことをはじめて知った。


「そろそろ時間がまずいですよ殿下」


時計を見ると六時前を指していた。乃木は立ち上がり義仁の傍に近づいた。


「校門まで送りましょう」




校門までの道程で二人の間で会話がなされることは無く、義仁はただじっと乃木の背中を見つめ、乃木は何も語らず義仁に歩調を合わせていた。


そして校門にたどり着き義仁は乃木に深々と一礼し帰ろうとしたとき乃木に呼び止められた。


「殿下、一つお願いがございます」

「……何でしょうか?」

「私が去った後の日本と迪宮殿下をお頼み申します」

「……どうしても逝ってしまわれるのですか?」


乃木は無言のまま頷いた。


「………わかりました。この命に懸けてお守りいたします」


その答えを聞いた乃木は笑い言った。


「ありがとうございます……卯宮殿下……これで思い残すことはありません」





有栖川宮邸


学習院から帰ってきた義仁は自分の部屋に籠って、乃木をひたすら考えていた。


「乃木閣下……」


あれが忠臣の最後なのか……?

あれが軍人の最後なのか……?

あれが人の最後なのか……?


「尽忠報国………君主に忠義を尽くし、国に報いる………君主……迪宮殿下……国……大日本帝国……」


乃木閣下はどんな尽くし方をし報い方をしたんだろうか……




義仁が悩んでいる姿をふすまを少し開け見つめている四人がいた。


「義仁様……何か悩んでいるようですね……」

「そうだな……朝はあんなに元気だったのに……」

「一体何に悩んでいるのでしょうか……?」

「あんなに悩んでいる義仁なんて見たことないぞ……」


下からファン、タイン、クオンのベトナム三人衆、その上に義仁の父である威仁がおり、義仁の悩んでいる理由について話し合っていた。


「まず学習院で何かがあったのは間違いないな?」

「朝、すごく元気でしたし……そうだと思います」

「学習院で何か……まさか……!?」


威仁が小さな声で叫び三人の視線が集中する。


「何かわかったんですか!?」

「まさかとは思うが……いじめられたもかも知れない……」

「えぇ~~~!?」


その言葉にファンは驚くがタイン、クオンは何とも言えない顔になった。


「たたた大変です!もし義仁様いじめられていたらお怪我をされているかもしれません!」

「そうだな!すぐに医者を呼ぼう!」

「お二人とも落ち着いてください」

「タインさんなんで冷静なんですか!お怪我をされているかもしれないんですよ!?」

「そうだぞ!私のかわいいかわいい息子が怪我しているかもしれないんだぞ!?」


二人をなだめつつタインが説明した。


「まずあのお姿を見てお怪我をされているように見えますか?」

「……見えないです」

「……見えないな……しかし隠しているのかもしれない」

「次にいじめられたら返り討ちにすると思うのですが……」

「当たり前だ!義仁は強いからな!」

「当たり前です!義仁様は強いんですから!」

「ではいじめではないですね。たとえいじめられても反撃し何かしらの傷を負ったとしても隠さず堂々と帰ってくるはずです」

「「………あっ」」


そんな二人を見てため息をついたタインであった。義仁はそういう性格なのである。あ


「じゃあ何に悩んでいるんだ?」


再び考え込む四人。


「分かりました!」


元気のいい返事をしたファンに三人の視線が集まる。


「きっと恋ですよ!間違いないです!」

「なんだと!?義仁が恋!?一体相手はどんな子なんだ!?」

「お淑やかで綺麗でちょっぴり男勝りででもそこがかわいい素直になれない女の子!」

「やけに具体的だな……」

「そうか!その子が義仁の初恋の相手なんだな!」

「そうですよ!きっとそうです!」

「何をしているんですか?」


その言葉と同時に襖が開き、ちょうど襖を後ろにしていた威仁以外の三人の顔が凍り付いた。


「何って義仁の恋の話をしていたんだ!」

「何で恋の話をしていたんですか?」

「それは義仁が悩んでいたからな!」

「人の部屋の前で何やってるんですか?」

「・・・・・・ん?」

「答えてくださいよ、父上?」


威仁がゆっくり首を後ろに向けると満面の笑みになっている義仁がいた。

手には新聞紙を何重にも組み合わせ丸めた棒が握られていた。

そして両手で握りゆっくりと頭の上まで上げた。


「お、落ち着け義仁!は、話せばわかる!」

「問答無用!」


思いっきり振り下ろした。





「なんであんなに悩んでいたんですか?」

「ちょっとね……」


義仁は威仁を思いっきり叩いた後風に当たるために縁側に来ていたがそこにファンが来て今にいたる。


「……俺はこの国のために何ができるのだろうか……?………迪宮殿下をお守りできるだろうか……?」

「ん~~………義仁様、不安なんですか?」


義仁は黙って頷いた。


「大丈夫ですよ!威仁様や私たちがついています!私たちはずっと義仁様の味方です!義仁様は一人じゃありませんし何かあったら私たちに頼ってください!」


ファイは胸を張りながら言い、それを見た義仁は少し気持ちが楽になるのを感じた。


「ファイ……」

「何ですか?」

「ありがとう」

「どういたしまして!」


そんな二人のやり取りを見ていた威仁は……


「ああいうのは父親の役目だと思うのだが……」

「威仁様、泣かないでください!」

「そうですよ。まだチャンスはありますよ!」


タインとクエンに慰められるのであった。




1912年 大正元年 9月13日


明治天皇大喪が行われたこの日、日本の軍神の一人である乃木希典陸軍大将が妻の静子と共に自刃、殉死した。

乃木の死は、多くの日本国民を悲しませた。

迪宮殿下改め裕仁皇太子殿下も例外でなく涙を浮かべ悲しんだ。


だが多くの人が悲しんでいる中で一人、悲しみの表情すら浮かべないものがいた。


有栖川宮家次期当主


有栖川宮義仁は笑っていた。


笑いながら泣いていた。


「約束はお守りいたしますよ……乃木閣下……この身があり続ける限り帝国を守り、迪宮殿下……いや裕仁殿下をお守りいたしましょう……」


義仁はこの世にもういない乃木にそう誓った。



そのわずか一週間に義仁は転入という形で陸軍幼年学校に入学した。



顔文字って使っていいんですかね?

明日からイベントなのでまた遅れます。すいません!

ご意見ご感想をいっぱいお待ちしております!

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