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人は窮地に立たされると、その本性を現すという。
『ぶっ殺してやる』
狼に襲われ、死にかけたあの時。
僕は、ちゃんと理解していた。
このあと自分が食い殺されるということを。
実際、銃を生み出すことができなかったら、今ごろ狼の腹で消化されてケツからひり出されていただろう。
それぐらい、ちゃんと分かっていた。
しかし、そんな窮地に立たされてなお、僕の心は挫けなかった。
自分の死を悟ってもなお、臆することなく、相手を睨みつけた。
命乞いなどではなく。
道連れにしてやることだけを考えていた。
僕は。
自分の本性というものを垣間見た気がした。