「第01章」
バディー・ボールデンという青年について、情報はこれといって知らない。
なので、空想ではあるが、いつも隣にバッハの子孫がいたらどうだろうか?
その考えの上で、話を進めよう。
ニューオリンズという街に、二人の青年がいた。
名前はバディー・ボールデン。
少年は、港町という特徴を生かしながら、港から降りてくる客を演奏で迎えたり、
お店のバックミュージックとして、トロンボーンを演奏していた。
もう一人は、J・S・バッハの子孫である、同い年の青年。
この少年は、家が裕福だったため、家にあるピアノを弾き、暇な時にボールデンと演奏をしていた。
彼ら二人のお気に入りは、南北戦争で流れてくる中古の楽器を売る露店めぐりだった。
バディーはよく、トランペットを手に持って吹く真似をしていた。
家にあったトロンボーンよりも、くねくねと曲がったトランペットが魅力的に見えたからだ。
しかし、バディーにはそう簡単に買える金額ではなかったので、いつも触るだけで終わっていた。
バディーの将来の夢は、音楽で生活することだった。
そのために、バッハの家に時々お邪魔をしては、音の勉強を教えてもらった。
特に、対位法はバディーとバッハがお互いに演奏する時にとても役に立ったため、熱心に勉強をした。
ある日のこと、トランペットを買うお金が集まったのでバディーは、
ブタの貯金箱を開けてお金を袋に詰めると、楽器を売っている露店へ向かった。
仕事が始まる前に、街を歩いていると、十字路の真ん中に、一匹のウサギが二本足で立っていた。
「こんな街中にウサギ?」
そのウサギは、何かを確認したあと、二本足で走り出した。
あまりにも奇妙だったため、バディーは後を追いかけてみた。
追いかけて行くと、人の入れそうな大きな穴のあいた木があり、
ウサギはその中に飛び込んだ。
バディーは、穴の中がどうなっているのか不思議に思い覗き込もうとしたら、
手が滑ってしまいそのまま中におこっちてしまった。
穴の中は、大きな水たまりで足もギリギリ着くかつかないかの、
深さがあった。
バディーは、かすかな光のある方向へ泳ぐと、岸へとあがった。
「この中は、いったいどうなっているんだ?」
バディーは、永遠と続く、明かりを頼りに、先へと進んで行った。
しばらくすると、大きな明かり中に、バッハの本でみたことあるような楽器が、
並べられている部屋に着いた。
しかし、その楽器はどれもこの世の色とは思えない、色をしており、
持ってみるととても軽くまるで動物の骨のような独特の触り心地だった。
「やぁ、バディー。プラスチック楽器の触り心地はどうだい?」
バディーは、声を掛けた方をみてみると、仮面をつけた男が立っていた。
「プラスチックとはなんだい?」
「そうか、この時代はまだその技術は、なかったね」
仮面の男は、真っ白な英語の「J」の形をしたものを手にとった。
鳥のくちばしのような部分を咥えると、今までとは聞いたことのない音が響いた。
バディーは、その音がとても奇妙だったので、何かこの音をかき消すことのできるものはないか探した。
すると、鉄の光沢に赤い色をにじませるトランペットを見つけた。
そして、マウスピースは、ガラスのように透明だった。
バディーは、それを手にすると試しに吹いてみた。
すぐに音が出てきましたが、ボタンの押し方が分からず、いろいろと音が出てきてしまい、
思うようにいかない。
それもそのはず、トランペットは、トロンボーンのように管の部分を動かすのではなく、
吹く力とボタンの押す場所によって音が変わる楽器だからだ。
バディーは、頭でわかってはいたが、どの吹く力でどのボタンを押せばいいのかわからず、
頭の中で思いつくまま奏でていた。
しかしそれが、仮面の男が出している音と、息があったかのように、綺麗なメロディになった。
その音を聞くと仮面の男は吹くのをやめた。
「さすが、バディー。JAZZのキングであるだけはあるね」
仮面の男は、バディーのポケットに手を突っ込み袋を取り出すと、
5つの銅貨を引き抜いた。
「バディー。君にそのトランペットをこのお金と交換であげるよ」
仮面の男は、そう言うとバディーの前からたくさん並んでいた楽器と一緒に消えていた。
バディーの手の中のトランペットと、楽器が入るのにちょうど良い大きさの楽器ケースが、
目の前に置かれていた。
バディーは、そのケースにトランペットを入れると、出口を探すことにした。
気がつくと、バディーはウサギのあった十字路に立っていた。
あの現象は一体なんだったんだろうか?
バディーは、手に持っていた楽器ケースを不思議に思いながら、家に帰った。




