第7話:炉の試運転がいきなり救急現場に!?
「お願いです、来てください! 爺さまが……!」
駆け込んできた女性の叫びで、静かな朝が切り裂かれた。
「――タカ、調薬炉の試運転は中止。実戦よ!」
エレナの瞳に、かつて王都で恐れられた「天才」の光が宿る。
俺たちは完成したばかりの炉をフル稼働させた。
【検索:気管支拡張・即効性抽出モード】
【YouTube知識:蒸留加速のための内圧制御】
「ラウル、火を絶やすな! 煙道のシャッターを15度開けろ。
エレナ、薬草を投入しろ。
この炉なら、王都の最高級コンロの3倍の速さで成分を抽出できるぞ!」
俺の指示に従い、ラウルとエレナが動く。
普通なら数時間はかかる煎じ薬が、
みるみるうちに輝く琥珀色へと変化していく。
「信じられない……。温度が1ミリもブレていない。
これなら、成分が壊れずに100%抽出できるわ……!」
エレナが震える手で薬を瓶に詰めた。
老人の元へ駆けつけ、薬を飲ませる。
すると、どうだ。
数分前まで死にかけていた老人が、大きく息を吸い込み、
パッと目を開けたのだ。
「……おお、胸が……温かい。羽が生えたように軽いぞ」
「やった……!」 歓喜に沸く小屋の中。
だが、俺は一人、背筋に走った冷たい感触に気づいていた。
【通知:『奇跡の治療』を検知。村外への情報流出を確認】
【分析:延命薬の基礎データが更新されました――残り0.1%】
(待て……今の治療で、あの禁断の薬に近づいたっていうのか?)
村に戻る俺たちの背後。
森の木陰から、昨日とは違う「冷酷な殺気」が放たれていた。
昨日の「偵察員」ではない。
今度は、**実力行使を担当する「実行部隊」**だ。
「……タカ、気づいた?」 エレナが青ざめた顔で俺の服の裾を掴む。
「あの炉の熱……遠くまで届きすぎたみたい。
この匂い、王都の騎士たちが使う香油の匂いだわ」
俺はエレナの手を握りしめ、闇を見据えた。
「心配するな。奴らが来るなら、来ればいい」
俺は脳内で、次の設計図を展開する。
それは「炉」ではない。
侵入者を一人残らず無力化する、
**村をまるごと包む「防衛迷宮」**の構想だった。
「俺が王都の鼻を、へし折ってやるよ」
空には夕方の焚き火の煙が、ほのかに漂っていた。
人を救う火と、人を縛る火。
同じ炉から生まれながら、その行き先はまったく違う。
俺は、目の前の火を見つめる。
これから先、どんな火を灯すのか。
その選択を、きっと何度も迫られることになるかもしれない。
だが今は、ただひとつ確かに言えることがある。
今日、この火は……人の命を、守った。
そう思うと、胸の奥がジンと熱くなった。
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