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異世界建築録 ~YouTube知識で村を直したら、追放薬師と出会い王都をざまぁしました~  作者: 転々丸
王都編

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第24話 命がけの炉の補強、予期せぬ助手

地下の最深部、王都の「心臓」を司る大アルクス炉の前は、

まるで巨大な獣の胎内にいるような、

不快な熱気と重苦しい沈黙に支配されていた。


壁面を這う無数の魔導配管が

毒々しい緑色の光を脈打たせながら呻き声を上げている。


その光に照らされた俺の顔は、吹き出す汗と油で汚れきっていた。


俺が今向き合っているのは、レオネル皇太子が命じた

「即位までもてばいい」という、

邪悪な意図に基づいた欺瞞工作の現場だ。


だが、俺の脳内に広がる設計図は、そんな卑屈なものではなかった。


「……リフォームってのは、住む奴がクズでも、

建物には誠実でなきゃいけねえんだよ」


俺は低く呟き、腰袋からずっしりと重い鋼鉄のボルトを取り出した。


レオネルは、炉の亀裂を外側から魔力で強引に固め

限界を先延ばしにするだけの「時限爆弾」を作れと言った。


だが、俺が今、炉の最下部――

荷重が最も集中する基部に叩き込もうとしているのは、

炉の暴走エネルギーを熱として逃がし、万が一の際に

王都を安全に地表へ降ろすための「緊急制動システム」の要だ。


その時、背後から冷ややかな、しかし聞き慣れた声が響いた。


「……大工、何をしている。

そこは皇太子殿下の補強指示にはない箇所のはずだが?」


振り返ると、そこには白銀のローブを纏い

巨大な杖を携えた男が立っていた。魔導建築士ゼノス。


かつて第八地区の崩落現場で、俺の「物理」と

真っ向から衝突した、王都エリート建築士の長だ。


周囲にはレオネルの私兵が十数名、目を光らせている。


俺が余計な真似をすれば、

即座にその首を撥ねろと命じられている連中だ。


「指示通りやってりゃ、あと三日でここが内側から弾け飛ぶからな」


俺はハンマーの手を止めず

正確な角度でボルトを炉の継ぎ目に叩き込む。


金属音が地下に響き渡る。


「俺は、爆弾の導火線を外してるんだ。

あんたこそ、そんな高いところから見てるだけでいいのかよ。

街が落ちれば、あんたのプライドもろとも泥にまみれるぜ」


ゼノスは眉をひそめ、俺の作業を凝視した。

彼はレオネルの監視役としてここにいる。


俺の裏切りを報告するのが彼の役目だ。

だが、ゼノスの瞳は、政治的な思惑よりも先に、

俺が構築している「未知の構造」の美しさに囚われていた。


「……ふん。相変わらず、魔法を無視した無茶な構造を組む男だ」


ゼノスはじろりと周囲の兵士たちを威圧するように見渡し

一歩前に出ると、杖の石突きを床に激しく突き立てた。


「【遮断結界サイレンス】……展開。兵士ども、集中を乱すな。

 これは炉の魔力漏れを防ぐための処置だ」


半透明のドーム状の結界が

俺とゼノス、そして大アルクス炉を包み込む。


え?と俺が動きを止めると、ゼノスは結界の外の兵士には

聞こえない小声で、苦々しい吐息とともに言った。


「……勘違いするな、タカ。

私は皇太子殿下の冷酷な野心に屈したわけではない。

私は……この王都の建築を愛しているだけだ」


ゼノスの瞳は、

炉の深部に走る無数のひび割れを、悲しげに見つめていた。


「魔力で抑え込むのは、もはや限界だ。

私がどれほど術式を重ねても、この歪んだ炉は

アニマ草を喰らい尽くし、自壊しようとしている。

……貴様の言うあの『柔構造』、この炉の冷却系に応用できるのではないか?」


「……ゼノス、あんた」


「魔力の圧力に、あえて『遊び』を作る。

貴様の提唱するその理論を、私の魔導建築学で補強すれば

……あるいは、爆発ではなく『鎮静』が可能かもしれん。

……レオネル様には、指示通り、即位までもたせるための

補強を進めていると、私が偽りの報告をしておく」


かつて対立した天才が、王都を守るというたった一点の誇りで

俺の「助手」になることを選んだ。


「へっ……エリート様が泥にまみれる覚悟を決めたってわけか。

いいぜ。ゼノス、あんたは魔法で炉の重心を、一点に固定し続けてくれ。

その隙に、俺がこの配管を『バネ』に作り替えて、熱を逃がす道を作る」


「承知した。……これほど理外の建築に加担するなど

私の師が見れば卒倒するだろうな」


ゼノスの杖から、純白の魔力が放たれ

暴走しかけていた炉の震動をピタリと押さえ込む。


今だ。俺はスキルを全開にした。


【建築スキル:超大型炉・免震緊急改修 発動】

【協力者:魔導建築士ゼノスを確認。シナジー効果により計算精度向上】

【進捗:65%……70%……構造の書き換えが加速します】


俺の物理演算と、ゼノスの魔導建築学。


正反対の二つの力が、地下の闇の中で青白い火花を散らす。


俺がボルトを締め、ゼノスが術式でそれをコーティングする。

崩れかけた老朽建築(王都)の心臓が、少しずつ、

本来あるべき「命の循環」を取り戻していく。


どれほどの時間が過ぎたろうか。


全身が汗で水浸しになり、握力も限界に近づいた頃、

背後から静かな足音が聞こえた。


「タカ、準備ができたわ」


エレナが工房から、黄金色に澄んだ小さな瓶を携えて戻ってきた。


その瞳には、皇太子の命じた「毒」を作る強制に屈しない、

強い意志の光が宿っている。


「王の精神を浄化し、正気を取り戻させる薬……『真実の雫』よ。

これを飲めば、王はこの街がどれほど危うい土台の上に浮いているか

理解してくれるはず」


俺はハンマーを置き、ゼノスと顔を見合わせた。


ゼノスは結界を解き、いつもの冷徹な仮面を被り直す。


「王への謁見まで、あと数時間だ。……大工、薬師。

失敗すれば、私もろとも処刑台行きだということを忘れるな」


「分かってる。だが、安心しろ。

俺のリフォームに『欠陥』はねえよ」


俺は腰袋を叩き、エレナの手を取った。


偽りの延命か、それとも真実の再生か。


俺たちが地下で仕掛けた「王都リノベーション」という名の爆弾が

いよいよ腐敗した王宮の最上階を揺らし始める。


ご覧頂き、ありがとうございますm(_ _)m

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