外の世界へ
850年、大陸クリセントを代表する2国が大陸の覇権を巡って争った歴史的な大戦争『東西戦争』
これは、その戦争にて西軍を率いて闘った若き王の物語。
クリセント歴825年、ヴィリスティア王国。
ヴィリスティア王城内。
豪華に装飾された廊下を歩く二人の男性が話しながら歩く。
「ふむ、今のところ順調だな」
「はい、今のところ民に不満はない模様です」
「うむ、民は国の合わせ鏡の様なものだからな……ん?なにやら騒がしいな」
会話中の男が城内の騒ぎに気付く。
視線の先には慌ただしく走り回る兵隊たち。
「ああ、またか」
その騒ぎの原因に心当たりがあるのか、男はため息をついて苦笑いする。
場所は変わって城下町。
石造りの街が並び、大通りには住民や旅人で賑わっている。武器屋から服屋、八百屋から雑貨屋までが並び、連日人が絶えることはない。その人ゴミを縫うように走る少年が二人、器用に人と人の間をスルスルとすり抜けている。背後数メートルにはその少年達を追いかける鎧の兵士たち。
「すまん、どいてくれ! 王子!お待ちください!」
「待つかよ!しろでべんきょうするくらいなら街をたんけんするほうがマシだぜ!追いつけるもんなら追いついてみな!」
兵士たちは少年たちと違って人波をかき分けるように追っているので距離が縮まるどころか離される一方である。必死に人波をかき分けつつ少年に叫ぶも、王子と呼ばれた金髪の少年はスルスルと人波を抜けていく。
「ああもう!ていうかカイト様!あんたこっち側(追いかける側)の人間でしょう!?なんで一緒に逃げてるんですか!?」
「すいません!!」
何がすいませんなんだ。何に対してすいませんなんだ。
振り向きもせず走る茶髪の少年カイトに、兵士たちは心で突っ込んだ。
かれこれ10分はこの追逃劇を続けている。店の主人たちは「またやってるよと温かい目で見るだけで協力は見込めない。そして、10分に渡る追逃劇は少年たちを見失った事で終了した。
見失った兵士たちは、ゼイゼイ言いながら捕えられなかった事に悔しがりながら、トボトボと王城へ帰って行った。
「クックック、上手くまけたな」
その様子を建物の屋根から覗き見ていた金髪の少年ヴィンセントは、悪どく笑う。
「もうやめようよヴィンス、後でおこられるのボクなんだよ?」
アベルは困った顔でヴィンセントに言う
「バッカ、雨の日ならまだしもこんないい天気に部屋ん中でべんきょうなんか出来るかよ」
「雨の日だっておしろの中でこのえの人達から逃げ回ってるじゃないか。まったくなんでおうさまもしからないんだろう」
そう、本来王族に生まれた者であれば、将来王となる為に勉強するのが一般的だ。しかし、ヴィリスティア王はヴィンスのサボり叱る事はしなかった。
「みーつけた」
言い合う二人の耳に入る声。
一瞬ビクリとする二人だが、声の主を見てホッとする。
屋根から顔を出したのはフリルのついた水色のドレスを着た少女。
二人の妹とであるレティシアだった。
ヴぃリスティア王国第一王女でありヴィンセントの妹。いつも勉強ばかりで構ってくれない長兄ヴィードと違い、よく城下町に連れ出してくれるヴィンセントによくなついている。血こそつながっていないもののいつもヴィンスと一緒にいるカイトにとっては妹同然の存在である。
「よくおれたちを見つけ出したな。偉いぞレティ」
頭を撫でるヴィンスの手に気持ち良さそうに目を細めるレティシア。さながら猫のようである。
「よし、レティもごうりゅうしたことだし、あそこ行こうぜ」
城下町の外れにある丘、国外を見渡せる高い丘。追手を撒いた二人は決まってここに行く。か
「ふああ」
ヴィンスは何をするでもなく、ただただ丘から見える景色を目を輝かせながら見る。
「なあアベル、ワクワクしないか? このおうこくの先には、俺たちが見た事のないせかいが広がってるんだぜ?」
「うん。でもかべのそとがわは危ないから出ちゃダメだって、おうさまやとうさま達に言われてるじゃないか」
「ああ、その言いつけだけはやぶらねぇよ。けど、いつか行ってみてぇな。この壁外には何があるんだろうな。きっとおれたちが見たこともねぇもんがいっぱいあるんだ。いつか……冒険してみてぇな」
「うん、その時は僕も行くよ。一緒に冒険しようよ」
「ああ、約束だ」
二人は、夕焼けの空の下指きりをした。
「ずるい、レティも一緒に冒険したい!」
「ダーメ、これはおとこのロマンだ。レティはお留守番な」
頬を膨らませて抗議するレティに意地悪そうにヴィンスは言った
初めまして。
ファンタジー系初の投稿となります。
小説を書いた事が無いので稚文で至らぬところもあるかと思いますが、温かく時には冷たい目で見て下さい。
酷評も受け付けます。