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僕にはヒーローがいる。
拝一刀。
『無頼の狼』という時代劇の主人公だ。
初めて彼を知ったのは幼稚園の頃。
アニメの放送がない日、地元ローカルテレビで無頼の狼が再放送していたのを偶然見て、幼いながら拝一刀に惚れてしまった。
みんなが5レンジャーとかライダーの真似をしているなか、僕は彼の真似をしていた。
丸めた新聞紙を刀に、木を相手に水鴎流波切りの太刀の練習をしていた。
武士の口調も真似した。
でも時間がたつにつれ、僕は彼のように強い侍にはなれないと悟ってしまった。
いくら稽古しても腕は太くならず、足も遅く、体力も無い。
武士の命である刀は、銃刀法違反で携帯するだけで逮捕される。
小学校では男子の長髪は禁じられているので、ちょんまげもできない。
僕は侍になれない。
ないないづくしに慣れていくうち、いつのまにか、武士の姿を見るだけで満足するようになっていた。
その代わりに、僕は新たなものに熱中するようになっていた。
FPSゲームだ。
銃をつかって相手を倒し、ルールに従ってスコアを競う。僕はその電子の世界で、満たされない『何か』を、ランキングを更新することで慰めていた。
――銃。
いつのまにか僕のなかで銃と言う存在は、拝一刀と並ぶぐらい憧れの物になっていた。
そしてどちらも、手が届かないもの。
僕が本当に欲しいものは、いつもこうだ。
でも僕は、この異世界で銃を手に入れることが出来た。
ということは。
もしかしたら、もうひとつも手に入れられるかもしれない……。
※1「子○れ狼」を「無頼の狼」と変更しました。
※2登場人物名もいずれ変更します。