「第04章」
バディーがコルネットを吹かなくなって、しばらくの事。
バディーはバッハのところで、看病されていた。
さすがに、ココアの飲み過ぎで後一歩遅れていたら、入院するところだったようだ。
しばらくして、順調に回復はしたが、
肝心のコルネットに使うマウスピースのせいで、元気のない日々が続いた。
バッハはカッコーの巣というこの当時奇妙な病院を紹介してくれた。
なんでも、心を直してくれる病院らしい。
バディーはカッコーの巣とバッハの家を往復する生活になった。
そんなある日のこと、気分転換がてら、買い物に出かけてみると、
お店の人から荒稼ぎをしていたキング・ボールデンという青年が、
精神病院に入院したという話を聞いた。
なんでも、街中を「KING」のロゴが入った楽器で演奏し、
あまりにもうまいので、楽器のロゴと名前からキング・ボールデンと呼ばれた人がいたらしい。
ただ、演奏中に奇妙な音の出し過ぎで、精神がおかしくなりそのまま入院したという話だった。
同じ名前の人が、大変な状態にあるんだなとバディーは思った。
その帰り道、楽器を扱っているお店を見つけたので、中に入ることにした。
露天ではない楽器屋に入るのは初めてだったので、バディーは少し緊張してしまった。
トランペットの置いてあるところに行ってみると、たくさんのマウスピースが置かれていた。
その中で、ひときは高価なマウスピースが置かれていた。
「Bach」とかかれた、マウスピースはまさしく、友人のバッハののスペルだった。
バディーは、家に戻るとすぐに金を全部を持って、同じ楽器屋に戻った。
そして、マウスピースを購入すると、家に戻りすぐに吹いた。
あの時の音が、響いた。
いやそれ以上の音がした。
ニューオリンズにバディーの音が戻った瞬間だった。




