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2-01 百鬼夜行
この世には、法を笑う者たちがいる。
そいつらは自分の欲望を満たすためならば、ありとあらゆる悪事に手を染める。
人を殺すことに何の痛痒も見せない。
傷つける事を楽しんでさえいる。
女を犯し、子を殺す。
それはもはや人ではない。
獣だ。
もしお前が、そういった連中に怒り、自らの手で裁きを下したいと願うなら。
自分が人であるという事を、しばし忘れろ。
獣に人の道理は通用しない。
お前が獣の道理に従うのだ。
獣を裁けるのは、いつだって獣だけだ。
その事を忘れるな。
闇に潜み、男の後を追いながら。
僕は以前見た映画の冒頭シーンを思い出していた。
それはまさに、今の僕にぴったりの言葉だった。
まったく熱を発しない怒りが、胸の中で渦を巻く。
手に、冷たくなった皮膚の感触が残っている。
二の腕に残るのは、脱力した人間の重み。
灰色の狼が僕を急かす。
月が見ている。
僕は今夜、人を殺す。
※前半部分の映画は架空のものです。
台詞も自作のものになります。




