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■12:総攻撃前夜 ―ダークフォージ攻略作戦―

 ルクセンブルク高地を発したソルスター自由連合軍は、夜を徹して進軍を続けた。

 そして、翌日、地平線がまだ暗がりに潜む、早朝前――

 薄暗がりの光景の向こうに、ついにその全貌を視界に収めた。


――ダークフォージ城――


 それは城と呼ぶにはあまりにも異質だった。

 山そのものを削り出したかのような黒き巨塊、幾重にも重なる外壁、地表と一体化した防衛構造、そしてその周囲に展開する無数の支城と外郭拠点。

 まるで大地に根を張る〝要塞都市〟そのものだった。


 さらにその周囲には、濃密な魔力の霧が渦巻いている。

 自然のものではない。明らかに人為的に構築された魔導結界――しかも単一ではない、複合層構造。


 ソフィアが低く呟く。


「厄介ね。最低でも三層の結界か――。外側は感知、内側は遮断、中心部は……歪曲系」


 シルヴィアが続ける。


「魔導干渉領域だ。通常の術式は減衰、もしくは逆流する可能性がある」


 つまり――正面からの魔法戦は通じにくい。だが――

 カリナは一歩前に出る。


「だからこそ、戦力をこちらも分けます」


 その言葉に、各軍の指揮官たちの視線が集まる。


「ダークフォージは、一つの城じゃない。外郭、支城、結界、そして本体……全部で一つの〝戦場〟です」


 地面に描かれた簡易地図。 

 ソフィアが魔力で投影した戦場図を指し示しながら、カリナは続ける。

 

「これまでの戦いで、魔王軍は各砦や要塞を、比較的安易に放棄することがありました」

「確かに――」と、セリアス卿、

「死力を尽くして死守と言うのはあまり聞かないわね」とヘレナ卿、


 彼らの言葉に答えるようにカリナは告げる。

 

「その答えが、巨大な城塞です。この一つの都市と言っていい〝構造体〟そのものが彼ら――魔王軍の拠点として成り立つのです」


 そこにケラブノスが頷く。

 

「いかにも――、魔王ヴァルガリアスと側近たちは、魔王城さえあれば魔王軍は復活可能と息巻いていた」


 ゲオルグも腕を組んで牙を剥く。

 

「厄介だな。姉御」


 カリナは頷いた。だが、それらの疑問への答えも持ち合わせていた。


「その通りです――、ですから正面から全部壊す必要はありません。分断して、削ります!」


 強い声とともにカリナは作戦を提示する。全員に清聴を求めて声を発する。


「第一陣。外郭制圧部隊」


 カリナの声に、複数の将が頷く。


「ルミナリア騎士団、ヴァルハイト正騎士団、ガルガンダイン騎馬騎士団は正面外郭へ。敵の主戦力を引きつけてください」


 セリアスが静かに頷く。

 

「任せろ。正面は、我らが受け持つ」


 アルトゥールとローランも同時に応じる。


「お任せあれ、カリナ殿」

「本城へは戻らせん!」


 カリナは頷いて続ける。


「第二陣。支城・外部拠点制圧」


 続いて視線はモントクラウドのヘレナへと向かう。


「モントクラウド山岳連邦軍、ドワーフ戦闘工作団は要塞破砕へ。グローム戦力はそれに随伴」


 ヘレナが頷き、アルブレヒトが腕を組み、ブルータスが低く唸る。


「心得た」とヘレナ

「完膚なきまで壊してみせよう」とアルブレヒト、

「壁は、壊すものだぜ」とブルータス。


 まさに曲者揃いである。


「続いて、第三陣。環境制圧」


 カリナは次にエルフたちから声を賭けた。


「アクアリス、エルフ部族連合、グラスランナーは地形と視界の掌握を。敵の動線を断ってください」


 偉丈夫のオーシアが静かに微笑む。


「案ずるな。戦場はもうこちらのものだ」


 エルフのヴェネラがオーシアに語りかける。


「ご教授、よろしくお願い致します。オーシア卿」

「うむ」


 水と緑に縁のある者たちが個々に集った。

 

「第四陣。遊撃・攪乱」


 次にカリナは野生の力に満ちた者たちへと視線を向けた。


「獣人軍、ケンタウロス、ゴブリン、トロール、巨人種族は各戦線に分散配置。突破口を広げてください」


 アーンスランドが低く応じる。


「獣の部隊を抜かり無く展開しよう」


 ヴェロスも弓を手ににやりと笑う。


「狩りの時間だ」


 彼らの背後でトロールや巨人種族も存在感を放っていた。


 そして――

 カリナは、わずかに間を置いて、最重要部隊を命じる。


「本城突入部隊」


 空気が変わる。


「アルカナヴァンガード全軍、牙狼騎士団、リザードマン戦闘兵団」


 ゲオルグとケラブノスが、同時に一歩前へ出る。


「私たちは、ダークフォージ本体に突入する」


 その一言で、この戦いの〝核〟が定まる。

 

「牙の騎士団、勤めを果たすぜ」とゲオルグ、

「鱗の眷属の力、惜しみなく尽くそう」とケラブノス


 まさに両雄並び立つである。そして、残るはドラゴンの役割だ。


「そして――空」


 カリナは空を見上げる。そこには、巨大な影があった。


「マルセウス様。制空と領域制圧、任せてもよろしいですか?」


 竜は笑うように息を吐く。


「問うまでもない。空は、我らの領域だ」

「お願い致します。竜の眷属の未来のためにも」


 マルセウスは頷くのだった。

 そのとき、エーテルノヴァのシルヴィアが口を開く。


「カリナ卿、一つ、厄介な情報がある」


 場の空気が引き締まる。


「ダークフォージ内部には、〝大魔道士ヴァルター・ダークハート〟がいる」


 その名に、数名の表情が変わる。


「存じております。魔王の右腕。魔導戦術の中枢です」


 カリナのはんのうから、彼らが今までどれだけ、ヴァルターに煮え湯を飲まさたがわかろうと言う物だ。

 シルヴィアはさらに続ける。


「その彼が生み出した兵種。〝死賜隊シグナモルス〟を知っているか?」


 ソフィアが眉をひそめる。

 

「聞いたことがある。魔族の改造体、よね」

「そうだ。個体性能は極めて高い。だが――」


 シルヴィアはカリナを見る。


「そもそもが〝生物〟としてのバランスの悪さが何処かにある。その〝歪み〟を見つけることが鍵になるであろう」


 カリナは、静かに頷く。


「ならば問題ありません。これまでの戦いの技の研鑽を信じて立ち向かうのみです」


 その一言に、迷いはなかった。


「すべて、突破します!」

「頼もしいな。それでこそ〝勇者〟だ」


 シルヴィアも頷いたのだった。

 そして、締めとばかりにカリナは全軍を見渡した。八つの国、十の種族――それらが揃って、先陣を切ろうとしている。カリナは今こそ万感の思いを込めて彼らに告げた。

 

「皆さん――」


 場が一瞬、静寂に包まれる。


「これで最後の戦いです。まさに、泣いても笑っても――」


 カリナも畏れを確かに抱いていた。だが、だからこそ、傲岸不遜に〝笑った〟

 

「もう、あとは有りません! この一戦にすべてを出し尽くすのみです!」


 左手で腰脇の聖剣レギオンブレイドの柄を握る。早朝の敵陣近く故にカリナは静かに、しかし、確かに告げた。


「ここで終わらせます。全軍――作戦開始準備してください。日の出とともに魔王城攻略戦を開始します」


 全員が無言で頷き、速やかに持ち場に向かう。

 今こそ、終幕は上がったのである。


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