3-24 山猫と人食い虎 前編
うわ、うわああああああぁぁぁぁぁ。
なんとも情けない悲鳴が耳に届き、俺は思わず苦笑した。
隣にいるラウも、おなじように笑う。
「おいブルーノ。子ウサギが罠にかかったみてえだぞ」
「そのようだな」相槌をうち、俺は嘆息した。「まったくこの国の冒険者ギルドは、あんな乳臭いガキまで護送に使うのか? 理解しがたいな」
「へへ、初々しくて可愛いもんじゃねえか」
「なんだお前、男色の気でもあったのか?」
「よせやい」
いつもの調子で軽口を叩く。だが、緊張を緩ませたりはしなかった。
俺たちは、岩場の反対側に潜んでた。
もっとくわしく言えば、反対側にある斜面を登り、その先に広がる緩やかな下り斜面の中腹に身を潜めていた。ここなら、街道から発見される心配はない。
周囲にはラウのほかに、5名の部下がいた。
残り14名は、セリオスとペドロがいる岩場に配置されている。
作戦はこうだ。
まず荷馬車をカーブ手前まで引きつけ、岩場の連中が矢を浴びせる。
荷馬車の足が止まったところで、俺たちの出番。斜面の頂上からダイナマイトを括りつけた矢を放ち、馬車の側面を破壊。そのまま急襲し、ダイナマイトで作った穴から中身を頂戴する、という寸法だ。
失敗するのは目に見えているが、そもそも部隊の全滅が目的なので問題はなかった。
昨晩の会話を思い出す。
俺たちがセリオスに頼まれた『本当の仕事』。それは――――ここにいる部下5名の殺害だった。そしてセリオスの合図と共に、ダイナマイトの矢を、馬車ではなく岩場に向けて撃ちこむ。2,3発で始末できるように、あらかじめ『人員をカーブに集中させている』。部下たちは何も分からぬまま、吹き飛ばされることになるだろう。全滅を確認後に撤収し、一気に国外に脱出。
もちろん騒ぎに気付いた街道警邏が俺たちを追ってくるだろう。
しかし、この場所はちょうど国道と地方道の境目ちかくにあるため、国道側に逃げれば、この領地の街道警邏隊は、一度、国道警備の人間に引継ぎをしないといけない。その間に国外へと逃げれば良い。この国が設けているルールの面倒な所をうまくつける場所でもあるのだ。
それともう一つ。
岩場に人員を多く配置しているのには、もう一つ理由がある。俺に心変わりを起こさせないための脅しだ。もし不穏な行動をとれば、ブラッディ・アイを暴発させて、部下ごと自爆するぞ。だから無駄なことは考えるな。口では言わなかったが、恐らくそういう事だろう。昨日、ブラッディ・アイの現物を俺たちに拝ませたのは、この可能性を仄めかすための物でもあったのだ。どこまでも用心深い男だ。
言われたとおりにやれば、たぶん上手くいくだろう。
だが奴には悪いが、作戦を実行するつもりなど俺には無かった。こんな寝覚めの悪い仕事、いくら金を積まれても願い下げだ。俺は納得するフリだけして、『別のプラン』を練っていた。
すでにプランは出来ている。
あと必要なのはタイミングだけだ。
「にしてもよー、さっきの音。ありゃあ一体何だったんだ?」
ラウが怪訝そうに首をかしげる。
「さあな」俺は短く答えた。
「テメエらは何かわかるか?」
尋ねられた5人の部下は、顔を見合わせ、一様に肩をすくめて見せた。
つい先ほどまで、異様な破裂音が鳴り続けていた。それは祭りのときに鳴らされる爆竹に似ていたが、しかしそれよりももっと強烈で、空恐ろしい物だった。その音があってからというもの、小鳥たちは怯え、一声も鳴かなくなった。息を潜めるような静けさが、辺りに漂っていた。
ラウが余計な事を言ったせいで、部下たちの顔に不安が滲みはじめる。
これから大事なときだというのに、まったく。
「どうせ威嚇用の魔法か何かだろう。無い頭であれこれ考えている暇があったら、弓の点検でもしていろガキ共」
訓練の時の口調で言ってやると、部下たちはホッと安堵し、平静を取り戻した。
俺は、余計な事をするな、とラウを一瞥。
するとラウはニッと笑い、鼻をほじりやがった。この野郎は……。
こめかみをピリつかせながらも、俺は気を取り直し、意識を街道へと向けた。
反響する音の断片から、大体の状況はつかめている。いま街道では、予定外のこう着状態が展開しているところだった。きっとセリオスは、あの鉄面皮の下で、歯軋りをしていることだろう。
そこでふと、俺は気付いた。
(……もしやこれはチャンスじゃないのか?)
足元の草葉へと視線をおとし、黙考する。やがて俺は顔を上げた。
「よし、作戦を前倒しするぞ」
その場にいる全員が俺を見て、そして決意を秘めた目で頷いた。
ここでいう作戦とは、別プランのことだ。
部下がダイナマイトを斜面の頂上で爆発させる。
その騒ぎに乗じて、俺が弓で『弟ペドロを狙撃』する。ペドロは戦闘に参加せず、岩場の奥に隠れている。その位置を、上から見下ろせるポイントがあるのだ。距離25m。高台からの狙撃だから、まず外しはしない。
即死しないように横腹を射抜く。すぐ傍にいるセリオスが、もがき苦しむ弟を見て、果たして正常でいられるか見ものだ。そこをラウが仕留める。ラウの脚力ならば、頂上からセリオスのいる場所まで、一気に飛び移る事が出来る。
それで終わり。
ブラッディ・アイの暴発など絶対にさせやしない。
あとは死に物狂いで抜け道までひた走る。何人生き残れるかはわからないが、このまま全滅よりはマシだろう。
逃げ切った後のことは何も考えていない。
5人の部下は、ボスになってくれ、一生付いていく、と口々に勝手な事を言っていた。ラウがそれを訊いて面白そうだと笑っていやがった。……まぁ、たしかに、そういうのも面白いかもな。だが今はそれを考えるときじゃない。全ては生き延びてからだ。
「では、始める」
その言葉を合図に、全員が動き出した。
2人の部下が頂上へと向かおうとした――――その時だった。
俺の目が、紅蓮の稲妻を見た。
それは赤と黒の残光を帯びながら、凄まじい速度で2人の間を駆け抜けると、一度跳躍し、俺たちの眼前に着地した。視界の奥で、2人の部下が血を吹きあげながら倒れた。
すぐ傍でドサッと音がする。甲冑ごと切断された部下の腕だった。
「リュッカ・フランソワーズ……」
俺は苦々しく、その名を口にした。
漆黒の甲冑。
紅蓮のロングスカート。
風にたなびく豪奢な金髪。
闘神ヘラクレスの称号を持ち、戦場に死をばらまく鬼の一族。
その娘が、悠然とそこに立っていた。
(なぜこいつがここに下からは見えないはずだ馬車を離れるなどありえない)
思考が現実に追いつかない。
リュッカは剣を振り、刀身についた血糊を払うと、ギロリとこちらを睨みつけた。その瞬間、たった170cmの、活けられた一輪の花を思わせる細身が、まるで見上げるほどの存在であるかのように錯覚した。
目の前から覆いかぶさってくるような、とてつもない殺気に当てられ、体が竦み上がる。息すらできない。傍らにいる3人の部下も、同様に凍りついていた。一人はガチガチと歯を鳴らし、一人は膝を笑わせ、一人は失禁していた。
その美しくも凶悪な存在が、ゆらりと体を動かす。
だが俺は、つぎに自分が何をすれば良いのか、とっさに思いつかなかった。
「ボッとすんなブルーノ! 来るぞ!!」
爆ぜるようなラウの声。
その声が耳朶をうった瞬間、「っ!?」俺は催眠がとけたかのようにハッと覚醒し、あわててリュッカから距離をとった。
リュッカが「ダンッ」と地を蹴り、飛ぶように間合いをつめる。狙われた部下の一人は、何もできないまま、脳天から股まで一直線に切り裂かれた。二人目は、胸を横一文字に斬られ、急流に巻き込まれたように体を回転させた。凶刃は板金を切り裂き、その奥にある胸骨と心臓をバッサリと断ち切った。即死だ。リュッカの前には、安物の甲冑など何の役にもたたない。恐るべき切れ味だ。
俺はほぞを噛んだ。
最悪だ。最悪の状況になった。もうプランもへったくれもない。生き延びるには、この化け物と戦うほかない。
リュッカが猛然と、生き残った最後の部下へと接近する。
その時、
「悪く思うなよ」
部下の背後にまわりこんだラウが、突然、その背中を蹴り飛ばした。つんのめるように宙を泳ぐ部下と、不意をつかれたリュッカが、正面からぶつかりそうになる。リュッカは寸前のところで横へと回避し、その動きにあわせて剣を振るった。ひゅっ、と音が鳴り、部下の首が飛ぶ。分離された首が、ながい血の尾をひいて空を舞った。
剣を振ったことで、リュッカに僅かな隙が生じる。
そこを狙ってラウが仕掛けた。
右の鉤爪がうなり、リュッカの首を刈り取ろうとする。
リュッカは上体を屈めるようにして刃を避けた。「シッ!」ラウは間髪入れず、低い位置に来たリュッカの顔目掛けて、ヒザ蹴りを放つ。リュッカはこれも最小の動きだけで躱した。ラウのヒザが空を切る。
ラウは足先で地を蹴り、大きくバックステップした。
刹那、両者の間合いが広がる。
弓の射線が確保できた瞬間、すかさず俺は矢を射かけた。
阿吽の呼吸。ラウのステップワークを熟知している俺だからこそできた一射だった。
近距離。絶好のタイミング。普通なら絶対に外さない。弦を離した指にも確かな手応えがあった。しかしリュッカは、あらかじめ矢がどこを通るのかが分かっているかのように、するりと避けやがった。あれを避けやがったのだ!
くそったれ化け物が。
矢も、刃も、ヒザも、まったく当たらない。かすりもしない。
まるで人の形をした陽炎を相手にしているような気分だった。
ここでリュッカが反撃に転じた。
リュッカは鋭いステップで、ラウとの間合いを一気に詰める。
そして右手の剣――――ではなく、驚くことに左の拳を突き出してきた。
下から抉るような左ジャブだ。気付いたラウは、すばやく篭手に包まれた右腕をあげて、ジャブをブロックした。金属と金属がぶつかりあい、ガギィンッと音が鳴る。刹那、ラウのガードが横にひらいた。「っ!?」ラウの顔が強張る。いまの一撃の重さに驚いている、という表情だった。
さらにリュッカは、足を跳ねあげ、上段蹴りを繰りだした。ラウは両腕でガード。その、分厚い筋肉と分厚い板金でできた壁を、リュッカの蹴りが、いともたやすく撃ちぬいた。
ラウは衝撃を受け止める事ができず、体勢を横に崩す。
「シッ!」
体勢を崩しながらも、ラウは下段蹴りを返した。リュッカはこれを、片足をあげて脛当てでブロック。脛と脛がぶつかる。腿に食らえば大腿骨ごとへし折ってしまうようなラウの蹴り。それを真正面から受けたというのに、リュッカは、まるで地中に埋まった杭のように微動だにしなかった。
「……」
俺は我が目を疑った。
あの間合いは、ラウの一番得意とする距離だ。そして剣士にとっては不得意な距離のはずだ。なのになぜ、こうも押されているんだ。力が強いというだけでは説明がつかない。
リュッカは剣を逆手に握ると、水平に薙いだ。
モーションがひどく大振りだったため、ラウは難なくバックステップでこれを避けることができた。――――だがリュッカの動きは、そこで終わりではなかった。
リュッカはさらに上体をひねり、同時に、斜め前方に跳躍。空中でコマのように旋回しながら、左足を横に振りぬいた。飛び後ろ回し蹴りだ。風を巻きこむような凄まじい速度。さっきの雑な斬撃は、蹴りに勢いをつけるための予備動作だったのだ。
ラウは一瞬、ガードの素振りをみせた。
しかし即座にやめ、上体を反らして避けることを選択した。
その判断は正しかった。
「ドヒュッ」という、バリスタが放たれた時と同じ音がした。
完璧に避けたはずなのに、ラウの右頬が深く裂け、ピンク色の肉が覗いた。傷口から血がぷっくりと盛り上がり、下へと垂れる。血に濡れたラウの顔に、ハッキリと焦燥が浮かんだ。遠目でも、今のがどれだけヤバい一撃だったか伝わってきた。もしあの大技を腕で受けていれば、ただでは済まなかっただろう。
(……そういうことか、くそったれめ)
ようやく分かった。
リュッカは剣士ではなく、ラウと同じ『拳闘士』だ。おまけに技術も、力も、ラウより数段上ときている。どうりでラウが接近戦で優位に立てないわけだ。
その後――。
ラウの鉤爪が何本も弧を描くが、しかしリュッカを捉えることは出来なかった。反対に、リュッカの突きや蹴りは、的確にラウを捉えた。見る見るうちにラウの甲冑や皮膚に傷が増えていく。なんとか致命的な一撃こそ免れているが、それだけだ。反撃する余地がまるでない。
リュッカは未だに左拳しか使わない。もしこれが両手だったら、いまごろラウは確実に沈められていたことだろう。しかしその片手というハンデがあっても、押し切られるのは時間の問題だ。
ラウが距離をとろうとする。だがリュッカは、食らいついた蛇のように間合いを維持し、それを許さない。これでは援護のしようがない。くそっ。
(当たっても恨むなよ、ラウ)
俺は誤射を覚悟して、リュッカに向かって弓を引こうとした。
しかし、それは叶わなかった。
矢を番えようとした瞬間、腕にドンッと殴られたような衝撃が走った。リュッカが電光石火でナイフを投じたのだ。ナイフは鎖鎧を貫き、左腕に深々と突き刺さった。「ぐがぁ」焼け付くような劇痛に襲われ、苦悶を吐きだす。ナイフを中心にして、痛みが電流のようにひろがり、腕の感覚がなくなる。おそらく、もうこの腕は使えない。
このままナイフを抜くとダメだ。俺はショルダーガード(肩当て)のベルトを限界まで締め、そしてナイフと皮膚の境目に回復薬をふりかけた。傷口と刃がぴたりと癒着する。これで出血は軽くなった。だが、それだけだ。事態は何も好転していない。
と、その時。
俺の目がある物をとらえた。
それは、さきほど切断された部下の腕だった。
眼球の裏で、ひとつの閃きが浮かんだ。
「がはっ」
ラウの短い呻き。
ひらいた口から、無理やり押し出された空気の塊が、血とともに吐き出される。
見ればリュッカのボディブローが、深々と突き刺さっていた。板金がくぼみ、リュッカの拳がめり込んでいる。とうとうラウの足が止まる。そこへリュッカは、ボディーの連打を見舞った。嵐のような連打。ガギャンッ、バギャンッと、打撃音と金属音が入りまじった壮絶な音が轟く。
ラウの甲冑に、蜘蛛の巣のような亀裂が生じはじめる。
「ぐるぁあ!」ラウが殴られながらも左ストレートを打つ。しかし、リュッカは攻撃中であっても冷静さを損なわず、的確にブロック。そしてブロックの動きから肘打ちに繋げる。肘がめりこむ。亀裂が広がる。
「シッ」
リュッカは鋭く呼気を吐き、トドメの一撃を放つべく「溜め」をつくった。
一瞬の空白。
やるなら今だ。
俺は狂ったように怒号を発した。
「覚悟しろよリュッカアアア!」
リュッカが声に反応し、チラリとこちらを見た。
その美しい顔が、「っ!」ここへ来てはじめて、感情の揺れを起こした。リュッカの碧眼に、一本のダイナマイトが映し出されていた。
部下の千切れた腕が握っていたものだ。
俺は火のついたダイナマイトを、2人の足元に投げつけた。筒状の爆発物が、細かな火の粉を散らしながら地面をバウンドする。ラウと俺の目が、一瞬だけ交差した。
リュッカが慌てて後退しようとする。
ラウはそれを阻止するように鉤爪を振るった。
下に気を取られ、リュッカのガードが甘くなる。ラウの鉤爪が、ここへきてついに、ついにリュッカの甲冑――篭手の境目――を捉えた。「うおおおお!」ラウが猛々しく咆えながら、全力で腕を引く。俺の長耳が、ザクッという皮膚を引き裂く音をひろった。歪曲した刃のさきに、リュッカの鮮血が付着している。
手傷を負わせ、ラウが息を吹き返した。
「うらあ!」
ラウの中段蹴り。横から来る丸太のような足を、リュッカは脛を上げて防いだ。だが軸が不安定で、衝撃を殺しきれずにグラつく。明らかにリュッカの防御から生彩がかけている。さしもの化け物も、至近距離のダイナマイトは恐ろしいと見えた。
導火線が燃え尽きるまで、あとわずか。
「一緒に死のうぜ、姉ちゃんよお!」
ラウが血を吐きながら獰猛に笑い、肘打ちを繰りだす。リュッカは左腕でガードし、そのままバックステップしようとする。そこへラウの、上から振り下ろされる鉤爪と――――極限まで気配を殺し、背後から忍び寄った俺が、挟み撃ちを仕掛けた。ナイフを腰だめに構える。狙いはリュッカの後ろ腰。甲冑の隙間。その奥にある脊椎と腹大動脈だ。
あと2歩踏み込めば、刃先が届く。
殺った。
俺の体に、強い確信が満ちた。
だが次の瞬間、俺たちの間にはさまっていたリュッカが、竜巻のような旋回をみせた。
轟っと空気が嘶いたかと思った瞬間、リュッカの剣が、ラウの鉤爪をまっぷたつに叩き折った。折れた鉤爪が宙を舞う。同時に、旋回するリュッカの体から足が突きだされ、強烈な横蹴りとなって、俺の胸部にメリ込んだ。
「ッッ!!??」
すさまじい衝撃が、胸から背中へと突き抜ける。鋼鉄の胸甲板が、薄氷のように割れ、その下にある大胸筋を潰し、胸骨をヘシ折った。体内からパキパキと乾いた音がひびく。俺の体が、馬と激突したかのように後方へ吹っ飛んだ。
受身すら取れず、地面に何度もぶつかる。ぐあぁぁ。俺は草に顔をうずめたまま痛苦の呻きをあげた。腕の痛みを上回る激痛に、神経が焼ききれそうになる。
「ぜひゅーっ、ぜひゅーっ」いくら息を吸い込んでも息苦しさが抜けない。おまけに胸を膨らませるたびに、焼けた釘を打ち込まれたような痛みが走った。
ガギャアアンッ!
ひときわ甲高い金属音が鼓膜に刺さる。
何事かと顔を上げると――――ラウの横腹に、黒い蛇が巻きついていた。
蛇は、リュッカの足だった。
リュッカの中段蹴りを脇腹に食らい、ラウが横ざまに吹き飛ばされた。蹴りの衝撃によってラウの甲冑が耐え切れなくなり、細かな金属片となって、バラバラと周囲に飛び散った。
ドンッ、と地面が鳴る。
導火線の上に、リュッカが投じたナイフが突き立った。




