「第06章」
バディーは、いろいろと乗り継ぎ、最終的に列車でシカゴへと着いた。
シカゴ駅の階段を降りようとした時、異様に張り詰めた空気を感じた。
階段を一段一段おりて行くと、ハート柄のスカートを履いた女の子が黒いスーツ姿の男に取り囲まれながら階段を上ってきた。
ちょうど、すれ違うかもしれないというその時だった。
階段の下で、スーツ姿の男が柱から現れると拳銃をこちらに向けて発砲を始めた。
あたりに、大きな音と共に銃声が響き、
女の子を取り囲んでいた男が一人、頭を撃ち抜かれた。
他の男達が銃を取り出して、引き金を弾いた。
その銃弾は、スーツ姿の男の足元に当たった。
スーツの男は、次々と女の子の取り囲んだ男達を撃ち抜くと、女の子に狙いを定めた。
バディーは、とっさに女の子を守るために、飛びついた。
背中に、鈍い痛みが。
その瞬間、意識がとうのいてしまった。
目を覚ますと、高級そうなベッドの上に寝ていた。
「ごきげんよう。気がつかれました?」
声の主を見てみると、駅で見たハート柄のスカートを履いた女の子だった。
バディーはロバート・デニーロ似の綺麗な人だと思った。
女の子は、ニタニタと笑った顔をしたシャシャ猫を撫でながら、話してくれた。
アル・カポネという名前で、この部屋の装飾見てもわかるとおり、お嬢様だそうだ。
駅での事件は、カポネの行なっている仕事に文句のある人が、カポネを潰すためにやったそうだ。
カポネはそれによって仲間が一人、亡くなったことを悲しんだ。
バディーは演奏で儲けようと考えて、シカゴに来たのに物騒なところに来てしまったと思った。
傷の包帯も取れるほど回復したある日、バディーは久しぶりにコルネットをふける場所がないかカポネに聞いて見た。
すると、カポネが近くの葬式場を案内してくれた。
その葬式場は奇妙な作りになっており、壁にかかった絵をずらし、
祭壇の十字架を2回ひねると、壁が動き、その奥が演奏会場という仕組みだった。
カポネに理由と聞いてみると、どうやら国が禁酒法という法律を作ったらしく、お酒を飲むと罰せられるらしい。
バディーは、聞いたことがあるような?
くらいにしか思ってなかったが、この大都市シカゴではお酒は重要だったらしく、
お葬式で心を慰めるために、多くの人が求めたため、こうやってこっそりと飲めるようにしたそうだ。
おかげで、こんな奇妙な作りの部屋がいるようになったらしい。
その話を聞いたバディーは、ココアを飲んでみては?と提案した。
カポネは始めは、不思議そうな顔で考え込んでいたが、何かをひらめくとバディーの手を取って感謝の心を伝えた。




