幕間03
(意外にやるじゃない)
落雷のような轟音。その残響が、洞窟内に染み込んでいく。
私のすぐ傍で、羽根をもがれ首が捻じ曲がったハーピーが、一度大きく背骨を逸らし、そして絶命した。それを見て私の口端に笑みが浮かんだ。
強引に連れ出してきて正解だった。あれが、アイツの本性か。
見たこともないタイプの『土魔法』。
音は派手。威力は地味。でも狙いはすごく正確。
まるでエルフの矢を想起させる魔法だ。
おまけに私の位置をきっちり計算して撃っている。
あと何よアイツ、しっかり魔法障壁使えてんじゃない。形はダッサいけど。ハーピーと衝突しかけたあの時、投げナイフで迎撃するつもりだったけど、それより先に自分から障壁を展開させていた。おまけに自分でとっとと処理しちゃったし。
これじゃあ、引きつけて戦う必要なんてなかったじゃない。
魔法もある。障壁もある。そしてなにより――度胸がある。
あのバカ、丸腰のまま臆することなく吼えやがった。
そしてあっという間に場の主導権を掌握した。
腹が立つけど、おもしろい。
おもしろいわアイツ。
再び破裂音が耳朶を打つ。
中空にいたハーピーの右足が吹き飛ぶ。足が千切れた衝撃で滞空を維持できなくなったハーピーは、川を流れる枯葉のようにクルクル回転しながら落ちる。私は地を這うように高速で接近、胴目掛けて、水平に剣を薙いだ。
ザクッ! という束ねた紙を裁断したような小気味良い音。
刃が触れた瞬間、肉が上下に捲れ、肋骨を分断、内臓を切り裂く。
剣を振りぬいてからワンテンポ遅れて血しぶきが爆発したように飛び散る。
羽毛の切断面が焦げ、細い煙がいくつか上がった。
それを他のハーピー達が見て、どっちを先に攻撃していいか右往左往している。
完全にハーピー達は混乱をきたしている。チャンスだ。それを作ったのは腹立たしいけどあそこにいる弱小魔法使いだ。
とにかくまずは、私をからかったクソ鳥どもに礼をしてやらないと。
笑みを強め、地を蹴って空中へと飛び上がる。
私の動きを予想して旋回しようとするハーピーに、拾っておいた小石を投げつける。右腹部に命中。動きが鈍る。その首を撥ねる。
無重力を全身で感じながら私は思う。
(にしても、これってなんか癪だわ)
なによこれ。
これじゃまるで、アイツが作った舞台に私が踊らされてるみたいじゃない。
音もなく着地。膝を曲げ、つま先に力をこめる。
こうなったらアイツに取られる前に全部殺してやる。笑みがより濃くなる。
壁を走って一気に終わらせるか。
新たな目標に向けて動こうとした次の瞬間、その目標である2匹のハーピーが血を撒いて、空中で絶命した。私は慌てた。
ちょ、ちょっと待ちなさいよ!
なに勝手に横取りしてんのよ!
ギッと睨みつける。その一瞬で、またハーピーが討ち取られる。
私は慌てつつも次の目標を探す。
一番近いヤツは――。
視線を向ける――。
しかしまた、先を越される。
汚い羽が飛び散り、声も上げないままハーピーが死亡。
皮膚を震わせるような音の間隔が、短くなっていく。
あのバカの仕留める速度がどんどん速くなっているのだ。
そして気付けば、
「……」
私の獲物は一匹も居なくなっていた。
唇に浮いた笑みが萎む。そして『別種』の笑みが浮き上がった。
せっかく。せっかく楽しくなってきたっていうのに……。
なんて。
なんて空気の読めないバカなのかしら。
度し難いにもほどがあるわ。
柄を握っていた右手がプルプルと震えだす。
これはすこし――お仕置きが必要ね。




