陽キャ拗らせる陰キャを走らせる
真樹は気にしすぎよ、おしとやかの中に狂喜が見えかくれする(私の妄想だけど)A子が苛つかせる(私を)可愛い笑顔で私をたしなめてくる。
少しも私の心は潤わないのだ。
私は陰キャそのものを具現化したような陰キャである。押し付けがましい(自負)陰キャというと言葉を私はもう、十万回以上呟いていた。
そこに陽キャなあゆみが割り込んできた。陽キャの割り込み方は華麗でしなやかで、割り込むというひねくれた私の自認を全否定してくれる。
しかし私は律儀に"割り込むのかい"と、一応心の中で突っ込んで、私は陰キャキャラを更に孤高に推し進めるのだ──
そう、もう私はこの時点で陽キャのあゆみに完膚なきまでに敗北しているのだ。
只登場しただけのあゆみに………
仕方ない、陰キャにおいて陽キャはそれだけで絶対的太陽なのだから、私の曇天すら照らすその力の前に、デコを擦り付けながらジャンピング土下座する私を自分で褒めて鼓舞するのが精一杯の慰めはもうデフォである。
真樹の横顔って黄金比よね、
私の目玉は十ミリ飛び出して見えた。
そして、
「黄金比よね…黄金比よね…」陰心の連峰にこだまする。
陽キャの破壊的な一言で私は赤面の海に、生まれたての赤子のように投げ出される。陽キャは軽々と私が幾重にも用意した絶対に破れない(幻想)安物の壁(陳腐なプライド)を(易々)ぶっ壊してくる。それは強くて可愛い。
私はその一言で、作ったこともないような、ひきつった微笑(負笑=陰)を作ることで穴という穴から蒸気が「ボフン」と沸き出す。
そして溺れる私に、「照れちゃってわかいい」と止めを差してくる。私はそこで即死する(完全にフリーズ)
そして、荒らすだけ荒らして、一軍が集まる神々の輪に戻っていかれた。
お洒落が一つもない湿った蛍光が注ぐ、風呂場で、黄金比の横顔を気持ちの悪い笑みを浮かべた陰キャがベストアングルでポーズを決めている(確かにこの角度だけは紛れもなく陽キャなのだ)
陰キャという課せられたものでもない、しかし捨てられない鎧を身に纏い、私は満足して、もう冷めた生温い湯船に浸かる。
そして水面に鼻までつけて陽キャを演じブクブクと鼻息で可愛い子ぶってみる。
「お風呂を沸かします」
狭い地味な風呂場に澄んだきれいな声が響く。
おわり




