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小覇王と平和への道のり  作者: 名瀬 ナオト
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いざ、一人旅へ

やっと更新できた。

常々思う。自分はこのままで良いのか?

将来の王となる兄を補佐するため、そのために必要な知識を学び、鍛錬し、成長していく。

確かに知識は必要だ。鍛錬も必要だ。そのために専門知識を持った家庭教師の下で学び、ヴィリスティア国内にいる魔物退治等で実戦経験もしている。

しかし、それでは不十分ではないか。

もっとこう、効率のいい方法があるはずだ。例えば、そう、旅とか。

旅はいい。世界各地を巡り、異文化と触れ合う。自分と違う価値観に出会うことで、己の小ささを知り、成長し、新たな可能性だって開けるだろう。

そう、王としての将来が決まっている兄ではなく。第二王子という立場である自分だからこそできることだ。今自分に必要なのは、帝王学を学ぶことや魔物退治ではなく旅だ。



「というのが俺の考えだが……」


「だめに決まっているでしょう。何を考えているんですかあなたは」


剣を振りながら熱弁するヴィンセントに、カインはヴィンセントの剣撃をいなしつつ呆れ口調で否定する。


両者とも15歳となり、背も伸びて顔つきも大人っぽくなった。均衡の取れた筋肉、肩に届かないくらいの鮮やかな金髪。鋭い眼光が男らしさを表している。王宮内のメイド達に人気である。

一方、カインもヴィンセントと同じ165センチと長身で、ヴィンセントとは違い顔にやや幼さが残る。その童顔と優しげな目つきが保護欲を誘う。

ヴィンセントは王子としての己の立場を理解し始め、勉強も真面目にするになった。

14歳になって王から国内に限り冒険を許されて以来、たまに勉強をサボっては一人危険な場所に行こうとする。しかし、それが結果的に民の役に立っているだけに強く叱ることはできない。


「別にお前に許可なんぞ求めちゃいない。危険を承知で言ってる。それに剣の腕ならグラムも認めてる」


グラムはヴィリスティア王国一番の武人であり、国防大臣でもある。そのグラムが認めているということは、ヴィンセントは相当な剣の使い手だという証明である


「危険を承知なら尚更行くべきではないでしょう。貴方は自分のお立場を理解していますか?」


いかに相当な使い手であろうと、死なないわけではない。実戦において重要な事は不測の事態に対しどれだけ冷静に対処出来るかという事。

己の実力に慢心して不意を突かれ死亡。なんてことが当然ある。


「理解してなきゃクソ真面目に勉強なんぞするか。この旅は目的の為には絶対必要な事だ。何としてでも行く」


「え?何ですその目的って」


思わずカインは聞き返す。ヴィンセントの夢は旅に出ることのはずだ。しかしそれは手段であり、夢がほかにあるというのは始めて聞いた。


「反対するだろうし説教もされるだろうから言わない。そうだな……ヒントをやろう。俺は今の現状に満足などしていない。少なくとも、兄上の補佐等で終わるつもりはない」


「はあ?」


「さて、鍛錬はこれでおしまいな。俺父上に呼び出されてるから。お前の相手はレティが務めるさ」


ヒントになってない。それだけではわかるはずもない。もっと聞き出そうとする前に、ヴィンセントは強引に話を切って王宮内へ消えた。


追いかけようとしたカインの前に立ち塞がったのは、ニコリと笑うレティシアと兵士達で作られた死屍累々の山だった。










ところ変わって王宮の応談話室。


ヴィンセントは扉をノックして部屋に入る。


「何か御用ですか?」


談話室の豪華に装飾されたソファに座る王に、ヴィンセントは立ったまま話しかけた。


「まあ座れ。これは手短にすむ話ではない」


まるでとっとと話を済ませて帰ると言いたげな姿勢に苦笑しながら、着席を促す。


「………それで、話とは?」


「お前の旅の話だ」


ため息をつきながら座って話を切り出すヴィンセントにヴィルスは真剣な顔で答えた。


「お前が旅に出ることを許可する」


ヴィルスの意外とあっさりした許可に、ヴィンセントは目を丸くした。


「どうした?ここは喜ぶところではないのか?」


「………父上は、私の旅には反対なのでは?」


今まで…………具体的にはヴィンセントが旅に出たいと言った時から、ヴィルスは首を縦には振らなかった。理由も告げずに「だめだ」の一言であった。


「反対などした覚えはないぞ。あの時許可しなかったのは、まだその時ではなかったからだ」


「今が、その時だと?」


「うむ。お前の将来には国の外に出て旅をすることは必要だ。そしてお前が旅に出るに当たって制約もある」


「その制約とは?」


将来という単語に疑問を抱きつつ、制約という名の条件を聞く。


ヴィルスは右手を上げて人差し指を立てる。


「一つ、旅に連れて行っていいのはカインのみ。二つ、その間、お前からヴィリスティア国第二王子の位を剥奪する。三つ、旅に必要な資金は自分で稼ぐこと。私は一切の援助をするつもりはない。四つ、旅に持っていく物は私が許可したものでなければならん、それ以外のものを持っていくことは許さん」


ヴィルスは制約を言うごとに指を立てる。


「そして五つ、これが守れん限りは許可はせん。五つめは、旅する期間は二年、その間このヴィリスティアの土を踏むことは許さん。もし二年以内の帰還は王位破棄を意味する」


ヴィリスティアの土を踏むことは許さん。それはつまり、旅に出るならば途中で諦めようなどと半端な気持ちで旅に出るなということ。

一度国を出てしまえば、二年間自分ひとりの力で生きていくしかない。


ヴィルスの出した制約に、ヴィンセントは不敵な笑みを浮かべた。


「上等じゃないですか。俺だって半端な気持ちで旅したいなんて言ってません。1つを覗いて、その条件を飲みましょう」


「一つを除いてとは?」


「カインは連れて行きません。俺は自分一人の力で生きていく」


ヴィンセントの力強い言葉に、ヴィルスは満足な笑みを浮かべた。


「かわまんが、カインの説得は自分でするんだ。あ奴の事だ。私が言ったところでカインは勝手に付いていくだろうしな。では、出発は三日後だ。その間国法を犯さない程度の方法で金を稼ぎなさい。ああ、それと一つ聞かせてくれ」


「なんでしょう」


「ヴィンス、お前はなぜ旅がしたい? 遠からずお前は旅に出すつもりではあったが、お前から旅がしたいといわれるとは思っていなかったのでな。少し気になった」


ヴィルスの問いに、ヴィンセントは真剣な顔で答えた。


「俺には、何もない。今の俺は、貴方から与えられたものばかりです。俺は、自分の力で欲しいものを手に入れたい。貴方の命で付き従う部下ではなく、自分の事を慕ってくれる、信頼に足る仲間を得たい。そしていつかは・・・いや、まぁとりあえず、そのためには旅に出るのが一番いい。そう思っただけですよ。たぶん宮廷にいる文官達も、俺が王位を剥奪されたって分かりゃ手のひら返すんじゃないですかね」


ククッと笑い、さっさとヴィンセントは部屋を出ていった





二日後


ヴィンセントの私室にて、机を挟んでカインとヴィンセントは睨みあっていた。


「ボクも連れていけ」


「断る。これは俺の一人旅だ。お前を連れてったら一人旅じゃなくなるだろうが」


旅の許可話の最中、カインは西方の村の救援要請を受けて首都を出ていた。

魔物退治を終えたカインの耳に入ってきたのはヴィンセントの旅話。急遽国王のもとへ行き、説明を受けてヴィンセントの部屋へ飛び込んだ。


そして今に至る。


「キミ一人じゃ危ないって言ってるんだ。キミが連れていかなくても、勝手についていくぞ」


真剣かつ若干怒り気味のカインに、頭を掻いてタメ息一つつき降参といった表情を浮かべる。


「わかったわかった。降参だ。連れていこう。時間は明日の8時、場所は北門だ」


「準備してくる」



翌日北門に来たカインに門番が一枚の紙を渡した。


連れてかねぇよ。ちなみに俺がこの国を出たのは六時半だ、足取りは掴めないようにしてあるから追っては来れんぞ。じゃ、留守番頼んだ。



「あんのボケがあああぁぁぁああっ!!」


カイン・リスタルト15歳 王国中に響きわたる魂のシャウトだった

たぶん修正します。

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