「第09章」
ヘンダーソン楽団についたバディーは、驚くべき光景を目にした。
楽団の中に、ガマガエルがいたのだ。
名前は、ルイ・アームストロングといった。
ルイは、バディーと同じくコルネット演奏者で同じニューオリンズ出身だった。
ほかにも、コールマン・ホーキンスという人の持っている楽器はとても奇妙な形をしていた。
まるで、ウサギを追いかけて出会った仮面の男が持っていた、あのJの形をした楽器のようだった。
その楽器は、サクスフォンという楽器で愛称をサックスと呼ばれていた。
18世紀の終わり頃に出来た楽器だったため、ニューオリンズで見たことないのはそのためだ。
ヘンダーソン楽団の楽譜は、デュークが書いていた、たくさんの楽譜の書き方だった。
これでは、また楽譜嫌いが再発すると思いバディーは、モートンに教えてもらったジャスに使うコードについて説明した。
楽団の人達は、達人ぞろいですぐに覚えることができた。
しかし、演奏するにはしばし練習が必要だった。
そんな中、一人だけ始めから知っていたかのように演奏する人物がいた。
ガマガエルもとい、ルイだった。
ルイは、とても変わっていて演奏中に突然大きな音を出し始めると、
楽譜にはない変わった演奏をするのだ。
おかげで、周りの演奏者が演奏をやめたり、その音に合わせて演奏するというのが、
ヘンダーソン楽団での決まりみたいになっていた。
バディーは、昔の自分のようだなと思った。
バディーは、初心に帰ってルイのマネをして、お互いに変わった演奏を交互に繰り返した。
次第にそれは、ソロと呼ばれるようになり、周りの演奏者もお互いに空気を読み合うかのように、
交代でソロをするようになった。
ヘンダーソン楽団に入って、バディーに一つ悩みのタネができた。
それは、ルイがべったりとついて回ることだ。
どうやら、師匠のジョー・オリバーと同じ感じ匂いがするそうだ。
ある時、クタクタで寝てしまったルイを、背負って家に帰るハメになった。
自分の2倍はあるルイの体格は運ぶのが大変で、バディーは次の日ダウンしてしまった。
流石にこれでは身が持たないということで、ヘンダーソン楽団を辞めることにした。
カポネもちょうど、シカゴに帰るらしくバディーはシカゴに戻ることにした。
シカゴに戻ってしばらくたったある日。
カポネの仕事が一気に減ってしまった。
「世界恐慌」の始まりだったのだが、
この時代そのようなことが起こると予想できた人はいなかった。
「世界恐慌」について、簡単な説明をしよう。
それを説明するには、第一次世界大戦と言うものを知らないといけない。
簡単に話すと民族同士のケンカを発端に、仲間を集めて喧嘩をしあい、そこに毒ガスやら飛行機やらを使って泥沼化したものが第一次世界大戦である。
この戦争のおかげで、多くの国が財産と土地の資源を減らした。
しかし、開拓中のアメリカはまだ財産も資源も、そして食糧もたくさんあり、それを戦争している国に売ることで巨額の利益を得ていた。
ところが、戦争が終わってしまうと、当然のようにアメリカの資源や食料などの頼らなくても良い時代になった。
アメリカでは、そんなことが起こるとは考えず、大量生産をしていたので、ものであふれ、在庫の山とかした。
その結果、生産者は作ることを禁止されたり、ものを安く買い取られ、生活ができなくなり、アメリカ経済がおかしくなり始めた。
そうなると、世の中で一番お金に敏感な人達が、お金を自分の懐に貯めるようになった。
その中で目をつけられたのが、株っだった。
お金に敏感な人達は、ここぞって株を売りさばき、会社はそのお金を株を買った人達に渡すため、お金が消えていった。
お金がなくなると、倒産するしかない。
この状態が、世界中のあらゆる場所で、足を引っ張り、「世界恐慌」になった。
しかし、バディーにとって、何も問題になることではなかった。
演奏する場所もあり、バディーにはカポネという強い見方がついていたからだ。
そんなバディーにも、一つの恐怖がやってきた。
それは、ルイが、シカゴにやって来たことだった。