第5話 特製・薬草乾燥棚と王都の影
翌朝、俺はラウルと共に
「特製・薬草乾燥棚」の製作に取り掛かっていた。
「格子の間隔はこれでいいか?」 ラウルが切り出してきた材を並べる。
「いや、あと数ミリ詰めてくれ。
YouTubeの……いや、俺の知識によれば、この間隔が一番効率よく
『上昇気流』を生むんだ」
俺は巻尺をシャカシャカと走らせ、
目にも止まらぬ速さで印をつけていく。
ただ干すだけじゃない。棚自体を「天然の乾燥機」にする設計だ。
そこへ、朝露に濡れた薬草を抱えたエレナがやってきた。
「……これを干すわ。柳皮と、森の花。花を下に、茎を上に吊るして」
「わかってる。香気を逃さないための逆さ吊りだろ?」
俺が即座に答えると、エレナは意外そうに目を丸くした。
「……どうしてそれを? 薬師の基礎だけど、素人が知っているはずないのに」
「言っただろ。俺には『正解』が見えるんだ」
視界の端には、【最適乾燥サイクル:湿度30%維持】の文字。
俺が棚の角度をわずかに調整すると、スッと風が通り、
薬草が心地よさそうに揺れた。
「……信じられない。ただの棚なのに、まるで呼吸しているみたい」
エレナが感心したように棚に触れる。
そんな和やかな空気を、集まってきた村人たちの声が引き裂く。
「……聞いたか? あの薬師、王都を追放されたって話だぜ」
「昨日、子どもを助けたのは事実だが
……関わると厄介事に巻き込まれるんじゃ」
ラウルが顔をしかめて言い返そうとしたが、俺がそれを手で制した。
俺は村人たちに向き直り、腰の巻尺をカチンと鳴らして見せた。
「あんたたち。家が傾いてたら直すだろ? 井戸が壊れてたら直す。
それと同じだ。エレナは、この村の『命の歪み』を直そうとしてるだけだ。
文句があるなら、
俺が作ったこの棚より便利なもんを持ってきてからにしてくれ」
俺の堂々とした態度に、村人たちは黙り込み
やがてコソコソと立ち去っていった。
「タカ、ありがとう……。でも、無理はしないで」
エレナが小さく呟く。その瞳には、感謝と共に、深い影が宿っていた。
「私は、王都で見てしまったの。
……絶対に作ってはいけない『延命薬』の真実を」
彼女の告白は、風に乗って消えた。
だが、俺の視界には赤い警告表示が点滅していた。
【警告:特定キーワードを検知――『延命薬』】
【関連動画をロック解除……王都の影が接近しています】
「……やっぱり、ただのスローライフじゃ終わらせてくれないか」
俺は拳を握り、次の設計図を脳内に描く。
次は、彼女を守るための「砦」――いや、最高の「調薬炉」を作ってやる。
その時、森の奥から鋭い鳥の鳴き声が響いた。
それはまるで、獲物を見つけた監視役の合図のようだった。
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