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魔法が常識の世界で魔法が使えない超能力者  作者: どるき


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漫画家は見た③

 山口の前に出たマツリにとって、山口の存在は邪魔の一言。

 まあ、最下層を目指している彼女からすれば、シンやコノヤも一様に足手まといに過ぎないが。

 下がれと言われた山口は金縛りが解けたかのように後退りをするが、一目散には逃げずにマツリの背を見る。

 まだ記憶魔法による録画は継続中だったのもあってか、助けられて早々に助けてくれた人間がどのように戦うのかに注目していた。


(まあいいか。邪魔しないようだし)


 マツリとしては弱い人間が半端に介入するほうが邪魔なので、見ているだけなら構わないと、山口のことを捨て置く。

 そしてそのまま、どのようにしてゴーレムを倒そうかと悩むように、指鉄砲を作ってゴーレムに狙いをつけた。


(このまま指先から魔法を出すのか?どんな攻撃が飛び出すんだろう)


 その動きに意味を結びつけた山口は羨望の目でマツリを見る。

 一方で特に意味があっての行動ではないマツリだが、何の気なしにここから攻撃に移行した。

 指先に意識を集中し、集約したオーラがエネルギー球を作り出す。

 そのまま指先で球状を保ちつつ乱回転するそれは、当たれば相手を抉るほど。

 思い浮かべるのは古い漫画に出てくる攻撃技。

 父親が持っていた漫画の主人公をイメージしてマツリは先手を取らんとした。


BONGバン!」


 口で唱えた発砲音に合わせて射出されたエネルギー弾は見た目よりも高密度。

 思念の力をビー玉サイズにまで凝縮したソレはゴーレムに着弾すると、表層のブルーサファイアに穴を開ける。

 そのまま貫通することなく、ダイアモンドの層に当たると勢いが止まるのだが、これもマツリの狙い通り。

 ゴーレムはマツリの攻撃など蚊ほども効かないと言っているかのように迎撃してくるのだが、マツリは素早い身のこなしで躱しながら第2、第3の弾丸を撃ち込んでいく。

 穿たれた傷跡が北斗七星のような傷跡をつけた時点で下拵えは充分。

 仕上げとばかりに撃ち込まずに「BANG」と唱えるのに合わせて、ゴーレムの内部に留まっていた思念が一斉に炸裂した。


「やった」


 このとき既にシンとコノヤはこの場にいない。

 ただ危機感も薄いままにマツリの背中を記録していた山口はこの攻撃に感嘆し、称賛の言葉を漏らした。

 この炸裂でゴーレムを構成していたブルーサファイア等の鉱石が剥がれ落ちるわけだが、頑強なダイアモンドの骨組みだけは残る。

 土煙を立てながら「やったか」なんて言えば「やれていない」のがお約束。

 勝手にマツリに期待していた山口は「この人でも倒せないとか、ウソだろう」と、勝手に絶望してしまう。


「そう思うのならさっさと逃げればよかったのに」


 とでも、マツリが彼のリアクションを知れば言っただろう。

 実際には魚を3枚におろしてから、次は骨ぎしを処理するようなものなので、完全破壊出来ていなくとも次の攻撃をするだけだ。

 装甲が剥がれ落ちたということは次の攻撃はダメージがよく通る。

 マツリは露出した骨を折ればこのモンスターは片付くことを理解しているので淡々と左拳を担ぎ上げる。


「グルオオオッl」


 対するゴーレムもネイキッドとなりさらに身軽になった右腕を振り下ろし、マツリは担いだ拳に連動する思念の巨腕━━━テレキネシスを操り、ゴーレムの腕と交差させた。

 いわゆるクロスカウンター。

 相手の腕をカタパルトのように滑らせることで加速した思念はゴーレムの顎を捕らえて、そのまま首を吹き飛ばした。

 首と胴を断たれたゴーレムは概念的な破壊により自然治癒することはない。

 もしシンとコノヤが残っていれば、血眼になって回収していそうな素材の山に対して、マツリは生活費の足しにと小さな破片だけをリュックに入れて、周りのことなど気にもとめずに先へ急いで行った。


「これが……一流の探索者の戦い……」


 さきほどまで称賛していたシンたちなどカスとでも言いそうな勢いでマツリに見とれた山口は、彼女に惚れてしまったのだろう。

 そのまま帰宅し、運よくモンスターにも遭遇しなかった彼は、持ち逃げ状態となってしまった魔石を元手に漫画に執筆を開始した。

 いちおうはシンたちから魔石を返すように言われても良いように、最初こそ使わずにいたが、結局来なかったので自分のものにしたというほうが正確か。

 こうして書き上げた彼の漫画は残念ながら世間で芽吹くことなく、SNSにひっそりと投稿されて少数が読むだけにとどまった。

 それゆえにマツリや彼女を知る人間の目には入らなかったわけだが、いくら彼女を参考にしたとは言え、男に差し替えられていれば自分がモデルだと気づく余地は無い。

 あの日の戦いを記録しているのは山口だけ。

 彼にとって無も知らぬ女性探索者は一種の偶像となって、彼の創作意欲を支え続けた。

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