第6話 最高精度の調薬炉
「タカ……最高精度の“調薬炉”を作って欲しいんだけど・・」
エレナの願いに、俺の脳内検索が火を噴いた。
【検索:定温維持式・循環煙道炉】
【YouTube知識:古代ローマ式床暖房の応用】
「ただの炉じゃない。
熱をL字の煙道に回して、鍋を『柔らかな熱』で包み込む。
これなら1度単位で温度を固定できるはずだ」
俺が猛スピードで土をこね、石を組み上げていく横で、
エレナがぽつりと呟いた。
「……王都の深部、神聖薬草庫にも、これと似た炉があったわ。
王家が独占する禁忌の秘薬――『延命薬』を煮るためだけの炉が」
「延命薬……」 作業する俺の手が止まる。
「偶然、見てしまったの。師匠がその薬を精製する瞬間を。
……それ以来よ。王都の『掃除屋』に命を狙われ、追放されたのは」
エレナの肩が小さく震える。
その時、俺の視界に真っ赤なアラートが走った。
【警告:高エネルギーの視線を検知】
【対象:森の境界線――距離300メートル】
(……チッ、もう嗅ぎつけられたか!)
俺はわざと明るい声を出した。
「エレナ、そんな顔すんな。王都の炉がなんだ。
俺が今から作るのは、それを越える『世界一の炉』だぞ」
俺はわざと大きな音を立てて土を叩き、炉を完成させた。
「見てろ、火入れだ」
吸気口を調整すると、吸い込まれた空気が
「キィィィィィン……」と高い音を立てて循環を始める。
完璧な燃焼。煙道を通った熱が、魔法のように一定の温度を保ち始めた。
「……信じられない。
王都の最高級設備でも、こんなに静かに熱が回ることはなかったわ……!」
エレナの瞳に希望の光が戻る。
だがその直後、森の奥で「パキッ」と枝の折れる音がした。
ラウルが斧を握り直し、鋭い視線を闇に向ける。
「……タカ、誰かいるぞ」
俺は腰袋から巻尺を引き抜き、金属音を響かせた。
「ああ、知ってる。……ネズミが紛れ込んだらしいな」
視界の端には、逃げ去る人影の輪郭が強調されていた。
【追跡対象:王都・隠密偵察員と推定】
【ステータス:本国へ報告に向かっています】
「エレナ、この炉で最高の薬を作れ。
……この村は『建築』で守り抜いてやる」
俺は闇を見据えて不敵に笑った。
スローライフの終わり。ここからは、王都との知恵比べだ。
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2026年1月
イラスト付け加えてみました。




