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異世界建築録 ~YouTube知識で村を直したら、追放薬師と出会い王都をざまぁしました~  作者: 転々丸
王都編

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第25話:黄金の審判と民衆のハンマー

王都の頂点、天を突くようにそそり立つ王宮の謁見の間。


そこは今、生命の維持すら危うい老王の吐息と、

燃え盛るような皇太子の野心、そして地下から響く

不気味な震動が混ざり合い、異様な熱気に包まれていた。


壁一面を覆う黄金の装飾は、

夕刻の光を照り返して目を眩ませるほどに輝いている。


だが、その背後にある石組みは、長年の魔力過負荷によって砕け、

砂利となってこぼれ落ちていることを俺の【構造診断】は見逃さない。


「さあ、父上。この薬を。永遠の命をその手に。

そして……私に、この街のすべてを譲る署名を!」


皇太子レオネルは、もはや隠そうともしない欲望を瞳に宿し、

震える王の手に一本の小瓶を握らせた。


中には、エレナが調合したはずの黄金色の液体。


レオネルにとっては、父を「生ける屍」に変え、玉座を奪うための毒。


だが、エレナは俺を一度見つめ、静かに、しかし決然と頷いた。


「王よ。それは、あなたが望んだような命を繋ぐ薬ではありません」


エレナの声が、静まり返った広間に凛と響く。


「それは……あなたを縛る『執着』から解き放ち、

この街の真実を直視させるための、正気の雫です」


王が震える手でその瓶の中身を飲み終えた瞬間、

広間の空気が凍りついたように一変した。


喉を鳴らして飲み干した王の体が大きくのけぞり

絶望的に濁っていたその瞳に、内側から澄み渡るような理知の光が

急速に、かつ力強く戻っていく。


「……余は、何をしていたのだ。この、砂上の楼閣のような街で……」


王の声には、もはや病的な執着はなかった。

代わりに宿ったのは、一国の主としての深い後悔と重みだ。


「父上!? 何を……おい、早く署名を!

そのペンを動かせと言っているんだ!」


焦り、取り乱すレオネルを完全に無視し

俺は謁見の間の重厚な装飾が施された巨大な窓へ歩み寄った。


そして、愛用の釘抜きを窓枠の「急所」に叩き込み

一気にそれを跳ね上げた。


バァン!!


吹き込んできたのは、

王都の高度を支える冷たく、そして激しい風だ。


眼下には、贅を尽くした貴族街から、

今にも崩れそうなスラムまで、王都のすべてが広がっている。


「レオネル殿下。あんたの計算違いがひとつある

。俺はただの大工だが……あんたが見下していた街の奴らはみんな

自分の家がいつ崩れるか、いつ墜落するか、

その震動に怯えて暮らしてたんだ!」


俺は腰袋から、魔導建築士ゼノスと地下で作り上げた

「共鳴増幅器」を取り出した。


それを監視塔の鐘に向けて、建築スキルの衝撃波とともに放つ。


ゴォォォォォォォォォォン……!!


空気を震わせ、石造りの街全体を揺らすような重低音が響き渡る。


それは、かつての王都が鳴らしてきた祝祭の合図ではない。


腐敗した過去との決別、

そして全市民への「一斉リフォーム」の号令だ。


「みんな、聞け! この街の心臓はもう限界だ!

だが、俺とゼノスが地下の炉を調整した!

今から全員で、自分の家の『不要な重み』を捨てろ!

構造を繋ぎ合わせ、一つの船にするんだ!俺の設計図システムに従え!」


【建築スキル:広域構造共有ギルド・ネットワーク発動】


俺の視界が黄金色のラインで埋め尽くされる。


それは王都全域に広がる建物の「骨組み」の可視化だ。


俺が脳内で描いた「補強の青写真」が、通信網を通じて

ハンマーを握るすべての市民、そして現場に散らばる

魔導建築士たちの視界へと直接投影されていく。


街中のスラムから、汚れた顔の男たちが。

第八地区の瓦礫の中から、未来を諦めかけていた女たちが。

皆、手に手にハンマーやノコギリ、

あるいはただの石材を手に取って立ち上がった。


「ゼノス、始めろ!」


「言われずとも! 全魔導建築士、術式変更!

固めるのではない、タカの設計に従い、構造を『繋げ』!」


かつてレオネルの命令に従っていたエリート建築士たちが

公然と王太子を裏切り、俺の設計図に従って魔力の補強を施していく。


「馬鹿な……! 民草ごときが、この王都を作り変えるだと!?

私の、私の王都を汚すな!」


レオネルの叫びは、

街中から響き渡る万雷のハンマーの音にかき消された。


それは、壊すための音ではない。生きて、支え合うための音だ。


街全体が、

あたかも一つの巨大な意思を持つ生き物のように脈動を開始した。


王の虚栄心を象徴していた黄金の重すぎる装飾が

あちこちでパージされ、奈落へと剥がれ落ちていく。


代わりに、軽量で強靭な木材や、魔力伝導率を高めた新しい梁が

家から家へ、区画から区画へと架け渡されていく。


虚飾を捨て、軽量化と強靭化を同時に成し遂げる

――「構造の民主化」。


「……見ていろ、レオネル」

俺は、震動が心地よい安定へと

変わっていくのを感じながら、空を見上げた。


「あんたが愛した『美しく脆い王都』は今、死んだ。

代わりに生まれるのは、泥臭くて、最高に頑丈な……俺たちの『家』だ!」


王宮の地鳴りが止まり、王都アルクスは、

地表へと続く穏やかな「再生の降下」を始めた。

ご覧頂きありがとうございますm(_ _)m

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