■序:決戦、魔王軍対勇者の軍勢Ⅲ:その世界の名は〝ソルスター〟
その世界は〝ソルスター〟と呼ばれた。太陽の女神を母とし、星の男神を父として、その交わりから生み出された世界だ。
そのソルスターにおいて、はるか太古、光と魔法による神の祝福を受けて生み出された大地があった。それが偉大なる大地アストラルである。
そのアストラル大陸の南東部領域を〝セプタリア〟と呼ぶ。そここそが、人間種族をはじめとする様々な知性種族が生まれ息づいた命の輝きに溢れた大地だ。そこに光国ルミナリアをはじめとする8つの国が勃興し、発展し、時には争い合っていた。
ルミナリア、グレインリーフ、モントクラウド、アクアリス、ヴァルハイト、ガルガンダイン、エーテルノヴァ、ネルガル――、それらがセプタリアに興った主だった国々となる。
だが、北西より脅威は襲い来る。
闇の世界、冥府の世界と通じた異境があった。世に〝ノクティル〟と呼ばれる領域――、魔の世界の影響を色濃く受けており、太陽の光も力の及ばない闇と魔力に支配された大地だ。そこに生まれた種族こそが忌まわしき命〝魔族〟である。
光に溢れ、人間が繁栄を極めるセプタリア――
闇に支配され、魔族が権力を握るノクティル――
この2つの領域を隔てる険峻なる山塊こそが〝シャドウクレスト山脈〟だ。これこそが、魔族が光の大地セプタリアに侵攻の魔の手を伸ばすための障害にして橋頭堡となっていた。数多くの砦や魔城や暗黒都市が築かれ、魔王とその支配下にあった魔将軍たちの活動拠点であった。
そして、数千年より前のはるか太古、魔族と人間との間で〝戦い〟が始まった。
幾度も、幾度も、様々な〝魔王〟が現れ、軍団を率いて、諸々の種族を脅かした。だが、魔の力に抗い立ち向かう者たちは必ず現れる。過酷な運命に抗い、光と命ある世界を守ろうと立ちあがる者たち、それを世に〝勇者〟と呼ぶ。
魔王が世界を脅かし、幾人もの勇者が現れ、魔王を討ち、つかの間の平和を取り戻す――
生命力と魔力に勝り1000年をゆうに超える長い寿命を持つ魔族と、寿命は100年足らずだが気高き心を持ち、互いに力を分かち合い、助け合うことを忘れない人間種族との間で一進一退の戦いが続いてきた。
絶対的な力こそが存在理由である魔族に対して、知恵を持ちお互いを助け合うことを是とする人間たちは決して相入れることはなかった。戦いは数千年の長きにわたって繰り返されてきた。
それこそが永々と重ねられてきた現実であり世界の理だった。世界はそうして巡っていたのだ。だが――、
今から約300年前、〝最後の覇王〟と呼ばれた魔王ヴァルガリアスが出現し状況は大きく変貌、それまでの不変の理が覆った。
それまで魔族は、複数の勢力に分かれ統率が取れることはなかった。魔族の内部でも抗争が日常的に行われ、力による支配の変遷が繰り返されてきた。それがあったからこそ、人間を始めとする様々な知性種族は魔族に抵抗する事ができたのだ。
だが、魔王ヴァルガリアスは違った。
ヴァルガリアスはその圧倒的な力で、対立する魔族勢力諸派を自らの支配下に掌握し、歴史上初めての〝魔族勢力の完全統一〟を果たした。当然、その後の魔族対人間の戦いは激化。大陸全土を巻き込むほどの大戦が勃発する。
戦乱はより拡大し、アストラル大陸全土に拡がり混迷を深めた。幾人もの勇者が立ち、魔王ヴァルガリアス打倒を願い、戦い、そして――倒れていった。大地の上に戦火と死者は溢れ、光明の見えない日々に人々は絶望する。
しかし、救いの日は来たる。勇者カリナ・ウィングスの出現である。
幼くして父母を亡くし、過酷な運命に翻弄されながらも、聖剣を手にしたその日から勇者としての片鱗を現し始めた。過酷な戦いを乗り越え、勇者としての名声を勝ち得ていく。
その彼女の勇者としての素質を語るなら、人々いわく――
――運命の申し子――
――神の恵み――
――これぞ勇者――
――これぞ救世者――
若干16歳の少女のカリナを人々は称賛し、彼女の力になろうと次々に彼女の掲げる旗たる〝聖剣レギオンブレイド〟のもとに集まってくる。
八つの人間種族の国家の軍勢――、十以上の人間以外の種族の勢力――、
果ては、竜の眷属や、巨人種族に至るまで、多くの人々が集まった。
彼らは、一進一退を繰り返しつつも着実に勝利を掴んでゆく。そして、戦いはついに、最終決戦の時を迎える。
まさに〝勇者カリナ・ウィングス〟の名のものとに世界の行く末は決まろうとしていたのである。




