幕間02
「あんのバカ魔法使いぃぃ」
ぎりぎりと歯軋りをしつつ。
私は荒い足取りで、夜の街を歩き回っていた。
気がついたらあのバカどっか行きやがったのだ。行き先も告げずに。
信っじらんない! この私が用事があるって言ったのに!
お腹がいっぱいになった瞬間、すっぽり忘れたのよきっと。
ホント、どうしようもないバカ犬ね。
こんなことなら、首にヒモでも繋いでおけばよかったわ。それもグイッと引っ張ったら電流が走るヤツで。ヒモを引いた瞬間、尻尾を踏まれた猫みたいに飛び上がるアイツを想像したら「プッ」おもわず吹いてしまった。
それいいケッサク最高だわ。
そういうのってどこで売ってるのかしら。アイツ見つけたら無理やりハメてやる。
泣いたって許してやらないんだから。私を置き去りにした罪を電流で償わせてやる。
憤っているはずなのに、顔がニヤけだす。
腹立たしさと陽気さが混在した、不思議な心情を抱く。
ってか、なんなのかしらコレ。私はいま怒っているの? それとも?
不可解な感情に首を捻る。
うまく言葉にできないが、とにかくアイツを苛めたくてムズムズしてくる。
そういえば家に居た時、ママ以外で、本気で口ゲンカなんてしたことあったかしら。たぶんない。2,3ほどの言葉のやり取りをすれば向こうが自然と折れるのが常だった。もしかしたら生まれて初めての経験かもしれない。
思い出すとムカムカしてくるけれど、その、ちょっとだけ、ちょっとだけ――
あーもー、何なのよコレ、気持ち悪いっ!
思考を追いやるように私は首を振った。
とにかく今は、あのバカよ。
アイツを見つけないことには話にならない。
まったくどこ行ったのかしら――って、ちょっと待ってよ。
ハッとして足を止める。
なんで私が、あんなボウフラをわざわざ探してあげなきゃいけないのよ。
逆でしょ。アイツが私を探さなきゃいけないんでしょ。
やめよ、やめ。バッカみたい。
足の方向を180度反転させる。
身をひるがえした事で、私の金髪が、宙を優雅に舞う。すると、たまたま傍を通りかかった若い男たちの目線を奪った。そのことに少しだけ気を良くして、歩き出す。
決めた。
向こうから私を探すまで動いてなんかやらない。
私からゼッタイに探してなんかやらない。
ゼッタイなんだから。
ゼッタイッ!!




