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幼年学校での日常

大変長らくお待たせしました!本当に申し訳ありませんでした!

楽しんでいただけたら幸いです。ではどうぞ!

 幼年学校の朝は早いがそんなのは慣れた。

 いつものように起床ラッパがなる前に起きて軍服に着替え、洗面台で顔を洗い、歯を磨き、それが終わると中庭へ向かった。


 最近変わったことといえば、皆、起きるのが早くなっており起床ラッパがなったと同時に一斉に部屋を出て中庭に向かう事が多くなった。


 それと父上からの手紙が来て、この前、頼んだことは何とかするそうだ。

 父上にはいろいろ迷惑をかけて申し訳ないと思う……


 中庭に着くと相変わらずオレが一番乗りだったが、その後すぐに三人かの生徒が走り込んで来た。


「おはよう」

「おは…よう…ございます…殿下…!」

「あ…相変わらずの……お速さで…!」

「我々……も…もっと…早く…起きねば…!」

「とりあえず息を整えろ」


 オレがそう言うと三人は息を整えてから、改めて言った。


『おはようございます!殿下!』

「おはよう、玉田、細見、名倉」


 オレから見て、背の高い玉田義和たまだよしかず、玉田より少し背の低い細見真一ほそみしんいち、背が低い名倉秀なぐらしゅうが並んでいた。

 この三人はオレが幼年学校で友人と呼べる数少ない生徒だ。

 他の生徒ととも話はするが何故かオレに媚びているような態度を取っているので友人とは言えないし、言いたくない。

 もちろんこの場には居ないがが友人はまだ居る。


「無理はするなよ?体を壊してしまったら大変だからな」

「心配には及びません殿下!」

「我らは日頃から鍛練を積んでいます!」

「殿下には敵いませんがそれでも頑丈です!」

「そうか……ならよかった」


 三人と話をしている間にも中庭を目指して多くの生徒が走り込んできていた。


 朝礼と点呼が終わると、朝食まで一時間ほどあるのでいつも校庭で多くの生徒が気の合う仲間とたわいもない話しをしている。

 そんな中俺たちも木の日陰で話をしていた。



「しかし、自分はやはり戦車こそが将来の陸軍の主力となるべきだと思います」

「いや、航空機こそが主力となるべきだ!」

「一番大事なのは歩兵だろ?陸軍の主力は歩兵だ!歩兵が居なければ占領できんからな!」


 玉田、細見、名倉が将来の陸軍について話をしていた。

 その隣でオレは、友人と話していた。


「やはり、速い方がいいですよね。装甲はある程度防げる厚さにして、機銃も乗っけて……あとそれから量産できるように簡単な作りにした方がいいし……リベットではなくやっぱり溶接の方がいいですよね?ねえ殿下?」

「そ、そうだな……朝倉……ちゃんと寝てるか?」

「大丈夫ですよ殿下。二時間寝てますから!」

「そ、そっか……無理だけはするなよ……」


 もう一人の友人である朝倉遼吉あさくらりょうきちは、目の下に真っ黒なくまを作っていた。ここ何日もこの状態である。

 原因は、オレが戦車という物を朝倉に教えたせいだ……

 始まりは、初めて兵欺演習で戦車を出した時だった……




『殿下!この戦車という物は、すごいですね!』

『そうだろう。この戦車という兵器が生まれれば戦争は大きく変わる』

『殿下!僕に戦車の事をもっと教えてください!』

『いいぞ。オレも詳しくないが知っていることは教えよう』

『ありがとうございます!』


 それから朝倉からの質問攻めに合い、熱心に質問してくるのでオレ自身も嬉しくなって教えることは教えた。教えてしまったのだ……


一週間後


 朝倉が一枚の画用紙を手に走ってきた。


『殿下ぁぁ!これを見てください!』

『どうした?』

『僕も戦車を考えてみました!』

『どれどれ……!?』


 オレが見た物は……イギリスヴィッカース社が開発した6トン戦車にそっくりな外見をしていた。

 オレが朝倉に教えたのは、イギリスの菱形戦車のマークⅠとフランスのルノーFTの二つだけだったが、全周旋回砲塔であるルノーFTを特に集中して教えた。

 ………しかしまさかここまで似るとは………


『どうでしょうか?いろいろ考えながら書いたのですが……』

『良いと思うぞ?これからも頑張ってくれ』

『はい!』


 嬉しそうにしながら朝倉は走り去っていった。



また一週間後


 また画用紙を持って朝倉が走ってきた。


『見てください!殿下!』

『どれどれ……!?……』

『殿下?どうかしましたか?』

『いや、少し驚いただけだ……』


 画用紙には、チェコスロバキアČKD社が生み出したLT‐38、ドイツ軍名称38(t)戦車そっくりだった。

 びっくりするぐらいそっくりだった。


『どうでしょう殿下!この前より自信があります!』

『そ、そうだな……これはこれで素晴らしいがもっと考え方を変えてみたらどうだ?』

『考え方……わかりました!』


 何かを閃いたのか笑いながら朝倉は走り去って行った。



再び一週間後


 画用紙を手にした朝倉が走ってきた。


『殿下!考え方を変えてみました!』

『どれどれ…………』

『いや~書いていたらつい楽しくなってしまって!』


 オレの目の前にある画用紙には、ソヴィエト連邦が開発し、スターリンが『百貨店』と称した多砲塔戦車、T‐35重戦車が居た。


『考え方を変えて、砲塔をたくさん乗っけてみました!どうでしょう?』

『……いい発想だと思うが……これは量産できるのか?』

『量産ですか…?』

『そうだ、いくら強力な戦車でも量産し数を揃えねばならない、それができなければ兵器としては失格だとオレは思う。戦いは数だ。強力な戦車一両造るよりも、バランスが取れた戦車十両作るほうが用兵側はありがたいと思う』

『なるほど……わかりました!』




 そして現在に至る……

 朝倉は、今まさにオレの目の前で画用紙に戦車を書いている真っ最中だ。

 オレはそれを見ていて何故か泣きたくなってきた。


「ここは……そうだ!斜めにすればいいんだ!斜めにしたら砲弾を弾きやすくなる!じゃあ側面後面も斜めにして……できました殿下!」


 まんまソ連が世界に誇る戦車……T‐34中戦車だった。なんでここまでそっくりに書けるんだ……!?

 まさか……!オレと同じなのか!?


「殿下……?」

「……朝倉なんでこんなに思いつくんだ?」

「それは……聞こえてくるんです!」

「聞こえてくる?」


 オレは思わず聞き返してしまった。


「はいっ!夜遅くまで必死に考えてたらどこからか声が聞こえるんです。最初は頭がおかしくなったと思いましたが、ちゃんと聞いてみたら戦車の事を言っていたのでその声と話をしたんです。そしたら盛り上がりましてその勢いで書いたら出来ていました!」

「………その結果がこの戦車と……?」

「はいっ!」

「………ちゃんと寝ろ」


 オレは朝倉にそう言った。


 おそらく朝倉は戦車の神様に愛されているんだろう………







 朝食を食べ終わると、学科の授業が始まる。

 軍人として必要な知識を得る為の授業の他にも語学や音楽などがあるが、オレにとっては軍事学以外暇な時間となっている。

 暇なのでノートに自分で考えた戦術のイメージや戦車、航空機、艦船を書いたりしている。


 午前は学科だけで終わり昼食を挟んで、午後からは教練が始まる。



 まず最初に校庭を走らされる。

 身体を動かしていると楽しい気分にオレはなるが周りにいる一年生の同輩は辛そうな表情で走っていた。


 気付けばオレだけ上級生の横で一緒に走っていた。


 その後、教官に『走る速さをもう少しゆっくりにしてください。一年生たちが倒れてしまいます』と注意された。どうやら同輩たちはオレに合わせて走ってたらしい……

 今度から注意しなければ……



 走り終わったら次は鉄棒などを使った体操を行う。

 これは班ごとに教官が付き指導を受けることになっているがオレは指導を受けつつ、できていない同輩の手助けをしていた。

 特に朝倉は運動が苦手なのでよく、というか毎日オレが手伝っている。


 その後は、剣道や柔道をやって身体を鍛え上げる。

 が皆オレより弱い。

 そのためこの時間も同輩たちを相手に指導している。

 指導しているが剣道と柔道だけでは白兵戦は不足な部分があるので、前世で調べあげ見よう見真似で覚えた近接格闘術もついでに教えていた。

 なぜかいつの間にか上級生も加わっていたが特に気にしない。オレが教えたことを覚えて戦場で活かせれば教えがいがあると言うものだ。


………教官も加わっていたのは驚いたが。




 教練が終わると晩御飯だ。

 一年生から三年生までが10人程のグループに纏まり食事をとる。

 オレが居る席には、オレ、玉田、細見、名倉、朝倉の一年生五人。二年生の掛田良夫かけだよしお木下茂彦きのしたしげひこの二人。三年生の林一はやしはじめ松浦士之助まつうらしのすけの二人。計九人が座っていた。

 掛田、木下、林、松浦の四人もまたオレが友人と呼べる人たちだ。


「先輩殿は将来の主力はどこに置くべきだと思いますか?自分はやはり戦車が良いかと思います」


 玉田が最初に言うと、続いて細見、名倉の順にそれぞれ航空機、歩兵を主力にすべきという意見を上げた。それを見ていた先輩たちは苦笑いをしたりニヤニヤした。


「三人とも私語を慎め、食事中だぞ」


 三年の林が三人を注意する。教官がさっきからこっちをずっと見ている。

これがもはやお決まりのパターンとなっている。毎日このやり取りをしているため教官も注意しなくなったが三年生であり模範生徒である林が代わりに注意している。

 林に注意され教官がこちらを見ていることに気づいた三人は大人しく口を閉じ食事をとり始めた。

 そんな三人をニヤニヤとした表情で見ている二年の掛田、木下。小さくため息をつく松浦が居た。



 食事が終わると三十分ほどの休憩を挟んだ後、軍歌演習を行う。

 校庭を行進しながら軍歌を唄う。

 ただそれだけだが大声を出しながら行進するため中々体力がいる。




 食後の汗を掻いた後は風呂に入りそこからは自由時間となる。

 気の合う仲間と雑談したり、分からない箇所を一緒に勉強したりと、各自が自由に時間を使っている。

 オレたちも雑談…と言うよりは、討論のような会話をしている。


「玉田は戦車、細見は航空機、名倉は歩兵が主力が良いと思うんだろ?」


 二年の林の言葉に三人は素直に頷く。


「じゃあ、全部主力でいいじゃん」

「それは主力になんないだろ」


 林の言葉に木下がすかさずツッコミを入れる。


「じゃあ……朝倉は何が主力だと良いと思う?」


 林は画用紙に戦車を書いていた朝倉に聞いた。


「ぼ、僕ですか?………戦車を造りたいので戦車が良いと思います」


 いきなり言われて少し驚いてはいたが目を輝かせながら朝倉は『戦車』が良いと言った。


「掛田さんは?」


 次に三年の掛田に林は聞くと、掛田は少し考える様に腕を組んでから答えた。


「ん~……航空機と言うものに乗ってみたいから航空機かな」

「最後に松浦さんはどうです?」


 林が松浦に聞くと、松浦は読んでいた本を栞を挟んでから閉じ、口を開いた。


「航空機が良いとは思うが実物を見ていないから何とも言えないし、まだ開発もされていない物を主力にすべきだとは私は思わない。よって現状は歩兵が主力で十分。戦車と航空機が出てから改めて主力を決めればよいと思う」


松浦の答えを聞いた後、林は頷き言った。


「なるほど、みんなの意見が出そろったな」

「おい、俺はまだ聞かれてないぞ」


一人だけ聞かれていない木下がジト目になりながら林を見ていた。そのことに気が付いた林はすかさず言った。


「いや、お前には聞かなくても分かるよ」

「じゃあ何か当ててみろよ」

「戦車だろ?」

「よくわかったな」

「俺とお前の仲だろ?」

「「えへへへへへへへへへへー!」」


 こんな光景がほぼ毎日繰り広げられているがオレは改めて思った。


「二人は本当に仲が良いな」





「殿下おやすみなさい!」

「良い夢を!」

「また明日お会いしましょう!」

「ああ、また明日」


 自由時間が終わり就寝時間となり、オレは玉田たちに別れの挨拶を済ませた後、自分の部屋に戻る。

 部屋は、一人用で、辞書やら資料などが置いてあり、前世の記憶を忘れないように出来事を書き記したメモやノートもある。完全にオレだけの空間になっている。

 一人用の部屋にしてもらったのも、この事を周りに知られない為で父上も納得してくれた。


 やる事は実家に居た時と差ほど変わらない。変わった事と言えば手紙を書く量が増えたぐらいだ。

 まず父上には、やってほしい事や学校生活の事を書く。次に母上に学校生活や友人の事を書く。さらにファン、タイン、クオンの三人宛の手紙を書く。内容は母上の物とほとんど同じだ。

 最後に迪宮殿下へ宛てた手紙を書く。内容は学校生活や友人の事だが、迪宮殿下に分かりやすくその場面を思い浮かべていただけるように出来るだけ事細かく書くように心がけている。


「ふぅ……流石に毎日書くのは疲れるな…………昨日も言ったな、これ」


 チラリと時計を見ると午前一時を回っていた。起床ラッパがなるのは午前六時なので、いつもラッパが鳴る三十分前に起きるようにしている。


「………寝るか」


 呟くように言うと着ている制服をハンガーに掛け寝間着に着替えた。

 そしてベットに入って瞼を閉じた。









これが彼、有栖川宮義仁の日常であり陸軍幼年学校の日常である。










ご意見ご批判ご感想などお待ちしております。

本当に長らくお待たせしてしまい申し訳ありませんでした。

大学やらハーメルンの方などが忙しかったので遅れてしまいました。申し訳ありません。

出来るだけ早く投稿していくつもりですが、また遅くなったりしてしまうかもしれません。

それでも首を長くして待っていただけるなら幸いです。

これからもよろしくお願い致します。


ブックマークが200件を超えて涙が出ました……本当に皆さまありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 肝心な事がきになりました 歩兵と士官のライフルはやはり三八と九九になるのでしょうか? 銃器は精密にしたのが日本軍で雑に扱っても壊れないタフさを求めたのがアメリカだとミニタリー雑誌にのって…
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