3-00 順応
環境によって人は変わる。
誰が言い始めたのかは知らないけど、確かにその通りだと思う。
僕はこの世界に来て、大きく変わった。
まず見た目が変わった。
日々の鍛錬で、平たかった腹筋は6つに割れ、肩は溝ができるほど厚みが出てきた。体から柔らな部分が削げ落ち、顔の輪郭は鋭さを増した。
鏡に映る自分は、日を追うごとに過去の自分を塗り替えようとしている。その変化の速度に、多少の戸惑いすら覚えるほどだ。
そしてなにより。
中身も変わった。
右手にグッと力をこめる。
M4A1のグリップの固さや、左腕にかかる銃身の重さが心地良い。体に装着しているマガジンたちは、使われるその時を、息を殺してジッと待っている。それに対して、僕の獰猛な部分は、血の匂いを嗅いでからというもの興奮しっぱなしだ。
「……」
うっすらと瞼を開ける。
すぐ目の前で、爆風によって巻き上げられた枯葉たちが、まるで紙吹雪のように舞い散っていた。
新緑の景色に、揺らめく山吹色のアクセントが加わって、とても美しい。 いまからここに血化粧を施すつもりだ。するともっと綺麗になるだろうね。僕は殺し合いをしているのに、そこに美を求めている。
きらりと光る「何か」を期待している。
誇りが満たされるその瞬間を待ち望んでいる。
異常な思考なのかもしれない。
でもこれが今の僕なんだ。
この世界で変化し、順応した、新しい僕なんだ。
僕はこの世界で英雄になるつもりはない。無条件で誰かを救えるほど、僕の銃は万能じゃないから。
――でも。
仲間を傷つけられて黙っているほど、いまの僕はおとなしくない。
見て見ぬ振りなどできるものか。
やられた分は、きっちりとやり返させてもらう。
目には目を。
悪には悪を
それが僕の武士道だ。
衝撃波で歪んでいた世界の輪郭が元に戻る。
聴覚も問題ない。
膝に力を込めて、立ち上がる。
殺意が口を開き、長い牙をぞろりと覗かせる。解放されるこの瞬間を、身を震わせながら喜んでいるかのようだ。僕は凶悪な微笑を浮かべながら、銃床を右肩に押しあて、射撃の準備態勢をとった。
アドレナリンが背中を押す。
一歩目を踏み出す。
普通だった僕は。
殺し合いへと身を投じる。




